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第20話 オレの隣の美少女と転校生が喧嘩をする

 うーむ。しかし、この『異世オレハーレム』は読めば読むほどいろんな味が出てくるな。さしずめスルメ。スルメラノベとでも言うべきか。

 そんなことを思いながら『異世オレハーレム』を読んでいると、例の晴香さんがオレに声をかけてくる。


「誠一君ー♪」


 なんでしょうか。

 見上げるとそこには満面の笑みを浮かべた晴香さんがいた。


「ほらー、これなんだと思う? 今月発売の『一攫千金転生』の新刊だよー。まだ市場に出回ってないピカピカの新刊。作者のうちに出版社が先に渡してくれた見本だよー。どうー? すごいでしょうー? レアでしょうー? どう読みたくないー?」


「はあ、まあどちらかと言えば読みたいですが……」


「なら、そんな『異世オレハーレム』なんて読むのをやめて、うちの新刊を読んで――」


「ちょっと待ちさない」


 晴香さんがそう告げようとした瞬間、隣にいた華流院さんが口を開く。


「誠一君は今七周目になる『異世オレハーレム』の読書に忙しいの。そんなどうでもいいラノベを読んでいる暇なんかないのよ」


 華流院さんがそう告げると、明らかに晴香さんが不服そうな顔をして睨みつける。


「はあー? そんなの分からないじゃない。誠一君だって、もう『異世オレハーレム』に飽きてるかもしれないじゃないー」


「それはないわ。彼は『異世オレハーレム』に命を賭けているのよ」


 いや、賭けてません。全然賭けてません。むしろ、なぜそうなるのか?

 ツッコミを入れようとしたが、そんな暇を与えず二人の口論が始まる。


「っていうか、華流院さんなんなの!? うちが誠一君に『一攫千金転生』を薦めようとしたら邪魔してきて! もしかして誠一君の事が好きなの!?」


「は、はあー!? じ、冗談じゃないわ! こんな男なんて、す、好きなわけないでしょう! あれだけ私を貶しておいて、なんで好きになるのよ!?」


 華流院さんのそのセリフにオレはちょっと……というか、かなりショックを受ける。

 え、オレ、華流院さんに嫌われていた……?

 昨日の一件や、その前のデート(とオレが勝手に思っている)に誘われたことから、そんなに嫌われてないどころか、もしかして好かれている? これって少し前のラブコメ展開になる? みたいな淡い期待は見事に打ち砕かれた。

 というか、オレ華流院さんを貶めた覚えが全然ないんですけど……。


「じゃあ、なんで邪魔するのよ!? うちが誠一君になに薦めても自由でしょう!?」


「それはダメよ! 言ったでしょう! 彼は『異世オレハーレム』に命を賭けているって! それに普段は確かに辛辣でムカつくことばっかり言ってるけれど、たまに理にかなってるっていうか……ちゃんと見てるっていうか……貶すだけじゃなく、たまーに褒めてくれたりして……その、ツンデレみたいなことしてくるし……」


「はあー!? 訳わかんないわよ! それって自分のこと言ってるの!?」


「な、なんで私がツンデレになるのよ!?」


 と、気づくと華流院さんと晴香さんの言い合いはよくわからない方向に行っていた。

 あかん。ここにいるとオレも巻き込まれそうだ。

 そう思ったオレは二人が言い合いに夢中になっている隙に『異世オレハーレム』を片手に教室を出るのであった。

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