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おもちゃの声が響いてる

前々話の「夏にまにあえ(ぼいどら風」を友人に提供した際に、「もう一個書いてくれ」とリクエストを受けたて渡したものになります。

何個書かせるつもりだろうか? と面倒くさく思いながら、テキトーに書いたため、キャストの一人が出番なしになっています。


本項のタグ:「ヒューマンドラマ(?)」「おもちゃ」「古々々々々々作品の使いまわし」「ぼいどら風」

登場人物


N:ナレーション。サングラスのイメージが出てしまうのはあきらめた。

M:母親。口うるさくて身勝手。祖父と一緒に住むことになったのが不満。

F:父親。単身赴任中。現在不在。(出番なし)

B:僕。ゲーム好き。怒鳴り声の多い家でイヤホンを使う習慣がついた。

G:祖父。コレクションを捨てられてから少しボケ気味。








シーン1(導入)




おもちゃというものは、いろいろな音を奏でています。


シュッシュッ、というカード同士のこすれる音を聞けば、トランプを思い出します。


木に打ち付ける、パチーッンという甲高い音を聞けば、思わず王手、とつぶやいてしまいます。


おもちゃにはそれぞれ固有の音があり、それはいろんな思い出を呼び起こします。


今回は、そんなお話。








シーン2(回想)BGM:雨音→ゼンマイきりきり。




N:それはまだ梅雨のころ。雨音の響く部屋の中で、泣きながら謝り続けていた。


B:じいちゃん、ごめんなさい。


G:あぁ、いいんだよ。泣くほどのことじゃない。


N:バネの切れたブリキのおもちゃ。大切なものだといっていたのを思い出して、大変なことをしてしまったと思った。


G:よしよし。これくらいだったら簡単に直せるよ。


B:直るの?ほんと?


G:あぁ、今はそうでもないかもしれないが。おもちゃっていうのはな、壊れたのを直せるもんさ。


G:…………ほら、直った。


N:そう言っておかれたおもちゃは、きりきりと音を立てて動き出す。


B:……ほんとだ。じいちゃん、すげぇ。


N:自分の手でおもちゃを直す祖父を尊敬のまなざしで見つめる。照れたように微笑む祖父が、


B:じいちゃんって、かっこよかったんだな。


N:素直に、そう思った。








シーン3(騒音の家)BGM:ゲームピコピコ




M:また勝手に出歩いて! 部屋でおとなしくしててくださいって何回言ったらわかるんですか!?


G:あぁ、いや、すまないねぇ。そうだったねぇ。


N:熱帯夜のいら立ちをぶつけるように、母親が祖父に怒鳴りつけている。


B:僕は一瞬画面から目をそちらに向けて、見なかったことにする。


M:そうだったねぇ、じゃないでしょう! よそ様に迷惑にならないように、部屋から出てこないでください!


G:うん、すまないねぇ。でもおもちゃが見つからなくってねぇ。


M:あのガラクタなら捨てたって言ったでしょう! とにかく、もう部屋に戻ってください! 私はいまから出かけるんですから!


B:ゲームのボリュームを上げて、イヤホンを耳にさしなおす。くだらない音で邪魔されたくない。そう思う。


G:すまないねぇ。気を付けていっておいでねぇ。


M:あんたもいつまでもゲームやってないで、ちゃんと宿題やんなさいよ!


B:はーい。(棒)


N:叩きつけられるように閉められたドア。祖父の徘徊を責める母親自身も夜は家にいない。


G:おもちゃはどこにいったんだろうなぁ。


N:ぼんやりと、どこを見るでもなく見つめながらつぶやく祖父。梅雨のころ、かっこよく思った祖父はもういなくなってしまった。








シーン4(失踪)BGM:ゲームピコピコ→鈴虫。




B:あれから、ジジイは5回いなくなった。僕も探すのを手伝わされたり、近所のババアに「かわいそうにねぇ」なんて言われて、すっげぇむかついた。全部、クソジジイのせいだ。


M:それじゃ、出かけるから。あんた、ちゃんと宿題やんのよ。


B:はーい。(棒)



N:いつものように出かけていく母親。そちらに目を向けることもなく、ゲームを進めていく。


N:少し時間が過ぎて、やかんが音を立てた。



B:あのババア、火事でも起きたらどうすんだよ。ってぇか、ジジイいるんなら止めろよなぁ。ったく、使えねぇ。


N:火を止めて、リビングを見渡す。つけたままのTVの前に、置物のようになった祖父の姿が



B:………………あれ?



N:なかった。部屋にこもっていると暑いらしく、この時間はTVを見ておとなしくしているはずの祖父は、その定位置には座っていなかった。



B:おい、ジジイ、どこ行った?死んだか?



N:いやな予感を抑え、イベント情報を伝えるTVを消す。トイレと祖父の部屋を見てみるが、やはり姿はなかった。代わりに、玄関の鍵が開いているのが見えた。



B:ババアが鍵をかけなかった……ってことじゃねーんだろーなぁ、くそっ。あー、面倒くせぇなぁ!



