表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暇潰市 次話街 おむにバス  作者: 誘唄
ボケバカリン(ラブコメ)
46/318

隣の花は赤く、七難は隠れない

短編が全体的にホラーに偏ってきたのを誤魔化すためのラブコメ最終話です。

一応、4話連作となっていて、奇数話と偶数話で視点が違います。


本項のタグ:「ラブコメ」「高校生」「4/4:須藤誠一すどう せいいちの主観」

 


 振り切れた感情とはち切れた涙腺が落ち着くまで、昼飯の時間全てが費やされた。

 飯抜きになった腹が辛くて授業をサボって帰りたい。何よりも単純に、さっきの直後に隣の席に戻るということ自体が辛かった。

 カリンの顔を見る勇気など湧くはずもなく、ため息を堪えながら席へと着いて前席の野球部頭を凝視する。

 チャイムが鳴って教師が入ってきても、教科書を出す気にもならない。この感情を言い表せる言葉など教えてくれない授業が空々しく流れる。


 結局、約束を覚えていたのも、結婚したいと思っていたのも、自分ひとりの空回りだったのか。

 さっきまで何度も繰り返した問いがループして、否定し続けていた自分は涙と共に流れ去った。

 もう追いかけることに意味はないと思い知って、それでも未練が残っている自分の情けなさに不快感を覚える。

 それでもいつも通りのカリンを見れば俺の情けなさに止めがさせるだろうと、自暴自棄な気持ちで隣の席へと目を向けた。


 やっぱりカリンはいつも通りに、うたたねしているらしい。俺の告白も気持ちも全部、無かったことにして。

 苛立ちすら起こらず、弁当箱を出したままで机に突っ伏しているカリンを起こす気にもならなかった。

 とりあえずポーズだけでも授業を受けるフリをするかと教科書を取り出したが、手遅れだったらしい。


 教壇に立っていた史学の教師と目があう。

 化粧が張り付いて固まった笑顔が無言で隣の席を指差すのに、苦笑いで返す。


 どうやら俺は助かったようだが、犠牲者は未だその事実に気づいていない。

 動かないままのカリンを指先で軽くつつくため、静かに脇腹へと手を伸ばしていく。

 いつもなら教師に悟られる前に済ませていた行為は、くすぐったそうに起きたカリンに睨まれるまでがセットになっている。


 しかし、今回はいつものセットとは違っていた。


 指先が触れた瞬間にカリンは飛び起きて立ち上がり、弾かれた机と椅子がぶつかった前後の席が大きく揺れる。

 触れた脇腹を押さえたカリンの顔は、見たこともないほどに赤い。

 真っ赤な顔で引き結ばれた唇の感触を思い出しかけた瞬間、その赤が飛び込んで唇へとぶつかった感触に上書きされる。



「ごめん! でも大好き!」



 後退りながら叫んだカリンと唇に張り付いたものに混乱して、無意識に手が拭う。何を言われたのかも、何故タコ足が飛んできたのかも理解できない。



「本当バカでごめん! もう、嫌いになっちゃった? 私、信一と結婚できないのかな?」



 それでも、真っ赤な顔で涙ぐむカリンを見て想うことは一つしかない。

 ずっと昔から見続けてきた、ずっと変わらないバカな顔。迷惑をかけたと理解した時に見せる表情に、怒鳴りたい衝動が溢れてくる。

 だから、立ち上がって思い切り叫んだ。



「バァカ! ボケバカリン! ずっとずっと結婚するつもりなのが何でわからないんだよ! あぁもう! ちゃんと交際してちゃんとプロポーズするつもりでいたのに、全部めちゃくちゃだよ!」



 目に映るのはカリンだけ。泣き出しそうで嬉しそうで困ったような、その全てが溢れ出る喜びで笑顔へと染まっていく顔だけを見つめて、手を伸ばした。

 少しだけ躊躇いながら、しっかりと握り返された手を引き寄せると、間にある椅子を踏み上がって飛びついてくる。

 昔よりも大きくなった、少しだけ小さな身体を抱きしめて、俺はカリンを見つめて言った。



「バァカ。本当なら今すぐにでも結婚したいのは俺だって同じなんだからな」


「うん。ごめんね。本当にごめん。今すぐ結婚したい。結婚式もしたい。婚姻届も出したい」




 嬉しそうな笑顔につられて、俺も笑ってしまう。

 なんてバカバカしい幸せだろう。




「よし、それじゃ今から婚姻届出しに行こうか」




 抱きしめたカリンをそのままに、お互いの笑顔と見つめあう。タコの感触に上書きされた唇をもう一度上書きしたくなって顔を近づけると、カリンも照れながら目を閉じた。

 カリンの熱がどんどん近づいてくるにつれて、俺も自然と目を閉じていく。






「その前に職員室へ行こうなぁ?」



 しかし寸前で頭が掴まれて目を開けると、視界の端にひび割れた笑顔が見えた。

 完全に授業中だということを忘れていた俺たちは教師の手を振り払うこともできず、そのまま教室から連れ出されていく。

 俺とカリンを送り出す、爆発したように囃立てるクラスメイトたちの歓声を浴びながら。

 まるで結婚式みたいだと二人して笑った。








ラブコメと聞いて思い浮かぶのは、こういう「自分たちの世界しか見えなくなる」「根本的には前向きな人たち」のラブコメですね。


あまり数を読めてはいませんが、ラブコメの系統としては「ネガティブな主人公が言い寄られる系」も多いのかな?

機会があれば、書くことがあるかもしれません。(たぶん書かない)


皆様にもラブコメな出来事が起こるよう祈っております。

(え? ラブだけでいい? コメディはいらない? セットなので諦めてください)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