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暇潰市 次話街 おむにバス  作者: 誘唄
童話や寓話のような何か
31/279

狼と赤ずきん

童話や寓話をネタにしていますが、そろそろ原作に怒られそうな気がします。


お暇な方はぜひ原作も読んでみてください。



本項のタグ:「童話・寓話」「原作要素はだいぶ薄い」「赤ずきん」「軽い下ネタを含む」

 

 赤ずきんはお弁当を持って、森の中にある小屋まで出かけます。

 週に一度のお出かけに、狩人たちが声をかけています。

 赤ずきんの楽しそうな姿を見て、これから起こることに期待しているのが、言葉の端々から確認できます。

 赤ずきんは狩人たちに笑顔を返しながら、森の奥へと入って行きました。




 森の奥。そこにひっそりと建つ小屋では、一人の狼が静かに本を読んで過ごしていました。

 皮肉気な笑みを浮かべた端正な顔立ち。灰色の服はボタンを止めることなく、割れた腹筋が覗いています。

 長い手足を無造作に伸ばして、長椅子に寝そべりながら食後の紅茶を楽しんでいる彼は、とても寛いでいる様子。


 ですが、小屋の扉をノックする音に飛び跳ねました。

 慌ててベッドに潜り込んで、布団の中にこもります。

 ノックがするたびに身体を震わせて、強く目を閉じました。

 一際大きな音がして、狼は息を止めてじっと動かなくなりました。

 ガチャガチャと鍵をこじ開けようとする音がしていましたが、やがて聞こえなくなりました。

 しかし狼の耳はピンと張られており、小屋の中に誰かが入ってきた足音を捉えています。



 そう、赤ずきんです。




「おばあさん、今日も寝ているの?」




 毎週訪れてくる赤ずきんの顔を思い浮かべて、狼はすでに涙目になっていました。

 これから起こることを予測して、狼の目からはハイライトが消えています。

 このままベッドで布団に包まっていれば、諦めた赤ずきんが帰っていくかもしれません。

 そう思った狼は何も答えず、じっとしていました。

 その布団が力任せに引っ張られました。赤ずきんが顔を見ようとしているのです。

 狼は頑張って布団にしがみつきましたが、端っこを捲られて耳が外に出てしまいました。




「あら、おばあさん。おばあさんの耳は随分とふさふさで長いのね。まるで狼の耳のよう」




 何もかもわかっている赤ずきんの声は楽しそうです。

 赤ずきんは布団から手を離して、狼の耳を摘み上げました。その耳がどんどん引き伸ばされているのがわかっても、狼には何もできません。

 赤ずきんが狼の耳を伸ばして遊ぶのに飽きて手を離すと、耳は元に戻りました。

 狼はこれで満足して欲しいと思いながら、そっと布団の影から赤ずきんの様子を伺いました。

 赤ずきんと目があいました。

 楽しそうに笑う赤ずきんを見て、狼の目に涙が滲んできます。




「あら、おばあさん。おばあさんの目は随分と潤んでいるのね。まるで迷子の子犬のよう」


「狼だっ」




 つい狼は反論してしまいました。慌てて口をつぐんでも、赤ずきんは楽しそうな笑顔を浮かべたままです。




「あら、おばあさん。おばあさんの声は随分と低音なのね。まるでかっこいい男性俳優のよう」




 狼は声を褒められて嬉しくなってしまいました。頑張って顔がニヤけるのを堪えようとしていますが、口元が緩んでいきます。

 そしてそれ以上に、尻尾が大きく振られていました。

 赤ずきんはそうなることがわかっていたように、布団の反対側を捲りあげました。

 狼の下半身と、激しく動いている尻尾が露わになります。

 狼はそれに気づきましたが、布団から手が離せません。布団を剥ぎ取られたら、何をされるのかわかっているからです。




「っ!? ちょっ、何してるんだっ!?」




 狼が慌てた声を上げて、布団から頭を出して振り返りました。

 見れば赤ずきんが尻尾の根本がどうなっているのか確かめるように、狼の履いているものを引きずり下ろそうとしています。

 反対側の手を見れば、マダラともギンガムとも見える模様で覆われて、よく見えません。森の中で拾ってきたキノコでしょうか。とても新鮮なそれは唸りながら震えていました。




「あら、おばあさん。おばあさんの顔は随分とイケメンね。まるで有名な画家の描いた芸術品のよう」




 赤ずきんは抵抗する足を押し除けることに忙しくて、全く狼の顔を見ていません。

 でも毎週見ている狼の綺麗な顔が、いつものように泣き顔になっているとわかっています。




「わかった! もうおばあさんでいいから! 中の人はおばあさんです! だからその手……やめろって! 助けて、狩人さぁぁんっ!!」




 とうとう狼は悲鳴を上げて、両手で赤ずきんの腕を掴んで抵抗します。

 その様子を見ている狩人さんたちが、実弾(かね)を送ってくれました。

 しかしそこに添えられた言葉のどれもが、赤ずきんを応援するものや、狼の泣き顔を喜ぶものばかりです。




「あ、ちょ、むり……あ、あぉぉぉぉぉぉんっっっ!!」




 森の中にある小屋から、狼の遠吠えが迸ります。

 こうして赤ずきんは狩人たちに助けられて、狼は美味しく食べられてしまいました。







 ◆◆◆キャスト紹介◆◆◆


 狼さん。理想像のアバターを使い俺様キャラをやりたかった。赤ずきんよりひと回り年齢が上のため、おばあさん呼ばわりされている。性別については明らかにされていない。


 赤ずきん。自称アバター外見実年齢。狼さんという理想的な受けキャラを見つけたが、理想的な攻めキャラが未だ見つからないために代役を行っている。


 狩人。赤ずきんと狼を見守るファンの呼称。大量の実弾(かね)を擁するが、嗜好が少しだけ偏っており、それに触発された結果二人の関係性も偏った。


 キノコ。森の中というスタッフルームで用意される、太くて長くてデコボコしている震える物体(バイ〇)。狩人が実体を見られないのは世界の理(モザイク)







赤ずきんネタは漫画やゲームでも見かけるので、見聞きした方は多いと思います。

しかし原作を思い返しても、「この話はどういう教訓をふくんでいるのだろうか?」と理解が及ばない……(致命的な読解力不足)。


読解力のある方で、まだ原作を見たことが無い方は原作も一読いただくのも良いかもしれません。

念のため断っておきますが、原作では狼の遠吠えが森に響くことはありません。

……なかった、よね?(致命的な記憶力不足)

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