N:悪態をつき、部屋に戻って財布と家の鍵、携帯を手に取り短縮を押す。



B:っとに、マジ最悪だよなぁ。なんであんなジジイの面倒見なきゃいけねぇんだよ。



N:いらだちながら玄関に向かう背中に、コール音が聞こえた。頭を抱えたい気持ちになりながらそちらに向かうと、なぜかリビングで母親の携帯がなっていた。



B:ざっっけんな、クソババアッ! こんな時は絶対に連絡しなさい、って言っといて何してやがんだよ!



N:やりきれない気持ちで怒鳴りつけ、外へと向かう。なり続ける母の携帯をゴミ箱にぶち込んで。








シーン5(散歩)




B:……なにやってんだよ。


G:ん? あぁ、少し、散歩でもしようかと思ってなぁ。


N:家を出てすぐに祖父は見つかった。ほっとしたのが、何に対してなのかと思う間もなく、怒りがわいた。


B:ざっけんなよ! ジジイ! 家でおとなしくしてろよ!


G:あぁ、心配させたか。すまんかったなぁ。聞こえてきたもんでなぁ。


B:…………あ?


N:そう言って祖父はうれしそうに微笑んで、頭を撫でた。


B:ジジイのこんな顔は、初めて見た。はずなのに、どこかで見たような気がした。ジジイの笑顔なんて、見たことはないはずなのに。


N:遠くから、聞こえてくる祭囃子。


G:毎年、この時期は祭りがあるんだ。連れて行ったことはなかったかもしれないがなぁ。


B:あぁ……。まぁ、行ったことはあるよ。親父とだけど。


G:そうか。そういえば昔、おもちゃを見せたことがあったなぁ。


B:…………うん。


G:祭りに、一番のおもちゃを見に行こうか。


B:…………うん?


N:そう言って祖父は手を握り、歩き出した。祭囃子の聞こえるほうへ、ゆっくりとした歩みで。








シーン6(祭り)BGM:祭り。




N:並んだ夜店の間を浴衣姿の人々がひしめいて、祭囃子が楽しげに響いている。


B:あれ、ぜってぇ倒れないようになってるだろ。


G:ははっ。まぁ、そういうもんだなぁ。あれは。


N:射的で戦利品を獲られず、代わりにリンゴ飴を買ってもらった。


B:祭りならではだよなー、これ。


N:射的、投げ輪、ヨーヨー釣りに宝釣り。祭りならではのおもちゃは、不思議な懐かしさを感じさせる。


B:ヨーヨーっていうか、水風船だよな、これ。


G:かたぬきもやりたいんだが、この祭りにはないみたいだなぁ。


B:なにそれ?


G:んー。なんて説明したらいいかなぁ。


B:さっき言ってた一番のおもちゃってやつ?


G:あぁ、それはもっと格別なやつだなぁ。昔、じいちゃんはそれを作る仕事にあこがれててなぁ。


B:へぇ。そんなすげーの?


G:あぁ、ここにきてる人は、みんなそのおもちゃが好きなんだよ。ほら、そろそろ時間だ。


B:時間?



N:甲高い、笛のような音。その直後に響いた爆音に、周囲から歓声が上がる。オレンジや赤や緑、さまざまに照らし出される笑顔。



B:…………花火?


G:あぁ、一番のおもちゃだ。


N:うれしそうに、笑顔を浮かべた祖父。周りの人たちと同じように夜空を見上げて、満足そうに笑っている。



B:…………すげぇ音。



N:花火がはじけるたびに、音が体に響く。まるで心臓を揺さぶられるように。どこかで、たーまやー!と叫ぶ声がする。



B:なぁ、なんで、花火が一番なの?


G:ん?そりゃぁ、これだけの人を一度に笑顔にできるおもちゃは、そうはないからなぁ。


B:ふーん。


N:花火に照らされた祖父の笑顔は、梅雨のころに見た優しくてかっこいい笑顔。


B:おもちゃって壊れてるのを直せるのかな。


N:そんなことを思いながら、祖父の手を握った。


B:僕も、おもちゃ屋になれるかなぁ。







シーン7(終幕)




N:今年も夏は祭りや花火大会がたくさんありますね。


N:みなさんはもう予定は立てましたか? まだの方はお早めに約束をしておきましょう。


N:おもちゃの声に耳を傾けるのも、いいものですよ。


N:え? 花火はおもちゃか?


N:売り場はおもちゃ売り場ですよ。それ以上は花火に聞いてください。


N:ちなみに私はヘビ花火が好きです。


N:みなさんはどんな花火が好きですか?








へび花火が好きなのはナレーションで筆者ではありません。

もしかすると直接見たことはないかもしれません。

花火は長野の山奥にら…………連れて行ってもらった祭りで見たものが、とても印象的でした。


皆、お面で顔を隠して、太鼓や笛の音に合わせて踊っているのに、とても静かな人込みの中。

打ち上げられた花火と、段々畑に映る花火。


山間に見えた景色だったような気がします。

誰と行ったのか、何という祭りだったのか、どうやって帰ってきたのか、全く記憶が残っていませんが。


まぁ、夢だったとしても綺麗なものが記憶にあるのは良いことです。


皆さんも、花火を見に行きませんか?

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