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第30話 オレと隣の美少女達と弁当を食べる

 弁当。

 それは夏の体育祭において、汗をかき、大量のカロリーを消費した学生にとって至高の瞬間であり、その日に味わうご飯の美味しさはいつもの弁当の倍と言っても過言ではない。

 むしろ、そのご飯の美味しさを味わうために体育祭という全身汗まみれの体力消費をする競技の数々に出ると言ってもいい。

 そんなオレにとって、この体育祭唯一の楽しみとも言うべき弁当。


 朝早く、両親から渡されたそれをなんの疑いもなく受け取り、学校へ向かったオレ。

 いざ、その蓋を開けてみると箱の中に入っていたのは――千円札が一つ。

 そして、添えられたメッセージ。


『ごめん☆ お弁当間に合わなかった。代わりにこれで何か買ってね♪ 母より』


 …………。

 いやいや、お母様。

 今日は体育祭ということで食堂は休みなんですよ。

 しかも、今からお弁当買いに行こうにもすでに近くの店は、そうした弁当目的の学生達がたむろしており、彼らによって主な弁当などは買い漁られた後。

 一方のオレは弁当があるからと悠々自適に座り込んでいて、完全に出遅れていた。

 つまり、今のオレにこの千円札を有効活用する手段はない。


 ……お、終わった。オレの唯一の楽しみ……弁当が……。


 ガクリと傍目にも分かるほど、落ち込んでいるオレ。

 はー、マジでどうしよう。まあ、こうなったら仕方ないから余ったパンとかを買いに行くしかないか……。

 そう思って、その場を移動しようとした瞬間であった。


「やあやあ、誠一君。何やら落ち込んだ様子だけど、もしかしてご飯がないのかなー?」


 その声に顔をあげると、そこにいたのは満面笑顔の晴香さんであった。


「もしよかったらだけどー、うちのこのお弁当一緒に食べないー?」


「え、マジ? いいの?」


「もちろんー。実は作りすぎてねー。誠一君にならあげてもいいよー」


「本当! 食う食う! むしろ食わせて!」


 迷うことなく答えるオレに即座に隣に座る晴香さん。

 早速、そのお弁当を開けるとそこには豪華盛りだくさん。とても一人分ではない数のおかずがたくさん詰まっていた。


「うおー! すげえおかずの数! どれも美味しそうー!」


「でしょでしょ! これ全部うちの手作りだから、遠慮せずに食べていいよー!」


「マジ! すげえー! 晴香さんって料理もできるんだー!」


「そうなんだよー。うちってば走れるだけじゃなく料理も出来る系のラノベ作家でさー。あれ、これってもう完全無欠じゃない? なんちってー!」


 何やら自画自賛しているが、それは半分聞き流すとしてオレは早速、晴香さんの弁当の中から適当な食材をつまみ、それを口に入れる。

 う、うまい! なんじゃこりゃ! ベタなオチなんか一切必要ない! マジで美味しいぞ! 晴香さん!!


「でしょでしょ! あ、ちなみにそのおかずはうちの『一攫千金転生』のヒロインが五巻で主人公に食べさせたおかずをイメージして作ったんだよー。どうどう? 気になるでしょう? 読み返したくならないー?」


 う、うん、そうだね。まあ、ちょっと気になるかな。

 そんなことを思いつつ、次なる食材に箸を伸ばすと……。


「おー! お目が高い! それはうちの故郷の名物の明太子! いやー、これ地元でもかなり人気のやつでねー! ご飯なしでもいけるんだよー? あ、ちなみにこの明太子『一攫千金転生』の六巻で主人公が地元の名産として作ったやつとおんなじなんだよー? どうどう、興味湧いてこないー?」


 そ、そうっすね。まあ、ちょっとは気になるかな……。

 そんなことを思いながら、オレが次なるおかずを手にすると、それに対しても晴香さんのうんちくが始まるが――


「待ちなさい、誠一君。それ以上、彼女の余計な宣伝文句を聞かなくても、あなたにはこの料理があるわよ」


 ドンとオレの前に随分と豪勢な三段箱が置かれる。

 これは一体? と見ると華流院さんが立っており、その箱を開くとそこには目もくらむほどの料理が詰まっていた。


「こ、これは!?」


「うちの料理人にお願いした特製のお弁当よ。誠一君に分けてあげるつもりで作ってもらったの。ほら、以前ファミレスで食べたハンバーグがあったじゃない? 誠一君、ハンバーグ好きだからもちろん入れておいたわよ」


 見るとそこには美味しそうなハンバーグにスパゲティ、他にも様々な料理が詰め込まれていた。


「ああー! 華流院っち、ずるいー! それ自分で作ってないやつでしょうー!? そんなので誠一君の心を買収しようなんて汚いよー!」


「それはお互い様でしょう。むしろ先に抜け駆けして自分の小説の宣伝している人に言われたくないわ」


「なにをー! こっちはまだ地元のデザートが残ってるんだぞー!」


「私だって、シェフにお願いした特製デザートがあるわよ! 誠一君、どっちを食べるの!?」


「ええと……」


 何やら矛先が怪しくなってきた。

 オレはただ昼飯が食べたかっただけなのに、なんでこんな面倒なことに……。


「先輩ー! 飯まだっすかー? よければ一緒に食べないっすかー! 実は今日、親が作りすぎたんっすよー……って、なんすかこれ?」


 なぜだか樹里まで参加してきて、このあと三人分の弁当を食う羽目になった。

 もうお腹いっぱいです。いろんな意味で。

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