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Planβ  作者: 笠原健介
5/6

異世界、再び

五人は再びPlanβの世界に立っていた。相変わらず人気のないとこだ。

「…で、魅凉。どこにスタート地点があるか分からないんだが…」

「晴紀、上空から見てくれない?わりと新しいビルだよ。訓練でかなり高くまで飛べるようになってたよね?」

「そうだった…んじゃ、やってみるか。『跳躍力全開』!飛べェ!!」

晴紀は一気に空高く飛び上がった。

「高いな…現代の世界よりも高くないか?」

「あぁ、僕もそう思うよ。」

「Planβの世界に来ると、民族の能力が向上するんだよ。だから晴紀はあんなに高く飛べるんだよ。」

修太と慶二、そしてさくらまで晴紀を羨ましそうに見上げている。

「俺も空…飛びたいな…」

「えぇ、羨ましいです…」

そんな三人を魅凉はすぐに落ち着かせた。

「大丈夫だよ。皆、この世界に来て能力が上がってるんだ…からさ、ね。」

その言葉を聞いて、三人は気を取り直した。しばらくして晴紀がスタート地点らしきビルを見つけた。

「みんなー、見つけたぞー。けっこう近くにある。急ごう。」

どうやらスタート地点を見つけたようだ。五人はスタート地点に向かって歩いて行き、すぐに着いた。ビルの中には一人の子供がいた。

「…子供?まさか、あの子もPlanβの旅人だっていうのか!?」

「うわーん!帰りたいよ〜!」

彼はおそらくまだ小学校四年生ぐらいだ。すると、すぐにさくらがその子供をあやしそうと試みた。

「泣かないで、大丈夫だから。」

「お姉ちゃんは、誰?お姉ちゃんもこの世界に飛ばされてきたの?」

「うん。でも二回目。」

「…ボクは童小次郎(わらべこじろう)。」

童…?そういえば担任の苗字は…童!そう気付いた晴紀はすぐに小次郎に確認をとった。

「ねぇ君、小次郎君…だっけ。あのさ…君のお父さんってもしかして高校教師?」

「うん。そうだけど…それがどうしたの?」

「フッ、何でもないよ。」

そして魅凉は小次郎にPlanβのことを説明し始めた。

「童君、この世界は未来の世界。信じられないと思うけど…」

それを聞いた小次郎はただただ驚いている。

「そんなことは…あり得ないよ。日本がこんな世界になることなんてないよ。」

「…こればかりは否定できない真実なんだよ。だから、今はとにかく現代の世界に帰ることだけを考えて。」

小次郎は答えられなかった。そんな小次郎を見て、晴紀が一言言った。

「なぁに、ピンチになったら俺らが何とかしてやる。安心しな。」

「うん…。」

しかし、小次郎はまだ浮かない顔をしている。そんな小次郎を見て、今度は修太が言った。

「僕らは君を守れないほど弱くはない。今はとりあえず僕らを信頼するんだ。」

「じゃあ、信じます。絶対に守ってくださいよ。」

すると、さくらはペンで空に文字を書き始めた。前と同じく'M.A.P.'と。

「みんな、そろそろ始めようよ。時間も無いしね。」

'M.A.P.'とさくらが書き終えると地図が空に浮かび上がった。そして、また前の様に紙に写した。

「チッ、今回はゴールが遠い…」

「あぁ、しかもノイズ塔の周りの警戒範囲も随分広い…」

「うん…危険だけど、今の私たちなら行けるよ!」

「そうさ。僕たちは十分に訓練してきた。」

「小次郎君、あたしが背負ってあげる。そうでもしないと皆で現代の世界に帰れないから。」

「え…う、うん。」

小次郎は顔を赤らめながらさくらにすがった。その様子はこの世界に来るにしてはあまりにも幼い。晴紀はそう思った。


そして、小次郎を合わせて六人はビルから出て、ゴールに向かって歩き出した。今回は警戒範囲がゴールへの直線上にあるため、かなり危険になることは必須である。

「さて、そろそろ警戒範囲に差し掛かる訳だが…」

「役割は私が言うよ。…晴紀と徳元君、二人は襲いかかって来る禁断種を片っ端から殲滅(せんめつ)して。」

「了解。ハル、僕たちの連携を活かす時だよ。」

「言われなくても分かってるぜ?シュウ。」

「平石君、あなたはさくらちゃんと童君の護衛を、私は晴紀と徳元君のバックアップを担当。さくらちゃんはそのまま童君をお願い。」

「分かった。さくらちゃんと童君の護衛は任しておいてくれ。必ず全うしてみせる!」

