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第27話 オレの体育祭が始まる

「えー、本日はお日柄もよく今年も皆様お待ちかねの体育祭が開催されることとなりました。各学年のクラス。一位を目指して頑張りましょうー!」


『おー!!』


 ということでやってきました体育祭。

 あれから華流院さんと晴香さんは体育祭での決着を待ち遠しにしていたのか互いに準備万端、むしろすぐにでも溜め込んだエネルギーを開放させるべく軽い準備運動などをしながら互いの参加競技の出番を待っていた。

 ちなみにオレは普段から体育を休んでいることから体育祭は大の苦手。

 むしろ、さっさとその日が終わって欲しいイベントの上位である。


「誠一君。今日はお互いに頑張りましょうね」


「誠一君! うちと一緒に出る競技! 頑張ろうね!」


「は、ははっ、そうですね。お互いに頑張りましょうか……」


 しかし、そんなことは露知らず二人は笑顔満点、元気ハツラツな勢いでオレに声をかけるのだった。


◇  ◇  ◇


「それでは最初の種目は百メートル走です。選手は位置についてください」


 審判のその声と同時に華流院さん、晴香さん、そしてその他のメンバーが位置に着く。

 正直、個人的にあの華流院さんが体育祭で誰かに負けるのは想像がつかない。

 というのも前に体育の際に説明したとおり、彼女はルックスや学業だけでなく、スポーツも万能。あらゆる競技において負けなしであり、去年の体育祭も一年生ながら個人成績で一位を取るほどの万能選手っぷり。

 いかに晴香さんがスポーツに自信があるとは言え、さすがに分が悪いのでは……?

 そう思うオレであったが、その考えはすぐに否定されることになる。


「それではよーい……スタート!」


 審判の発砲と共に選手が一斉に走り出す。

 その中で真っ先にトップに躍り出たのは――なんと晴香さんであった。


「なっ!?」


「へへん! 油断したね、華流院っち! ラノベ作家が走れないとでも思ったー? 残念! うちは前の学校の体育祭で個人成績一位だったんだよー!」


 そう言って自信満々に走る晴香さん。

 うお、マジで速い! つーか、アスリート選手並かよ!?

 あの華流院さんが出鼻をくじかれたことに、それを見ていた全校生徒が息を呑む。

 しかし、さすがにそのまま抜かせるわけにはいかないと華流院さんもすぐさま加速を駆け、晴香さんに並ぶ。

 隣にピッタリくっつけられたことでさしもの晴香さんも先ほどまでの余裕の表情を消す。


「ふふん、残念だったわね。さっきのセリフそのまま返すわ。走れるラノベ作家はあなただけじゃないのよ。晴香さん」


「はあー!? どういう意味さー!?」


 と、二人が何やら言い合っているがこちらからはよく聞こえない。

 やがて、無駄なおしゃべりをやめたのか二人は一心不乱にゴールを目指してダッシュを続ける。

 途中何度か華流院さんが前に出るが、それをさせまいとすぐに晴香さんが追い抜き、その繰り返しがされる。

 やがて、両者のスピードが全く同じ域に達すると、そのまま二人はゴールに張り巡らされた白いテープを互いの体で引きちぎりながらゴールを決める。

 互いに汗を流し、激しい息切れを起こしながらも、すぐさま顔を上げて審判に尋ねる。


『どっちが速かった!?』


 二人がそうハモって質問すると、審判はいささか困ったような表情を見せる。

 というのも肉眼ではほぼ同じに見えたため、あれを識別するのは困難ではないのか?

 オレがそう思うと審判も同じ判断だったのか「ひ、引き分けです」と二人に一位のポイントを与える。

 が、いくら一位でも同じ点差というのは許されないのか二人は互いににらみ合うと「ぐぬぬぬ……」と言い合っている。


 あ、ちなみにその後に同じ百メートル走に参加したオレはぶっちぎりの最下位だったのは言うまでもなかった。

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