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暇潰市 次話街 おむにバス  作者: 誘唄
勇者は追放を重ねて忘却される
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精霊巫女は激戦を振り返る(前)

章分けで作品を分けています。

大筋としては「勇者が追放を重ねて忘れられる」という話の、8話目になります。

たぶん15話くらい?になります。

折り返しなので、たまには戦闘でも回想しようか。


前回までのあらすじ『戦士追放済』『僧侶追放済』『魔術師追放済』『精霊巫女追放済』


本項のタグ:「ファンタジー」「追放もの」「勇者」

「勇者は追放を重ねて忘却される」

 

 危険領域。


 かつて魔王が治めていた地で、後に勇者が国を興した地。そして魔物の氾濫により住民の多くがゾンビ化し、魔物もまたゾンビ化した呪われた地。


 勇者の国の跡地は、今ではそう呼ばれている。



 近隣国との往来も盛んだった頃の名残を、今の首都跡に見つけることは難しい。


 王城を取り囲む住居の多くは腐って崩れかけており、街道には腐った水とガスがあちこちに溜まっている。

 王城は形を留めていたが、その門扉は硬く閉ざされたままで、内側からもゾンビが蠢いている声が聞こえてくる。



 人間も魔物も死者となって徘徊している、勇者の国の成れの果て。


 勇者アランドラはその地を目指し、ついに辿り着いていた。



 通りに死者と魔物の死体が蠢く土地には精霊の気配がほとんど感じられず、ビルキッタは国外から連れてこれた精霊に祈りを込める。

 国土全域を浄化することは無理だと一瞬でわかる環境で、ビルキッタは少しでも勇者パーティが活動しやすいように周辺から浄めていく。


 僧侶ベルンや魔術師ボルテウスが魔王の呪いの大元を探しても見つからない。

 だがそうした行動が魔物たちを反応させたのだろう。


 魔物が放つ魔術を精霊に取り込ませ、ゾンビや魔物を勇者アランドラや戦士バルドゥルが駆逐する。そうして王都の中央へと踏み入ったとき、それらを操る大元の存在が姿を見せた。



 悍ましい瘴気を放つドラゴンゾンビだった。



 その脚が地面を踏み鳴らすたびに土が腐り、尾を打ち鳴らすたびにガスが沸いて出る。声帯がない喉から猛る雄叫びは、パーティ全員の身体が震わせる。そしてその声に呼応する様に、そこかしこからゾンビ化した魔物や人の姿が湧き出した。



 勇者パーティと言っても誰もが歴戦の勇士というわけではない。

 商人見習いの青年、老いた農民、幼い羊飼、年齢不詳の道化師など。老若男女国籍を問わない有象無象が兵站を担っている。



 当然ドラゴンゾンビなど見たこともなく、その姿や声に恐慌状態に陥った。



 逃げることもできずに、王都の広場でうずくまる集団。それに迫りくる死体の群れと、睥睨するドラゴンゾンビ。

 それが自分の死なのだとビルキッタも諦めたとき、勇者の声が響いた。




「死んだ魔王の力は死者にしか及ばない! 魔王亡き後に力を移された竜の亡骸よ! 賢者に代わり勇者アランドラが責を負いにきた! 全てを地の底へと埋めるがいい!」




 大声に驚き、言葉を受け止めきれず、多くの者の頭が空白で占められる。


 反射的に行動していたのはほんの一部。




 僧侶ベルンが迫りくる魔物の死体に凍血魔術を放った。



 魔術師ボルテウスがゾンビの群れに雷をいくつも降らせた。




 道化師は恐慌から錯乱したのか、穢れた土を掴んでは勇者パーティに向けて撒き散らす。




 戦士バルドゥルが背後から勇者アランドラへと斬りかかり、その剣を受け止めて吹き飛ばされるようにして勇者が空を舞った。




 それが一瞬のうちに起こり、少し間を置いて勇者がドラゴンゾンビへと剣を振り下ろす。




 土を払い臭いに咽せた者たちが戸惑いの中で目にしたのは、そんな絵画のような一幕だった。


 魔術の衝撃や剣が打ち合った音が多くの仲間たちを我に返した。穢れた土を吐き捨てた商人見習いの青年が、円陣を組むように指揮を取る。群衆の中でも頑強な者たちが盾を手に取った。

 外側に盾を、内側の隙間から槍を、その後ろでは火炎瓶や薬草などの準備を行う一団。戸惑い慌てながらも、それが整うまでの時間が稼がれた。


 円陣の中央部で箱を積み上げ、その上から魔術師ボルテウスと僧侶ベルンが魔術を放ち続ける。

 ビルキッタもそれに倣い、精霊に祈りを捧げた。

 円陣の周辺を浄化して魔物たちが寄り付き難くするために。







パーティって何人くらいまでを指す言葉なんですかね?

むしろこの勇者パーティってクランとかのほうが近い言葉な気もしますが。

老若男女出生貴賤を問わず平等に勇者の仲間ですが、当然得意分野は個々で差があります。




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