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Planβ  作者: 笠原健介
4/6

訓練

暑苦しい。この男は暑苦しくてたまらない。名は芝浦冴(しばうらさえる)というらしい。

「よし、お前さんたちは何の民なのかが分かった。協力に感謝する。」

「なぁ、アンタ、一体何者だ?Planβのこと、かなり知っている。もしかして、Planβに行ったことがあるのか?」

「勿論だ。私はPlanβに五十回行き、クリアした人間。ちなみに私は『火炎の民』であって、今だまだ火炎の力は備わっている。」

Planβに五十回行き、クリアした…?ん…?待てよ…?火といえば『暑い』…、まさか、そのせいでこういう人間なのか?

「いや、かつては私は暑苦しくなかったんだかな…どうやら民族によって性格は変わるらしくてな…」

とにかく火炎の民じゃなくて良かったと思う。もし火炎の民だったらあんなに暑苦しい人間になっていたのだから…。


「じゃあ、今日の話し合いはこれで終わり。明日は土曜日だから朝八時にここに集合でね。」

「え…?明日もやるんですか?」

さくらはすぐに聞き返した。

「無論だ。お前さんたちはまた二週間後にPlanβへ行くことになる。それまでに訓練しておかなければならぬのだ。そんなに悠長にはしておれぬ!」

芝浦はそう言い残し、昨日と同じくバイクで帰って行った。

「民族についてのことは明日冴先生から詳しく伝えるから。じゃあ、また明日ね。」

「お、分かった。」

続いて魅凉が帰って行った。

「さてと、俺は早く帰るかな。んじゃまた明日な。」

修太が帰った。まだ晴紀とさくらと慶二はまだ雑賀公園にいる。晴紀は何だか顔色の悪い慶二に問いかけた。

「慶二、具合悪いのか?」

「いや、全くもって普通だが…何か変か?」

「やたら顔色が悪いじゃないか。」

「マジ?それじゃ、俺はここらでな。」

「また明日です。さよなら。」

慶二も帰ったので晴紀とさくらも帰ることにした。

「さくら、帰ろうか。」

「そだね。」

久しぶりだった。学校の帰り道をさくらと歩くのは。



「それでは訓練を始める!皆、心してかかるように!」

晴紀、さくら、修太、慶二。四人の訓練が始まった。その前に芝浦は訓練に四人のそれぞれの能力を語っていた。


「『死の民』は死を司る民族だ。つまりはあらゆる生物の死が分かる。また、他の生物から体力を吸い取ることができる。まぁ、『死の民』についてはこんなとこだ。」


「『水氷の民』は水、氷をいくらでも発生さられる能力を有する。更にその水や氷をどんな形にも変えられる。まぁ、このぐらいだな。」


「『癒しの民』については、まず、どんな病気や怪我も治せる。基本的に戦うことはできない民族であるが、癒しの力を利用して、Planβの輩共(やからども)『禁断種』を殺めるらしい。」


「『空の民』はまさしく稀少な民族だ。実際私も純粋な空の民に会ったことは今回が初めてだ。それで、空の民の能力はな、まず天気を自らの意思で変えられる。もう一つは跳躍力の飛躍的な向上だ。噂によると、二十から三十メートルは軽く飛べるらしい。」


それぞれの能力について、芝浦は知っている限りのことを話した。しかし、芝浦が言っていたよりも民族の能力は多いらしい。


とりあえず晴紀は軽くジャンプをしてみた。すると、いきなり体が浮き上がるような感じがし、自分が地上から五メートルぐらい離れていることに気が付いた。

「なっ…!何だこれ…!?」

本当に軽くジャンプしただけなのに、晴紀の体は常識ではあり得ないぐらいの高さにいた。「ハル、気を付けて着地するんだ!」

修太は思わず晴紀に声をかけた。だが、芝浦は逆のことを言った。

「晴紀クン!そのまま落ちるんだ!」

「分かっ…ぐぁぁ!」

晴紀は左肩を強打した。これは間違いなく骨折している。

「痛ぇ…ちくしょうが…」

「さくらクン、『癒しの力』で晴紀クンを治療するんだ!」

「あっ…はい!」

そうそうことか…!つまり晴紀をさくらの治療対象にするために芝浦はあんなことを言ったのか!

