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暇潰市 次話街 おむにバス  作者: 誘唄
夏のホラー2020
42/316

都の駅は普通に怖い

夏のホラーイベントということでホラーネタです……が、もうイベント終了してましたね。

まぁ、せっかく書いたので載せておきます。

今年(2020年)のテーマは【駅】とのこと。

ということで「そもそも駅って怖いよね」というお話です。


本項のタグ:「夏のホラー2020」「都会ではよく見る姿」「各種名称は実在しません(たぶん)」「微ホラー」「傍目にはギャグかもしれない」


 最寄りの駅から電車に乗って、揺られること二時間。

 終着駅で乗り換えて、さらに揺られること二時間半。


 地元の山間の風景とは全く違う、緑が全くない景色。

 色とりどりの高層ビルが埋め尽くす窓の外が、トンネルを繰り返して地下の真っ暗闇に変わる。

 もう一時間は地下を走った電車は、時折現れる駅に止まって多くの人々を入れ替えている。

 その度に人波に呑まれそうになり、必死になって手すりにしがみついていた。

 しかし何回も繰り返しているうちに握力にも限界がきていたのだろう。ついに私は乗っていた電車から引きずり下ろされるように、人波にさらわれてしまった。

 走り去った電車はもう見えない。歩き去る人々は慌ただしくて、声をかけても聞こえていないように去っていく。


 友人の家に遊びに行くはずだったのに、どうしたものか。

 次の電車を待って、目的の駅まで行けば良いのだろうが、ホームに並んでいく人の群れに負けずに乗り込めるだろうか。

 私の心を占めるのは不安ばかりだ。

 少し時間を置けば人波も落ち着くかもしれない。

 駅員さんに乗り換えと電車の時間を聞いてみようと、改札へと向かった私はまだ都を甘く見ていたのだと思う。

 人波にさらわれて改札口からも押し出されてしまい、抜け出せないままに押し流されていく。



 そうして出来上がったのは、通路に置かれたベンチで呆然自失した私。



 幸い荷物も財布も携帯もちゃんと持っていた。

 都怖い。


 友人に電話して現状を伝えると、爆笑が返ってきた。

 自分が下されたと思われる駅名を伝えて、どうすれば友人宅の最寄り駅まで行けるのかを聞いてみる。



「そこからなら、17番線で一本だね。カギマワリノボリっていうのに乗ってね」



 都というのは私の住む地域とは常識が違う。線路が17本も走っているらしい。電車というのはノボリとクダリだけではないのを、私は初めて知った。

 電話を切って、とりあえず歩く。案内看板や駅構内図を見つけては17番線までの道のりを確かめてみるが、少し歩くと似たような小道が溢れてわからなくなる。それでもどうにか頑張って、17という数字、せめてそれに近いものがないかと探しながら歩き続けて30分。


 たどり着いた階段を降りて、ホームにたどり着いたとわかった。あの人の波は過ぎ去ったのか、今はホームで待つ人影もない。柱に書かれているのが13番線だったことに泣きたくなりながら、友人に電話しようとしたが圏外と表示されていた。ここで一生を終えるのかと絶望した私は、せめて末期の水が欲しいと自販機へと向かった。

 それが小屋のように見えたので、ぐるりと回り込んでみれば、売店のおばさんが不機嫌そうな顔で商品の並びを整えていた。

 それでも今の私には救いの女神に等しく思えて、思わず拝みながら道を尋ねると、おばさんはすらすらと答えてくれた。




「ここはナナツサヤヒダリだよ。カギマワリノボリなら、奥にある階段を降ってミギマワリヒガシのホームから二番目の階段を上ってニシサガリクダリのホームに出て五番階段を上ってサカアガリコガネを通ってナカツカミヒタイの二階からミギマワリヒダリのホームに抜けて三番目の階段を降ったら看板が見つかるよ」




 すらすらとした答えが私の耳を通り抜けて、ホームに着いた電車に乗って去っていく。

 ……数回聞き直して、最終的に録音させていただいた。



 都怖い。







複数路線が通っているせいで迷宮化したような駅って慣れていない人には普通に怖いよね、というお話でした。

作中の売店のおばちゃんのように淀みなく順路案内ができる人は素直にすごいと思います。


なお、作者は10回くらい作中の順路説明を読んでいますが、全く覚えられませんでした。

……体験談ではナイデスヨ?


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