世界の外の雑な話(1/5)
しばらく他の話をあげていたので、こちらの更新はお久しぶりです。
……サボっていたわけじゃナイヨ?
本項のタグ:「チートとか迷惑です」「酒でも飲もうか」「グチリとキキ」
通話口から聞こえる眠たげな声に、ちょっと遅い時間になっているのを感じた。
それでも溢れる文句は止まらない。
怒るでもなく話を聞いてくれる相手に感謝を覚えても、それを上回る怒りが口をなめらかにさせているのだ。
だって他人に異世界チートを押し付けるなんて、どう考えても普通じゃない。
「ご近所さんへの挨拶って気をつかっているのはわかるのよ? でも異世界チートよ? そんなもの貰ったってこっちの世界に悪影響しか無いじゃない!」
「うーん。異世界の人間って常識ないからねぇ」
「そうそれ! 常識外れなだけならまだいいのよ? いずれ覚えていくことだし、覚えられなければ淘汰されるじゃない。でも異世界チートなんかあったら覚える前にやらかすの! それもだいたい常識的におかしな方向に!」
「あー、多いねぇ。そういう変なことする奴。魔王名乗ったり世界制服しようとしたり。一夫一婦制の国でチーレム築こうとして王権奪ったり」
「そうそう! まぁそこまで世界レベルな悪影響じゃなかったんだけどね……」
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転移によって放り出された世界は異常な暑さと日差しに満ちた砂漠。その中にオアシスがなければ、人に会う前にミイラになっていただろう。
貴重な果物を分け与えてくれた住人にお礼をしようと、オアシスに寄っていた行商人から種籾を買った。本当はもっと遠くの街で売るはずだったが、ラクダが熱で倒れたために諦めたらしい。
先週よりも小さくなったオアシスに嘆き、捨て値でいいと投売りされた。
最も捨て値さえ金がないため、代わりに払ってくれた恩人には頭が上がらない。優しい笑顔を向けられて、彼女のためにも環境を変えようと決意する。
異世界転移によって身についた、育成チート。
それを種籾に発揮させれば、砂漠だって一面の稲穂で埋め尽くせるだろう。
成長するために足りないものは他のもので補うというから、見渡す限りの砂が代替物として消費されると思う。
砂漠が食料に取って代わるのだから、誰も文句をつけようがないだろう。
そんな結果を思い描いて、種籾を一掴み。
チートを込めてばら撒いたけれど、全く目が出なかった。
ちょっと困ったように微笑む彼女の視線を受けながら、種籾をひとつまみ。チートを込めてばら撒いて、それでも芽は出てこない。
慣れないうちに多い対象には使えないのか?
投げやりな行商人の冷笑を浴びながら、見守る彼女の苦笑から目を逸らす。
種籾を一粒摘んで、全力でチートを込める。
ここで発揮できなければ何のためのチートなんだ。
握り締めた掌に種籾がチクリとしたけれど、それでも祈るようにチートを込める。
もういいよ、と彼女が口を開いたけれど、握った手にチートを込めて発芽する種籾をイメージする。
オアシスを放棄して住人全員で砂漠を渡ればいいと、彼女は言う。
老人や子供は連れていけないし、半分くらいは途中で死んでしまうだろうとわかっていながら、彼女は優しく笑う。
自分も置いていかれるとわかっているのに、彼女は笑うんだ。
そんな結果を受け容れるなんてできるはずがない。
だから必死になってチートを込めた。
そうして指先が押し返された。
発芽した緑色の茎と広がっていく葉。それはどんどん伸びて育っていく。
そして、それの数倍の速さで白茶色の根が伸びていくのが見えた。
俺の掌を引き裂いて、行商人に絡みついて、彼女にもまとわりついて。
根を、下ろした。
そうして一粒の種籾が、オアシスの全てを呑み込んでいくのを、俺は絡まった根に吸い尽くされながら眺めるしかできなかった。
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「マトモにチートの使い方もわかってないのよ。何の肥料もないところで育成チートなんて使って。おかげでオアシス周辺が枯死して、稲穂一本だけ残ったわ。すぐにそれも枯れて砂になったけどね」
「はぁ……? 何がしたかったの、その人間?」
「さあね。異世界の人間の考えなんてわかんないし。そのせいで余計な死者が増えたから、転生処理でエラーが出たわ」
「あぁ、今日遅かったのはそのせいなのね……」
そんな愚痴を溢し、転生処理エラーの簡易解決方法を教えてもらい、今日も夜が更けていく。
久しぶりに小噺を書くと、なんだか傾向が偏るような?
気にならない方は今後ともよろしく。
一応、全5回予定です。