「さく…ら…悪いな…」

「喋っちゃダメ。大丈夫だから。もう少しで治るから。」

すると、晴紀はだんだん左肩の痛みが引いていくのが分かった。あんなに痛かったものがほんの数分で治せる力を有する民族…

それが『癒しの民』…

それから数分、さくらは晴紀の左肩を治療し、そして治し終えた。

「治った…!これで大丈夫だよ。動かしてみて。」

晴紀は言われた通り左肩を動かしてみたが、全く痛まなかった。

「…!すげぇ…!さくら!」

「…良かった。しっかり動くみたいで。」

「晴紀クン、ここにたまたま『癒しの民』がいたから良かっただろうけど、本来だったら病院行きだ。分かってるか!?」

意外だった。芝浦が怒るなど、四人は知らなかった。

「まぁ、良い。皆、晴紀クンみたいにならぬよう、まずはイメージトレーニングからだ。」

四人はすぐにイメージトレーニングを始めた。己の能力を確立させるためには強いイメージが必要になる。例えば晴紀の場合、天気を変える。そのイメージが必要なのである。どう変化するとか、風向きとか、気温とか様々なイメージが必要だ。

「さて、そろそろイメージも固まってきたろう。次に実践に移るとしようか。まずは慶二クン、キミだ。」

「いや、死の民に何をしろと…?あなたの死を読むとか…?」

「私から体力を吸い取ってみせてくれ。…無論、私は火炎の力で対抗させて頂くがね…!」

芝浦は慶二に攻撃を仕掛けた。…あの火炎の力、並大抵のものではない。慶二は意表を突かれ、芝浦の火を喰らった。

「熱っ…!ひでえぜ…いきなり…」

「これが『火炎の民』である私の実力だ。まぁ、心配するな。さくらクンが治療してくれる。」

「無茶言う…げほっ…!」

芝浦は慶二をいとも簡単にノックアウトさせた。

「気合いが入っていないからこうなるのだ!私と対峙するときは全力で倒しに来い!」

すると、修太が進んで前に出た。

「ならば慶二よりも先に僕の相手をしてもらおうか。」

僕…?修太は自分のことを俺と呼んでいたはずだ。まさか、もう性格が変わりつつあるのか…?

