表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暇潰市 次話街 おむにバス  作者: 誘唄
「単話3」
48/281

ただ、鬱々と朽ちていく

恋愛風味のものを続けたリバウンドで、ただ無為に鬱々とした話です。

ただの偏見ですがエッセイとか私小説だとこういうのもありな気がします(真偽不明)。


本項のタグ:「ただの鬱々とした話」「こういう救いがなく落ちていく風な話も書きます(今更の宣言)」「作者の実話ではナイデス」「チガウヨ?」

 風邪をひいてしまった。


 不摂生を指摘されることもない一人暮らしが長くなると、季節の変わり目に身体がついてこないことがある。

 古ぼけた四畳半に置かれたコタツは一年中そこにあり、コタツ布団だけが押し入れを出入りするが今年はまだひきこもったままだ。

 万年床と化した煎餅布団は埃っぽく、タバコが開けた穴がいくつもある。それを隠すように覆う毛布に包まりながら、暑さと寒さを感じている。


 週末になってから体調が崩れて、土曜日はほとんどを寝て過ごした。冷やご飯をお茶漬けにして卵とネギを散らして食べたのが何時だったのかはわからない。

 誰もいない部屋の流しには、お碗と箸が水に浸されているが、洗う気が起きない。起き上がる気もしない。

 それでも空腹ではあり、風邪薬も飲まないといけないという義務感から起き上がる。

 固まった足腰がふらついているのを感じながら、コタツを避けて流しへと向かう。

 ヤカンを火にかけて流しの下から買い置きのカップ麺を漁ると、激辛の文字が見えたので別のやつを手に取る。


 お湯が沸くのを待つ間に喉と口のへばりつく感じが気になり始めて、軽く水道水で口を濯ぐ。

 足元に転がる缶ビールをゴミ袋に押し込んで、冷蔵庫を開いて取り出す。ビール以外の飲み物を冷蔵庫に入れる習慣も身につけた方がいいと、風邪を引く度に思う。しかしビールの喉越しは風邪をひいている時が最高だとも思いながら、一息に飲み干していく。


 空になった缶を流しに放って、毛布に埋もれた携帯を発掘すると、いくつか通知が残っていた。

 お祈りとスパムが並ぶ画面でゴミ箱が掃除を始め、綺麗になっていく。部屋の中よりも綺麗になった受信画面は白く、チリ一つない。


 ヤカンがぐらぐらと音を立てているのを眺めて、飯を食べて何になるのかという疑問が過ぎる。しかしカップ麺が美味いことは知っているので、身体はカップ麺のフィルムを剥がしている。

 お湯を注いで口を閉じて、流しに放って置かれた箸を拾って適当に洗う。

 携帯に目を向けてもメールはもうない。


 アプリを開いて雑多な人々の呟きを眺めても、ほとんどは無意味なものばかり。意味があるのは金を配る一部の成金くらいで、金をくれと声をかけておく。

 金をくれ仕事をくれと呟きを流しても、実際に貰えることはないとわかっている。

 絡んでくるのは怪しげなバイトや、あからさまに受け子とわかるようなものばかり。捨て垢から畜生働に誘われることもある。

 普通に仕事をして普通に生活することが、どうにも難しい。年をおうごとに難易度が跳ね上がる。

 今時珍しい据え置き型のテレビをつけても、明るい話題など出てこない。

 意味のわからないコメディ。意味のないニュース。中身のないドラマ。興味も縁もない外国の旅行記。勧善懲悪の時代劇すら殺人描写があるからと地上波では映らない。スポーツすら優劣を煽るという理由で有料配信だけになった。

 そのうちニュースも映らなくなるだろう。そもそも良いニュースなんて何一つないのだから、流す意味もない。


 人生は悪いニュースばかりだ。まだ先が長いことも、仕事がないことも、金がないことも。

 そんなことに囚われて鬱々としていたせいで、カップ麺が伸びてしまったことも。



 悪いニュースばかり見てないで、カップ麺だけでも食えばよかった。








例えば、この後バーに行って女中を口説いて玉川上水に身を投げたりする、というふうに続ければ傑作になる可能性が芽生えるかもしれませんが、どこかで聞いたような話になるので書きません。


「悪いことにばかり気を取られていると、起きないはずの悪いことがおこるよ?」という教訓話でもあります。


まぁ、そんなことはどうでもいいのでカップラーメン食べましょう。

(なお投稿時間は深夜1時です。一番おいしい時間ですね)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