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暇潰市 次話街 おむにバス  作者: 誘唄
どうしようもないじゃない
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どうしようないじゃない(3/5)

たまには恋愛モノも書いてみた、ということでその続きです。


本項のタグ:「学生恋愛」「百合」「筆者には珍しい普通の恋愛モノ(自称)」「全5回構成。3回目」

 そのままデートすることになり、最寄りのデパートを見て回った。


 混乱していた犬系男子も諦めたのか、デパートまでの道中で一番喋っていたが、ゲーム実況者とか動画の話が多かった。


 たぶん楽しめるもので盛り上がろうとしたのだと思う。


 体育系男子しか知らなかったので、私も彼女もちょっと呆れ気味になったけど。



 私もそんなに同年代の男子と話すようなネタはない。


 流行りのコーデとか新しいクレープ屋とか、彼女が食いつきそうな話題ばかりになったのはわざとではない。



 でもそんな道中のやりとりがあったからか、デパートに着いたときにはコスメコーナーに直行する彼女を追うことになった。



 男子たちにもメイクを勧めたりして遊び、彼女のお勧めのグロスの試供品を貰って、今度お互いにメイクのやり方を教えあう約束をして。



 退屈に疲れたような男子のリクエストで本屋に向かい、名前しか知らない少年漫画の巻数の多さに笑い、説明される内容を聞き流して、それぞれが買った本や雑誌を持ってフードコートに落ち着いた。



 体育系男子がバスケ部だと聞いて手の大きさを比べてみたり、犬系男子のお勧め漫画を読んでみたり、彼女とファッション雑誌を見てどれが似合うか選んだり。




 教室で喋っているのとあまり変わらない時間に、胸の痛みもいつのまにか気にならなくなっていた。




 四人の姿を撮って加工したり、待ち受けにしたりして笑っているのは、意外と楽しい時間だったからだろう。



 だから彼女と二人で席を外してメイクルームに入っても、鏡の中で私と目があっても。


 胸が痛いとか苦しいだなんて嘘になっていくんだとわかる。



 そうして、きっと私は彼女が選ばなかったほうとそれなりに恋人みたいに過ごして、泣けもしない失恋をして、恋人が欲しいなんて笑うのだろう。



 楽しいねと笑いかける私を、鏡の中の彼女が見つめてくる。


 ちょっと吊り上がっているのを誤魔化すシャドウが、きゅっと細くなる。


 細い鼻が、すん、と小さく音を立てて、小さな口が開く。




「あいつらどう思う?」




 そんな問いかけに私は自分が選ぶことを考えていなかったと知る。


 見つめたままの彼女から視線を逸らし、二人のことを考える。



 犬系男子は意外とお喋りで漫画と動画好きだけど。体育系男子はちょっと無愛想でバスケ部で体格もしっかりしているけれど。




「絶対あいつら、お互いのこと好きだと思うんだけど。今時同性カップルなんて珍しくもないのに、なんであんなに臆病なんだか。意味わかんなくね?」




 そんな言葉は二人のことを頭から吹き飛ばした。


 鏡の中の私は、笑顔を貼り付けたままで動かない。


 散り散りになった二人の顔も声も、まるで形になってくれない。


 混ざり合ったジグソーパズルに意識を向けても、鏡の中の彼女の不満そうな顔から目が逸らせない。


 無意識に取り出した試供品のグロスは震えた指から逃げようとしている。




「さっさとくっつけばいいのに。もどかしくて、ぐぁ〜って叫びたくなるじゃん。好きなら好きって言えって話でさぁ」




 なんでそんなことを言うの。

 お願いだから、そんなことを言わないで。



 張り裂けそうに訴えてくる、胸の痛みに耐えられなくなるから。



 叫びたい気持ちを全く出さない、鏡に映る貼りついたような笑顔を見ながら、震える指先がグロスを塗る。



「好きっていっちゃえば絶対うまくいくと思うのにさぁ。好きって言われんの、すっげぇ嬉しいじゃん。そんなに好きじゃないヤツだとしても、好きって言われたら絶対好きになるじゃん。だからさっさとくっつけば」


「好き」




 彼女と同じグロスから香る甘い匂いを吹き消すように、言葉が溢れた。



 あぁ、だめだ。

 絶対に言わないでおこうって思っていたのに。




 戸惑いながら私を見つめて口を止めた彼女を見つめる。


 その瞳が揺れているように思えて、今ならまだ冗談にして終わりにできると思うのに。


 胸の奥から響くうずきが、冗談なんかじゃないんだって叫んでいる。





「好き」





 ちゃんと正面から向き合って。


 ちゃんと本気で。


 漏れ出るような言葉じゃなくて。


 胸の痛みを確かめるように、しっかりと思いを詰めた言葉で。




「え……や、あは……ジョーク?」





 終わった。




 結局、冗談にしかならないんだ。



 こんなに痛む気持ちが伝わらないって、最初からわかっていた筈なのに。



 それでも誤魔化されて無かったことにされた気持ちが、痛みがどうしてまだ消えないのだろう。


 どうしてまだ好きだと思うんだろう。



 もうどこにも行き場がなくなった痛みが、いっそ私を殺してくれればいいのに。




「嘘つき」




 身勝手な絶望に押し出された言葉は、少しでも彼女に痛みを伝えたいわがままだとわかっている。



 でも、それ以上は形にならない言葉が勝手に流れ出ていく。


 涙になって。




 お願いだから、この気持ちも一緒に私から出ていってよ。






だって涙が出ちゃう。女の子だもん。


っていうネタ、今も通用するんだろうか?

むしろ当時でも女の子の方が全力で泣かせにきていたような記憶が(消去しました)







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