「さすがは水氷の民…クールに決めてくれるじゃないか…!」

「出でよ!我が氷の剣!」

「いいじゃないか!だが、氷の弱点は炎なり!私が絶対的に有利だ!」

芝浦はそう言うと目の前に火を起こした。その起こした火の形を変え、修太に投げつけた。

「…フフ、全て僕の読み通りさ。そう来ると思って用意してたよ。…出でよ!我が波!」

修太は水の波を起こし、芝浦の攻撃を防いだ。そしてさらに氷の剣で斬りかかった。…が、勿論斬りはしなかった。

「…今日のとこは合格だ。お前さんは飲み込みが早くていい。もっと多くの技を使えるようにしておくのだぞ。」

「えぇ、分かってますよ。今よりも圧倒的な強さを身につけます。」

クール過ぎる…!こんなの修太じゃない。

「さて、空の民、岡晴紀。その実力の程を私に証明してもらおうか!」

晴紀はそう言われると体に高揚感を感じた。

「天を翔ること、龍の如し!岡晴紀、いざ参る!」

「ならば行く!我が火炎を打ち破ってみよ!」

芝浦はそう言うと、晴紀に特攻を仕掛けて来た。

「火炎弾!」

「我には利かぬ!相手は龍だぜ!」

晴紀は空高く跳んだ。それは見上げる程の高さだった。当然火など届きはしない。

「…!まさか…空の民がここまで強いとは…!」

さらに晴紀は落ちてこない。まるで空を飛んでいるかのように。

「空を飛んでる…一体どうやって…?」

晴紀は目の前に雲を起こした。その雲は雷を纏っている。

「我が雷よ!火炎を貫け!」

一瞬強い光が瞬き、芝浦の火炎を消した。と同時に晴紀も空から芝浦に攻撃を仕掛けた。

「喰らえ!うぉぉらぁぁ!!」

晴紀の蹴りは芝浦の背中に入った。

「…痛っ!…くー、おいおい、少しは手加減ってことを知らないのか…?」

「フッ…知らないよ。俺はいつだって全力だぜ…?」

晴紀がそう言うと、芝浦は呆れた顔をした。

「…分かった。それならそれでいい。…さて、残すはあと慶二クンだけなんだが…」

と、ちょうどその時、さくらが慶二の治療をし終えた。

「芝浦さん、平石さんはもう行けますよ。」

慶二はゆっくりと起き上がった。

「まだその様子じゃダメかな〜?」

「…いや、行ける。たかが訓練でへばってたまるか!」

「フッ…いい覚悟だ。死の民はこれが持ち前なんだよな。」

そして慶二は身構えた。

「さぁ、始めようか!俺は必ずこの訓練を突破してみせる!」

「そんなに簡単には突破させないよ!なぜなら私にもプライドってものがあるからね!」

芝浦は今までで一番気合いの入った攻撃を仕掛けて来た。

「火炎民族奥義、火炎乱舞!」

さっき倒した慶二に芝浦は容赦しない。だが、慶二は驚く程落ち着いている。

「相手の動きに合わせて…避ける!」

すると、慶二は芝浦の攻撃を避け、すぐ後ろに回り込み、芝浦の右肩に手を置いた。

「これでどうだい?まぁ、師匠のアンタから体力はもらわないけどね。」

「…いいだろう。お前さんもクリアだ。」

見事、慶二は芝浦の訓練を突破した。また、さくらは癒しの民ということで訓練は二度の治療をしていたという理由で訓練はなしとなった。

「さて、今日はこの辺で終わりとしようか。じゃあ、私は帰るから魅凉クン、後よろしく!」

「了解です。…みんな、お疲れさま。飲み込みが早くて驚いたよ。朝早くから疲れたと思うから今日はゆっくり休んで。」

「おう、分かったよ。」

「ところで春原さん、君は一体何の民だい?」

修太がそう聞くと、魅凉は意地悪そうな顔をした。

「…知りたい〜?」

いつもとは打って変わってお茶目なキャラだ。

「知りたいですよ。魅凉さんも私たちと同じPlanβの旅人なんですから。」

さくらがもっともなことを言った。

「…いいよ。教えてあげる。…私は『心の民』」

「心の民…?それは一体どんな能力が備わるんだい?」

魅凉は空を見上げながら一言だけ言った。

「…あらゆる生物の心が読める能力よ。」

そう話す魅凉はどことなく寂しげだった。

「魅凉…?どうした?」

「ううん、何でもない。とりあえず私は心の民ってことだけにしといて。」

「うん…分かった。」

そのまま魅凉は帰って行った。

「どうしたんだろ?」

「さぁ、僕にはわからないさ。」

すると、慶二が立ち上がった。

「んじゃ、俺帰るわ。」

「ちょっと待って。僕も帰るから途中まで一緒に行こうじゃないか。」

「おぅ、それはいい。」

「じゃ、またね。ハル、さくらちゃん。」

二人は雑賀駅まで一緒に行くのであろう。

「さくら、帰ろうか。」

「はい。帰りましょうか。兄さん。」

敬語…?まさか、癒しの民は敬語を使うようになるのか…?…正直、妹に敬語を使われるのはいい気分ではないが、これは運命だ。仕方ないこと。



それから芝浦の訓練は続いた。そして遂にレンダーVがPlanβの旅人に招集をかけた。

「さぁ、行って来い!再びお前さんたちと会えることを願っている!」



そして五人は空に文字を書いた。


『Go to the Planβ』…!

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