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第6話 ある一本の電話をしたがゆえに二人は舞い上がった。

朝目覚めると、俺はすぐに自分の体に起こっている異変に気が付いた。

足に痛みが走っている。筋肉痛だ。

運動不足の俺が、昨日、ふみと白谷さんに夜遅くまで追いかけられ、走りまくったせいだろう。

というかそもそも、安達先生派に回っただけなのになんであんなに怒られたんだ。

中立の立場に立つための策だったし、ましてや二人同時に敵に回すなんて考えもしなかった。

考えられる理由が一つあるのだとしたら――――

2人とも俺のことが好きだということ。だが、そんな思考は一瞬で消えた。

ふみは幼馴染で一緒に長い時間を過ごしてるから、いつの間にか俺の魅力に気づき、恋に落ちてるという可能性もあるのかもしれないが、あいつの俺に対する態度は幼少期の頃から一切変わっておらず、そんなそぶりは微塵も見たことがない。

ましてや白谷さんなんて、一緒に過ごしたのは1時間くらいで、主に担当する曜日を決めただけ。ここに惚れられる要素なんてない。

仮に委員の仕事の担当曜日を一緒に決めただけで惚れるヒロインのラノベなんてあったらどうだろうか。考えるまでもなく絶対に売れないし、そのレベルで惚れるヒロインは、全男子生徒好きになってしまうレベルだ。逆ハーレムもいいところだ。

何はともあれ、今日も普通に学校だし、放課後には白谷さんと図書委員の仕事もある。

あまり二人を刺激しないようにしよう。


ピンポーン。

「おはよう駿!今日も一日頑張ろうね!」

「お、おはよう。頑張ろうな・・・」

おかしい。普通のふみだ。むしろ上機嫌にだって見える。

もしかしたら口もきいてくれないかと思っていたし、こんな風に呼びに来ないかもとも思っていた。

実際、ふみの機嫌が悪く、呼びに来なかった日もある。

弾んだだ声、明るい表情、なんか逆に怖い。

「ふみ・・・?今日機嫌いいな・・・?」

「今日体育あるから楽しみなんだよね!」

「あ、ああ。お前体育好きだもんな。」

昨日のあの激しい怒りは、たかが体育なんかでかき消されるのか?

あまりにも単純すぎるが、今日はその単純さに感謝しよう。

当たり前だが。機嫌が悪いよりはずっといいからな。

(駿ってば、昨日私を怒らせたから、ちょっと気を使ってるんだね!全然私は怒ってないし、何なら昨日も怒ってなかったし?だって昨日は・・・)


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


昨夜。

「あ、あのもしもし。赤海と申します。」

「お電話変わりました、安達です。あら、赤海さん。どうされました?」

「安達先生?あの、少し、相談がありまして・・・」

「あら、相談?私でよければ、何でも話してください。」

「えっと、恋愛相談なんですけど、先生は、その、生徒と先生の恋愛ってありだと思いますか・・・?」

「あら、予想のはるか斜めを行く質問だったわ。そうね、なしではないけど、交際するとしても、卒業をして、生徒と先生という位置関係でなくなってからですかね。」

「や、やっぱりそうですよね!!ありがとうございます!はあ、ホッとしたぁ。」

「いえいえ。となると、赤海さんには好きな先生がいるということですか?」

「いえ違うんです!私が好きなのは同級生のし・・・って、先生誘導尋問上手いですね!!やめてください!!」

「別にうまくもなんともないと思いますけど・・・。何はともあれ、赤海さんの恋がうまくいくことを祈ってますね。」

「ありがとうございます!!」

「あ、ちなみにその相手の方、幼馴染だといいですね。恋って幼馴染が相手の場合、成就する確率がぐんっとあがりますから。では失礼しますー。」

「なっっ!!!!」

ツー、ツー、ツー。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


(なんてことが・・・。ぐへへ・・・)

この女教師は、ただの幼馴染同士の恋愛が好きなだけである(天の声)

「ほら、早くしないと置いてっちゃうよ!」

「ちょ、走るな!俺は筋肉痛で・・・、ぎゃああああ!!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


放課後。

今日は図書委員の仕事がある日なので、俺は今図書室にいる。白谷さんと。

昨日のことがあったからか、なにやら図書室には険悪な雰囲気が漂っているように感じる。

重たい空気の中、口を開いたのは白谷さんだった。

「黒川くん、あのね、きょ、今日も一緒に帰りたい。」

「え?」

機能の怒りをぶつけられる覚悟をしていた俺は、突拍子の言葉に戸惑ってしまった。

「え、あ、その、嫌、かな・・・?」

「い、嫌とかじゃない!わかった、帰ろう・・・!」

彼女も普通のようだっだ。ふみと同様、むしろ機嫌がよく見える。

「嬉しい。ありがとう。」

ふみは体育が怒りをかき消してくれたみたいだが、白谷さんの怒りはなににかき消されたのだろう。

白谷さんも意外と単純なのだろうか。そういった点では、ふみとウマが合いそうなのに、女心というものはまだまだ分かりそうもない。

(黒川くん、なんだか気まずそう・・・。もしかして、昨日の件で私怒ってるって思ってるのかな?全然怒ってないんだけどな。むしろ、私は今、心があったかくて幸せ。だって昨日・・・。)


