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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第1章 ヒクソスの新王
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王太子の処遇 4

ヒクソスを苦しめてきたメネス王国との属国関係の解消という、メリシャの爆弾発言が…


PV数が累計70,000を超えました。

いつも読んで頂きありがとうございます。

「属国関係は解消するけど、直ちにメネス王国と戦争をするとか、関係を絶つつもりはないよ。適正な対価を支払うなら交易も認めようと思う」

「しかし、メネス王国が素直に応じるでしょうか…」


「王太子を無事に返すのは、こちらから敵対するつもりはないっていう意思表示でもあるんだけど…同時に、こちらは王太子の身柄を利用しなくても、メネス王国の支配を撥ね退けられるんだぞっていうアピールでもある。武力による脅しはもう通用しないって悟ってくれればいいんだけど…」

 そしてメリシャは、まだ難しい顔をしているシェプトに尋ねる。


「まぁ、王国のことはとりあえず置いておくとして、…シェプト、属国関係を解消できたら、ヒクソスの不満は落ち着かせられると思う?」

「大多数は大丈夫でしょう。しかし、王国に対してより強硬に行くべきと主張する者はどうしても出てくるでしょうな」


 属国関係が解消されたことで、メネス王国恐れるに足らずと勘違いする者がいるということか。

 だが、実際には国力で王国の方が優位なのは変わりないし、戦力においても、王国軍を追い返したのはフィルであってヒクソスではない。


「すぐには王国も手を出して来ないと思うけど、決して王国が弱くなったわけじゃない。まともに戦ったわけでもないのに、慢心が広がるのは良くないね」


「メリシャの言う通り。たった一度追い返したからと言って、王国はそれで揺らぐような国じゃない。それはシェプトやウゼルもわかっていると思うけど?」

 そこへ、ホルエムに面会しに行っていたフィルとリネアが戻ってきた。


「はい。この度のことは、フィル様方のお力添えがあってのこと。ヒクソスの手柄でないことは我も重々承知しております」

 ウゼルは、神妙に頭を下げた。


「そうね。今はまだ、ヒクソスだけでメネス王国に勝つことは難しいかな」

「はい。王国の人間とも共存したいというメリシャ様たちのお考えは承知していますが、王国がヒクソスに手を出して来るなら、国を守らなければなりません。今はフィル様方のお力に頼らねばなりませんが、いずれ我ら自身の手で王国に勝てるようになりたいと存じます」


「王国に勝ちたい…か」 

 腕組みして聞いていたフィルは、厳しい視線をウゼルに向けた。だが、ウゼルの言う事も理解できる。

 ホルエムは穏健な考えをもっていたが、それが王国の総意ではないだろう。ヒクソスが王国に攻め込むことがなくても、王国がいずれまた攻めてこないとは言いきれない。


「……前に言った通り、王国に勝つためには、これまでのヒクソスの戦い方を否定することになる、それは覚悟してもらうわよ」

「はい。儂らがこれまで王国軍に勝てなかったのは事実。どうか、ヒクソスの戦士たちを鍛え直してくだされ」


「わかった。戦士の訓練は引き受ける」

 頷いたフィルは、思い出したようにポンと手を打った。


「そうだ、ウゼルとの決闘の時、メリシャに斬りかかった戦士が二人いたわね。確か、処罰保留にしてたと思うけど…その二人、連れてきてくれない?」

 ウゼルは心配そうに表情を曇らせる。

「フィル様、大変身勝手なお願いですが、どうか死罪だけはご容赦頂けないでしょうか?…あの二人はいずれも優秀な戦士です、必ずメリシャ様のお役に立たせます故」


 ウゼルは随分とあの二人に目をかけている様子だ。フィルは、クスッと笑ってパタパタと手を振る。

「死罪になんてしないから、安心して」


「は、はぁ…では、どうなさると?」

「二人には、ホルエムを連れてメネス王都メンフィスに行く時に、わたし達の護衛として一緒に来てもらうわ」

 フィルの提案に、ウゼルは呆気にとられる。


「それは…どういうことでしょうか?」

「言葉のとおりよ。…ウゼルも二人は優秀な戦士だと言ったじゃない。何か心配でも?」

「しかし、メリシャ様にはフィル様とリネア様がおられます。お二人よりも弱い護衛など必要ないのではないかと」


「あら、か弱い女二人で王を護衛するなんて、とてもとても…」

 頬に手を当ててわざとらしく言うフィルに、ウゼルは微妙な表情になる。


「ウゼル様、ヒクソス王にヒクソスの戦士が同行するのは当然だと思いますが」

 振り返れば、ひやりとした微笑みを浮かべたリネアが立っていた。

「それは、その…ヒクソスにはお二人よりも強い者など…」


「強いかどうかはどうでもいいのです。ヒクソス王が外国に赴くのに、自国から護衛の戦士が一人も付いていないとなれば、メネス王国の方々にどう見えるでしょうか。…メリシャに恥をかかせるおつもりですか?」


「っ!…決してそのようなことは…!仰せのままに!」

 微笑みの中で目だけが笑っていないリネアに、ウゼルは慌てて返事をした。

次回予定「メネス王国へ 1」

メリシャたちはホルエムを連れてメネス王国へ。

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