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001

【特殊スキルのおかげでお店を持ちました】を書き直した作品です。

説明が多くなっていると思いますが、よろしくお願いします(*^^*)

 辺りを見渡すと、どこまでも木々が続いている。


「え? ここ何処!? 私の記憶が確かなら、駅前のお店で買い物して、そこから帰る途中で…」


 直前の記憶は確かに自宅へ帰る途中だった。車の通りが多いメイン通りには当然人も多く、横に並んで歩いている高校生たちや前後から走ってくる自転車にぶつからないよう気をつけながら歩いていた。

 ようやくメイン通りから子供たちの賑やかな声が聞こえる住宅街へ入り、そうしてもうすぐ自宅だ…というところで記憶が曖昧になっている。


「もしかしてベッドに横になったら寝ちゃった?」


 今日はやたら講義の内容が濃く、室内にいる全員が講師の言葉を聞き漏らさないよう集中していた。そのため講義後は生徒全員がグッタリと力尽きていた。

 あまりに疲れてしまったので、講義のノートや資料などはサークルのロッカーに入れ、バッグだけの身軽な格好で学校を出ると電車に乗り、自宅のある最寄り駅にある店で必要な物――もうすぐ使い終える物や化粧品を買って少しだけ気分を浮上させた。

 そして帰宅後は疲れた頭を休ませるため、そのまま自室のベッドに横になった…のかもしれない。

 しかし今はどこを見渡しても木ばかり。しかもここはかなり薄暗い。幾ら癒されたいと願ったとしても、これの薄暗さはちょっと…と眉を顰めてしまう。


「でも折角の夢なら楽しい方が良かったな…」


 確かに今日は疲れていた。その無意識な気持ちに夢も引きずられ、この薄暗い雰囲気になったたのかもしれない。


「とりあえず散策してみる?」


 これが夢なのか現実なのかは分からないが(是非夢であって欲しいと願いつつ)、直感を頼りに歩き始める。

 ちなみに自宅周辺に森なんてものは無い。多少の木々は植えられているが、こんなに密集していない。

 この場で夢が覚めるのをぼんやり待っていてもいいが、何せ直前の記憶が曖昧なのだ。


「…もしかして誘拐…いやいや、一般人の私をわざわざ森まで連れて来て置いて行くことなんて何の意味無いし…」


 そう思いついた途端、慌てて今の自分を確認した。

 愛用のショルダーバッグはかけていたので、慌てて中を確認する。


「あっ、お財布――現金はある。それに身分証、スマホもちゃんとある! …そうするとこれは金品目的じゃない?」


 右手には少し前に買った商品が入ったビニール袋を握っている。一応ビニール袋を見てみると、何一つ欠けることなく入っていた。


「この100円商品たちだって、本人に使い道が無いんじゃ奪っても意味ないよね」


 そこでふいに思いついたことがある。けれどこれは普通に考えればとてもあり得ないことで…。


「…普通だったらあり得ないし考えたくもないけれど、もしかして今流行の異世界転移? 召喚?とかなんてこともあるかもしれない…。とにかく今は情報が欲しいから散策してみよう! で、人を探そう!!」