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


昨日夜。

「あ、あのもしもし。白谷と申します。」

「お電話変わりました、安達です。白谷さん。どうされました?」

「少し、あの、安達先生に相談が、ありまして・・・」

「あら、何でも話してください。」

「えっと、恋愛相談なんですけど、あの、先生は、その、せ、生徒と先生の恋愛ってありだと思いますか・・・?」

「この質問流行ってるのかしら。なしではないけど、交際するとしても、卒業をして、生徒と先生という位置関係でなくなってからですかね。」

「や、やっぱりそう、ですよね!!あ、ありがとうございます!」

「いえいえ。白谷さんが先生のだれかが好きということでは・・・」

「な、ないですないです!違いますよ。私は、同級生のし、じゃなくて、私のことを助けてくれたヒーローのことが大好きなんです。って、先生誘導尋問上手すぎます・・・。や、やめてください!!」

「この際、この技術が生かせる職場にでも就こうかしら。それはそうと、白谷さんの恋がうまくいくことを祈ってますね。」

「ありがとうございます・・・!」

「やっぱり恋するなら、なるべく幼馴染のほうがいいんですよ。恋って幼馴染が相手の場合、成就する確率がぐんっとあがりますから。」

「ひゅっっ!!!!」


(あの子ほどではないけど、私も・・・、そうだから・・・。)

また一人、この女教師の趣味に犠牲者が出たのであった。(天の声)


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


何も問題なく、図書委員の仕事は終わり、いつになく上機嫌の白谷さんを連れ、下駄箱に来ていた。

もはや、昨日の出来事なんか嘘なんじゃないかと思えてきたほどだ。

「黒川くん。なんでこの女がいるの?」

「駿。なんでこの女がいるのかな?」

いや、嘘じゃなかった。

この殺伐とした空気は、二人の上機嫌姿で上書きされかけていた昨日の出来事を鮮明に思い出させた。

「白谷さんは図書委員が一緒だったからで、ふみは・・・、お前は何でいるんだ?」

「扱いがひどい!私は先生から頼まれたことしてたらこんな時間になってただけだから!」

「なら、もうひと仕事でもしてきたら?私と黒川くんは図書委員同士、親睦を深めながら帰るから。」

「あら、あなたは図書室の戸締りしっかりできてるかの確認でもしてくれば?私たちは過去13年の共に過ごした時間を振り返りながら帰るから。」

「「ぐぬぬぬぬぬぬ・・・・!」」

(やっぱりこいつら、仲悪いのか・・・)

鈍感男なら、ここで「なんで二人とも怒ってるの?」とか馬鹿な質問をして、二人から罵声を浴びせられ、精神的に傷つくのがオチだ。

もう見れば一目瞭然だろう。二人は仲が悪いんだ。だから怒っている。

本当に鈍感は馬鹿だし、見ててイライラする。いやこれは嫉妬ではない。

今から、敏感男による正解を見せてやる。


「・・・・・」

スー----------・

何も言わずに立ち去るなだ。気配を完全に消して。

これは二人の問題なんだ。ここから仲良くなるも、さらに仲が悪くなるも、二人、しだ、い・・・。

俺はすぐに自分の体に起こっている異変に気が付いた。

脚が震えている。筋肉痛の影響ではない。俺に対する殺気のようなものが俺の足をそうさせているのだ。

立ち去ろうとした俺の両肩が背後からがっちりと掴まれていた。完全に気配を消したはずだぞ。

俺は恐る恐る振り返る。

「黒川くん、私と一緒に帰ってくれるって言った、よね?」

「駿は13年間ほぼ毎日、私と一緒に帰ってるのにどうして今日は一人で帰ろうとするのかな?」

だめだ、殺される。手を振り払った俺は、逃げ去ろうと必死に走った。

しかし逃亡劇も1秒で終了。後ろから学生鞄という名のミサイルが二発、俺の背中に飛弾した。

さらに、バカ、あほなどの小学校低学年レベルの悪口を言われ、普通に傷ついた。

そして結局、3人で帰ることとなった。

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