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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第2章 猫神の都
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妲己の弟子 3

妲己の修練は続きます。

「妾には通用しないけど、いい動きだよ」

 驚きの表情を浮べるフルリに笑いかけ、妲己はフルリのお尻をポンと軽く叩く。


「あ…え?」

 くるっとフルリの身体が半回転して、差し出された妲己の両腕の中にすっぽりと納まり、ふと気が付けば妲己にお姫様抱っこされていた。


「あ、あ…」

 顔を真っ赤にして口をパクパクさせるフルリをそっと地面に降ろし、妲己は数歩離れて大刀を構える。


「さ、もう一回行くわよ」

 キラリと陽光を反射する切っ先が自分に向けられているのを見て、フルリも表情を引き締めた。


 自分の手にある、身長ほどの長い柄に、緩やかに反った剣に近い大きさの刀身を備えた、見たこともない武器。

 硬い木材の柄は、補強兼ねた白金の彫金金具で彩られ、片刃の刀身は鈍色の峰の側が厚く、鋭利な刃は白銀。初めて渡された時、なんて美しい武器だと思った。しかし、数日使ってみて、フルリは大刀に惚れこんだ。


 長い柄の遠心力と刀身の重さを使った斬撃は、自分がずっと悩んでいた攻撃の威力不足を補ってくれた。今はまだ使えているとは言えないけれど、使い方次第で、フルリの長所である身軽さを生かすことだってできると妲己は言った。

 今の自分の過ぎた武器だと思う。…でも、これを手放したくない。使いこなせるようになりたいと思ってしまった。 


「へい!お願いするでやす!」

 大刀を構え、フルリは妲己に向かって地面を蹴った。

 

「三人とも、覗き見はお行儀が悪いですよ」

 メリシャが振り返ると、リネアが微笑んでいた。


「あ、いや、これはね。散歩してたら、音が聞こえたから、つい…」

「メリシャも休憩中ですか。それなら、一緒にお茶はいかがですか?」

 どうやら、リネアは妲己とフルリに休憩を告げに来たようだ。


「妲己様、フルリ、そろそろ休憩しませんか」

 さほど大きくはないが良く通るリネアの声に、妲己とフルリは同時に構えを解いた。


「リネア、ありがとう。…フルリ、今日はここまでにしましょう。妾はいいけど、フィルにはやるべき仕事がたくさんあるからね」

「へい!ありがとうございやした。師匠!」

 深く頭を下げたフルリに、妲己は嬉しそうに微笑んだ。


 部屋に戻ると、テーブルの上にはすでにお茶の用意が整っていた。

「あー、疲れた」

 修練をやっていたのは妲己だが、身体はフィルのもの。妲己から体を返されたフィルは、少し怠いような疲労を感じた。あの妲己が疲労を感じるほど動いたということだ。そんなことは珍しいだけに、フィルは少し驚いていた。


 もちろん、九尾の治癒を発動すれば瞬時に回復することもできるが、むしろ心地いいのでそのままにしておく。


「フィル様とフルリは、こちらへ」

 リネアは、敷物に座ろうとするフィルの手をそっと取り、中庭に面したテラスへと引っ張っていった。石のブロックが敷き詰められたテラスには、水を満たした大きなタライが用意されている。


「休憩の前に、汗を流してください」

 そう言うなり、リネアは慣れた手つきでフィルの服を脱がせていく。フィルもされるがままに身を任せている。

 しゅるりという着擦れの音とともに、あっという間にフィルの裸身が露わになっていく。フィルとリネアは平気な顔をしているが、側で見ているフルリは目が点だ。

 神殿にいた時には、仲間の巫女たちと一緒に沐浴することもあったが、他人の裸はなるべく見ないようにして、さっさと終わらせていた。


「あ、あの…リネアの姉さん、あっしもでやすか?」

「はい。フルリもちゃんと身体をきれいにしましょう」

 もたもたしていると自分も剥かれると思ったフルリは、着ていた服をそそくさと脱いだ。下着を脱ぐ時にはさすがに手が止まったが、隣にすでに一糸まとわぬフィルがいる状況では、諦めて脱ぎ去った。

次回予定「妲己の弟子 4」

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