 そうして小日向芽衣こひなた めいは気合いを入れた。折角買った商品を失くさないようビニール袋はしっかり握り締め、周囲を見渡しながら再び歩き始めた。

 …が、すぐに思い知らされた。舗装もされていない、しかも見知らぬ森を長時間歩くのは、根気と体力が必要だということを。

 数分――数十分を歩くならまだ余裕だった。しかし歩き始めて一時間が経つ頃には流石に疲れて歩みが遅くなる。


「…どこまで歩いても出口がない? 相当広い森なのかな…いつになったら出られるの?」


 ハァハァと息を吐きながら、少し木にもたれて休憩をする。

 もしかしたら直感で歩いているのがいけないのかもしれない。最初の場所から反対方向に行けば、すぐ外に――人を見つけられたかもしれない。

 そんな後悔と不安で今後どうすればいいのか分からなくなる。


「でもここで立ち止まるわけにもいかないし…とにかく前に進もう!」


 休憩を終えると決心した芽衣は再び前へと進んで行く。

 先程までは疲れて辺りを見回す余裕も無かったが、少し休憩をしたおかげで森の中を観察する余裕が出てきた。


「うわっ! 毒々しい色のキノコ! 絶対怪しい!」


 芽衣が知らないだけかもしれないが、見たことのない草やキノコなどを発見した。勿論芽衣は野生のキノコに詳しくないので、触らず近寄らずで通り過ぎた。

 そうして歩いていると次第に大量に植えられていた木よりも草が増えていることに気付いた。徐々に木が少なくなってきているので、当然周囲の見通しも良くなっている。もうそろそろ住居や人を見つけられるのではないか?と芽衣は思った。

 希望が見えつつ、その先がどうなっているのか分からないので休憩を入れながら歩き続けていると、完全に木がなくなった。どうやら無事森から脱出出来たようだ。


「森から出られた? やった!!」


 思い出したように身につけていた腕時計を見ると、森を抜けるのに休憩を含めて二時間以上かかっていた。


「う~ん! 誰か近くに人はいないかな?」


 大きく伸びをしながら、そんなことを口にする。

 すると芽衣の言葉に反応したように、近くから「ボンッ」と破裂音に近い音がした。


「え?」


 何かが爆発した?と恐る恐る周囲を見渡すと、音の発生源と思われる場所には一人の男性が立っていた。男性は黒いローブを身にまとい、山積みになっている薪や小枝に向けて掌をかざしていた。どうやら薪は燃え始めたばかりのようで、暫らくするとパチパチと小さな音が聞こえてきた。先程の破裂音は薪に火が点いた時の音だろう。

 男性も突然現れた芽衣に気付いたようで、目を見開いて驚いていた。だが男性が驚いていたのは一瞬で、すぐ芽衣に話かけてきた。


「君、こんな所でどうしたの?  誰かと一緒に来たの? とにかくここはベア系の魔物が多いから、早く帰った方がいい」


「魔物…ですか?」


 魔物と聞いて、ゲームやマンガのことが思い浮かんだ。


(…ってことは、ここはやっぱり日本じゃない??)


 新しい情報に混乱していると、男性が優しく話しかけてきた。


「突然話しかけちゃってごめんね。僕はリーシャ。職業は宮廷魔術師。ここでは魔法の練習をしてたんだ」


 男性――リーシャが名乗ったので、芽衣も慌てて名乗った。


「小日向芽衣です」


 魔物という言葉に続き、魔術師、魔法…と、芽衣の周りではゲームやマンガなどでしか使わない単語ばかり…。


(どうなってるの!?)


 帰れるのならすぐにでも帰りたい。しかし魔物や魔法の存在するこの世界に芽衣の家はきっと無い。


(どうして私はここに居るんだろう…)


 不安と混乱から思わず涙がこみ上げてきて、芽衣は下を向いてしまう。

 そんな情緒不安定な芽衣に気付いたリーシャは「帰ろうか?」と優しく声をかけてきた。


「え? で、でも…」


 帰るってどこに?と口にしようとしたが、それを言葉にすることは出来なかった。

 混乱している芽衣にリーシャは優しく話しかけてきた。


「もしメイちゃんに行くところがなければ、一緒に王都に行く? あそこなら人が多いから住み込みの仕事とか見つかるかもしれないよ? それに今日は色々あったんでしょ? 僕の家でよければ歓迎するよ」


 確かに王都なら国で一番栄えている場所だろう。住み込みの仕事があるということは、無一文で知識のない芽衣でも出来る仕事があるかもしれない。

 少し考えてから芽衣は頷いた。もしこの後他の人と出会ったとしても、その人が良い人かは分からない。それならちゃんと職業まできちんと名乗ってくれたリーシャに付いて行った方が少しは安全かもしれない――そんなことを思いながら芽衣はリーシャに云った。


「私を王都まで連れてって下さい。よろしくおねがいします」


 芽衣が頭を下げると、リーシャは快く承諾してくれた。




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