夜明け
恋愛風味のものを続けたリバウンドで、ただ夜が明けただけの話です。
こういう風な話って、書いてもジャンルがよくわからない……。
まぁ、他の話のジャンルもよくわからないんですけどね。
本項のタグ:「ただ夜が明けた話」「ジャンル不明」
今日も勝手に朝が来た。
カーテンの隙間を潜り抜けた朝日が照らす室内は薄暗く、まだ夜が残っている。
眠い頭で起き上がり、朝の中へと進めば足先がほのかに暖かく染まる。朝日を全身に浴びるようにカーテンへと近づけば、眩さが溢れて目を閉じる。まぶた越しにも赤い朝だ。
カーテンを開くと部屋の中の夜は追われたように逃げ出していく。クローゼットの奥。部屋の片隅。机の下。
振り返って目を開いても、もう夜は出てこない。部屋中が朝日に照らされて、逃げ遅れた夜の後ろ足がドアの隙間へと滑り込む。
軽く伸びをして、微睡続けるベッドへとパジャマを脱ぎ捨てる。
逃げた夜を追うようにドアを超えても、もう夜はいない。朝でも夜でもない廊下を歩けばバスルームに辿り着く。
髪の隙間や口の中、身体のあちこちに隠れていた夜を洗い流し、朝を受け入れる準備を整える。
水に溶けた夜を拭いながら朝の中へと戻り、クローゼットを開く。
ジャケットのポケットに隠れた夜はそのままに、夜のいない服を選ぶ。
朝に染まったテーブルの上に並べれば、ゆっくりと朝に染まっていく。
それを待ちながらコップにお湯を注ぎ、今朝の気分にあうものをいれる。
コーヒー紅茶、ハーブにジャム、白湯に砂糖に蜂蜜黒酢。
並べられた瓶から選んで、お湯に溶けていくのを待つ。
そうしてぼんやりと朝に包まれて、身体がじんわりと染まっていくのを待つ。
まぶた裏に残っていた夜に誘われかけて、カップを撫でて朝に戻る。
少しだけ冷めたカップを傾けて、身体が熱を思い出す。
テーブルに手を伸ばせば身体よりも暖かく染まった服。
それを纏って立ち上がり、身体中に朝が満ちていくのを確かめる。
朝でも夜でもない廊下を歩いて、鞄を手に取って中から鍵を取り出すと、隠れていた夜が滑り落ちた。
ドアを開けて外に出て、振り返って鍵をかけ、朝と夜を閉じ込める。
さぁ、今日も一日をはじめよう。
朝でも夜でもない中を、歩く。
扉の向こうが夜で満ちるまで。
こういう見方を変えただけの話というか、雰囲気を重視した話というか、あまり最近のファンタジー系では見かけないですね。(読んでる量が少ないだけかもしれませんが)
そもそも自分が読んでいたこういう感じの話がファンタジー系だったのかもうろ覚えです。
まぁ、難しいことは忘れて眠りましょうか。
どうせまた勝手に朝はやってくるので、それまではゆっくりしましょう。