「いい意気じゃないか、慶二。僕も見習わないとね。」

そして魅凉が始まりの合図をした。

「皆、行くよ。もう一つのビルに。」

「分かってるぜ。…前方に敵発見。岡晴紀、奴に特攻を仕掛けるぜ!」

晴紀は空高く飛び上がり、雷雲を発生させた。そしてそのまま一体の禁断種に雷を放った。その雷は禁断種の体幹を貫いた。

「ギァ…!アァァ…!!」

禁断種はガラスが割れるように消えた。

「よくやった、晴紀。…っとまだいたんだね。フフ…いいよ。僕が氷付けにしてあげるよ…!」

修太は禁断種の下から氷を発生させた。禁断種はあまりにいきなりだったため、避けることができず、修太に氷付けにされた。

「さて、僕の氷の刀で貫いてくれよう。」

修太は禁断種の胸部に埋め込まれている玉が気になり、その玉に刀を刺してみた。

「そらっ!」

すると禁断種の玉は割れ、その玉は禁断種から外れ、ただの蛇になってしまった。

「蛇…?一体どういうことだ!?…まさか、禁断種は元々ただの生物なのか?」

「フフ、よく気づいたね。徳元君。」

「春原さん…!これは一体どういう…?」

魅凉はその質問にあっさりと答えた。

「禁断種に埋め込まれていた玉は禁断種としての生命。つまり、それを破壊すれば元の姿に戻るってこと。」

「そんな…ことが…?」

修太は驚きを隠せないでいる。

「フッ、全く…この世界には幾度となく驚かされる…!」

その時、晴紀が空から降りて来た。

「天気変えられねぇー!何でだろうな〜…」

「晴紀、この世界の天気は空の民の力を持ってしても変えることは出来ない一定の天気なの。そのうえ、その理由は解明されてもいない。」

「はぁぁ!?…ったく、まじかよ…」

「空の民については、この世界においてかなり使える能力が制限されるの。とりわけ天気は変えられないし、風向きも…」

「んじゃ、俺は上空から禁断種の動きを観察する。んで、魅凉が俺の心を読む。魅凉がそれを皆に伝える。まぁ、それが最善の策だろな。」

修太はそれを聞いて、一回頷いた。

「あぁ、僕はそれでいいと思う。春原さんは?」

「えぇ、異論はないよ。晴紀にしてはできすぎた策だと思うけど?」

魅凉は挑発じみたことを晴紀に言ったが、晴紀はただ一言言った。

「魅凉、この策はお前の腕にかかっている。頼んだぞ。」

「え…あ、うん。分かったよ。」

いつもなら何か言ってくるのに…

――今日は何か違う…

魅凉はそんな些細なことが妙に気にかかった。


その頃慶二はさくらにだんだんと疲労がたまってきているのに気付き、小次郎を背負うのを交代していた。

「すみません、慶二さん…あたし、体力なくて…」

「気にせんでよ。自分、この程度のガキっチョぐらいへでもなくてさぁ。」

小次郎はその一言が気になったらしく、不満げな表情をした。

「ボクがまだお子様みたいに言うなぁ!」

「小次郎君、せっかく慶二さんが背負ってくれているのに、そんなこと言って!…それとも、この世界に残りたい…?」

「う、それは…やだ…」

小次郎がそう言った時、物陰から人の形をした禁断種が現れた。

「何ッ…!?くっ、こいつ、いつの間に…?」

「ア゛ア゛…!」

その禁断種は妙なうめき声を上げ、さくらに向かって襲いかかって来た。

「いやぁ!来ないで!」

「くそっ!」慶二は咄嗟に小次郎を下ろし、さくらをかばった。

「ぐッ!あぁ…!」

慶二は禁断種の刀で背中を刺された。

「けっ、慶二さん…!」

「無事か…?さ…くら…ちゃ…」

慶二は意識を失い、倒れた。刀が強引に引き抜かれたため、傷口からは大量の血が流れている。放っておけば間違いなく死んでしまう。

「小次郎君、慶二さんの傷口をしっかり押さえてて。あたしがアレを倒すまで…」

「う、うん。分かった。」

稀に存在する、“癒しの力”で禁断種を殺める癒しの民…

さくらは自分はそれに当てはまるのか試したくなった。

「…慶二さんを傷付けた罪、『死ぬ』ことで償ってくれる?」

「ギァロ…ガァ…!」

禁断種はもう一度襲いかかって来た。

さくらは見えない程の速さで攻撃をかわし、禁断種が振り向いた瞬間に怪しげな玉に癒しの力を思いっきりねじ込んだ。



その禁断種は真っ白な灰となってボロボロに崩れた。

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