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第26話 オレの隣の美少女同士の決闘が始まる

「せ”い”い”ち”く”んんんんんんんん!!」


 えっと、なんすか。晴香さん。

 いきなり涙目の晴香さんがオレの席にしがみついてくると、潰れたカエルのような声で叫んでくる。


「どうすれば誠一君はうちの本を読んでくれるの”お”お”お”お”お”お”お”お”」


「え?」


 いや、あの、いきなりなんですか?

 訳も分からずそう尋ねると、


「だって、誠一君未だにうちの本全然読んでないじゃないいいいいいいい! あれだけうちのサイン入りの本をあげたり、最新刊を薦めたりしたのに! 例の後輩と語るのはいつも『異世オレハーレム』の話ばかり! しかもつい最近うちの『一攫千金転生』がアニメで放映されたのに、それに対する感想も一切なし! なんで!? なんでー!? おかしいよー! 絶対におかしいよー! もっとうちの作品のこと話題にしてよー! うわーん!」


 そう言ってワンワン泣き出す晴香さん。

 ああ、そういえば『一攫千金転生』のアニメ始まっていたなー。

 確か一昨日だったか? 一話目はリアルタイムで視聴した。

 まあ、普通に面白かったし、ネットの評判も悪くなかった。

 ただまあ……『異世オレハーレム』と比べると話題になる要素は……うん、あんまりなかったかも。

 いや、普通に面白いんだけどね。普通に。


「なんでー!? 前の学校じゃ皆、うちの作品読んで面白いーって言ってくれたんだよー! なのになんで誠一君だけうちの作品ノータッチなのー!? このクラスだって誠一君以外、皆ハマってくれたんだよー! おかしいよー! こんなのおかしいよー!」


 そう言ってオレの体を前後に揺らす晴香さん。

 というか、よくよく見ると確かにクラスのあっちこっちで晴香さんの『一攫千金転生』を読んでいるクラスメイト達の姿があった。

 しかも中にはガリ勉で有名な「ラノベなんてお子様が読むものだろう?」とかバカにしていた勉野べんの勤太きんたまで読み込んでいる。マジかよ。


「うわーん! どうすれば誠一君はうちの作品を読んでくれるのー!?」


 いや、まあ、普通に読みましたよ。

 ただ二周目はいいかなーと口にすると「うわーん! 『異世オレハーレム』は何度も読み込んでる癖にー!」とますます騒ぎ出す。


「ううぅ……こうなったら、誠一君! うちは君に無理矢理にでも『一攫千金転生』を読み込ませたるー!!」


 はい? どうやって?

 問いかけるオレに晴香さんは「ふふふっ」と何やら奇妙な笑みを浮かべる。


「近く、この学園で体育祭が行われるでしょう? それにうちが個人成績で一位になったら誠一君! 誠一君にはうちの『一攫千金転生』をトコトン読み込んでもらうよー! それこそ『異世オレハーレム』よりも遥かに!」


 いや、なんでさ。

 思わずそう突っ込みそうになったが、それよりも早く別の人が晴香さんの宣言に待ったをかける。


「待ちなさい。勝手にそんな賭けをされたら誠一君が迷惑でしょう」


 見ると隣に座っていた華流院さんが立ち上がり、オレと晴香さんの会話に入る。

 おお、華流院さん。普段はよくわからないままオレに絡んできたり、晴香さんと喧嘩になったりするが、今回ばかりはめっちゃ正しいことを言ってくれてて助かる。

 さすがは学園のアイドル! 助かります! と思ったのも束の間、


「私が誠一君の代わりにあなたと勝負してあげるわ」


 っておい! こらなんでやー!

 勝手に勝負を引き受けるなー!!

 が、そんなオレの心のツッコミを無視して、華流院さんのその勝手な宣言に対し、晴香さんは面白そうな笑みを浮かべる。


「へえー、いいのー、華流院っち? うち、前の学校じゃ体育祭で誰かに負けたことないんだよー?」


「それはこちらのセリフよ。というよりも、やっぱりそういう裏の打算があったのね。自分の得意な科目で誠一君に勝負を挑んで小説を読み込ませるなんて随分と姑息な手段ね」


「う、うるさーい! 代わりにうちが負けたらなんでも言うこと聞いてあげるよー!」


 ん? 今なんでも言うこと聞くって言ったよね? とオレがアホな事を思うと、


「ん? 今なんでも言うこと聞くって言ったわね?」


 華流院さんが全く同じセリフを吐いた。

 やべえ、華流院さんとシンクロした……。嬉しいやら、悲しいやら、よくわからん感情だ……。

 そんな事を思っていると、さすがの晴香さんも自分の発言にヤバさを覚えたのか少し後ずさりするがすぐさま首を横に振る。


「ふ、ふふん! いいよー! 言ってやったよー! 誠一君にうちの作品を読み込んでもらえるなら、それくらいの条件くらい出してあげるわよー! と言ってもうちは絶対に負けないからねー!」


「面白いわ。なら、次の体育祭、私が誠一君の代わりにあなたに引導を渡してあげる。そして二度と彼と『異世オレハーレム』の関係に口を出させないようにしてあげるわ」


 そう言ってバチバチと火花を散らせる華流院さんと晴香さん。

 いや、あの、当事者のオレの意見無視して勝手に二人で盛り上がらないでください。

 というか、オレと『異世オレハーレム』の関係って何?

 え? 恋人? 華流院さんの中でオレと『異世オレハーレム』は恋人みたいな関係になってるの? ねえ?

 色んな疑問を棚上げにされた挙句、オレのラノベ読書の行く末をかけた体育祭の死闘が(勝手に)幕を開けるのだった――。

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