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夏にまにあえ(ぼいどら風)

前話の「夏にまにあえ」を友人に提供した際に、「4人くらいのボイスドラマっぽい感じにしてくれ」とリクエストを受けて改変したものになります。

そのため、大筋はほぼ同じです。

その後、再確認したときに粗だらけだったので、友人に提供した時点のものから若干修正をした……と思うけど、よく覚えていません。

あんまり「ボイスドラマ」とか聞かないし台本も読んだことがないため、こんな書き方でいいのか? と首を傾げながら書いていた記憶が残っています。「風」とついているのはそのためです。


本項のタグ:「ホラー」「利息」「脂肪」「古々々々々々作品の使いまわし」「ぼいどら風」

登場人物

N:ナレーション。

L:主人公、女性。OL。20代半ばくらい?

Y:主人公の友人。女性。同い年か少し下?

S:エステの店員女性。年齢不詳。





夏に間に合え


シーン1(導入)



N:「皆さんはお金を借りたことがありますか?」


N:「銀行で、カードで、専門の店から」


N:「経験のある方も多いでしょうが、お金を借りると利息を払う事になります」




N:「今回は、そんな利息についてのお話を紹介しましょう」








シーン2(店内にて)




L:「マッサージで痩せられるって本当なの? やせられないとやばいんだからね? わかってる?」


Y:「んふふ~。よしよし。ほんっと、予定は未定を地でいってるよねぇ。ちゃんと夏に間に合うように普段からきちんとしてないから、ぎりぎりになってあわてるんだよぉ」


L:「うぐっ……だ、だからこうやって必死になってんじゃない。予定通りにやせられるんだったら誰も苦労なんかしないってのよ。私だって頑張ったのよ。でも、こんなおなか見られたら振られちゃうわよ」


Y:「そぉんな泣きそうな顔しなくたってだぁいじょうぶだってぇ。あたしの実体験だからね。マジで痩せるよ。会員制だけあって、やたら高いけど」


L:「金額の問題じゃないのよ。背に腹はかえられない。ううん。背も腹も変えられるなら、いくらでも払うわ。カードの上限までならリボでどうにか」


Y:「あー。わかるわー。あたしもそーだったもん。そーでなきゃ、こんなヤバげな店こないわー」


L:「その店の中でいうことじゃないわよ」


Y:「ん? だーいじょーぶっしょ? 聞いてないってー」


S:「お客様」


Y:「ごめんなさいっ!?」


S:「はぁ? あの、準備ができましたので、お呼びにまいりました」


Y:「あ、は、はぁい。ほら、いってら~」








シーン3(施療)




L:スタッフの女性は慣れた手つきで彼女の体をほぐしていく。とはいえ、特別なことをしている風もないただのマッサージ。それだけで脂肪がなくなるなんて、やっぱり嘘だったのかもしれない。


S:「少し、熱いですよ」


L:そういってスタッフが手にしたのは、無色透明なボディーローション。少なくともそう見えた。


L:「あっ!」


L:塗りつけられた瞬間、思わず声が出た。熱めのお湯をかけられたような感覚。ローションのようなそれを塗られた場所が、奇妙に熱を帯びている。


S:「あまり動かないようにしてくださいね」


L:「あ、はい。あの……これって」


L:ローションではない。何より、おそらくは気のせいではないのだろう。触れている肌に感じる、かすかな振動。


L:「この液体……振動してませんか? なんなんですか、これ?」


S:「あぁ、みなさん最初はそう聞かれます。でも、何でもいいじゃないですか。これで脂肪が取れるんですから」


L:「それは…………まぁ、そうですね」


L:確かに、問題はやせられるかどうかだ。そう思った私は口をつぐんだ。そして、15分後。スタッフが念入りに液体を拭い去った後の肌に触れて、実感した。


L:「ほんとに……やせてる。少しだけど」


S:「繰り返せばもっと効果が目に見えて出てきますよ。ですが、今日はもう終了ですので、また後日のご利用を」


L:……たった15分でこんなに変わるのなら、もっとやればモデル体型にだってなれるんじゃないの?


Y:「……お客様、いかがなさいましたか? ご不満そうなお顔をしていらっしゃいますが」


L:そうだ。これじゃ納得いかない。モデル体型になれるのに、なんでこんな中途半端な状態で終わるのよ。ちゃんと最後までやれってゴネてみよう。








シーン4(変化)



L:翌日の休日。新しい水着を買った私は上機嫌だった。


L:「まさかあの液体をもらえるとはね。ごね得ってやつだわ」


L:瓶に入った動く液体は、私の体を劇的に変えていた。


Y:「大丈夫なの? なんかヤバいんじゃない?」


L:なんて、友人は親切ぶって嫉妬するほどに綺麗になった。


L:今も道行く男が私を振り返るのが、とてもいい気分。


L:あの液体をくれたスタッフとの会話を思い出す。




S:「施療を一度に行うのは、体に負担がかかりますので、私どもでは致しかねます。それに効果は一時的なものですので、ご自身でボディケアをなさるほうがよろしいかと」


L:「だったら、この液体を頂戴よ。あなたの店で出来ないなら、私が自分でやるから」


S:「差し上げることは致しかねます」


L:「何? お金? いくらならいいのよ? カードでいいでしょ? 払うわよ」


S:「当店では販売は行っておりません。貸付ならば対応しておりますが。拭い取った布含めてご提出いただけるのなら……」


L:「貸し付け? ふぅん、ならそれでいいわ。今日と同じように拭い取って返せっていうのね? わかったわよ」


S:「申し訳ございません。遅くとも5日後までに、なるべく早めのご返却をお願いいたします」


L:「あー、はいはい。わかったから。さっさと持ち帰れるように用意して頂戴」




L:「なんだか変な言い方だったけど、結局はこれをくれるってことよね? 洗い流さないで拭い取って返せだなんて。ばっかみたい。まぁ、店長じゃないみたいだったし、言い訳も必要なのかもしれないけど。そんな変な言い訳しなくてもいいのにね」


L:「しっかし、高かったわね……。あー。明日から生活くるしくなるかも。でもまぁ、それだけの結果が出てるんだからいいかぁ」


L:道行く男性が自分に向ける目を感じるのは気持ちいい。前からの冴えない彼氏なんか捨てて、今の私に見合う新しい男を捕まるのもいいかもしれない。








シーン5(利息)


N:彼女が液体の返却をしないまま、1週間が経った。


N:使用済みのタオルを渡すなんて、なんだかいかがわしく思えたせいもあるが、そんなことよりも生活が充実していたため、そんなことは完全に忘れていた。


N:だから1週間以上が経って、液体が無くなってから店に行こうと思うまで、スタッフの言葉など完全に忘れていた。






L:朝、目覚めたとき。なんだか体が重い気がした。


L:「飲みすぎたかな……。なんか、眼も腫れぼったい感じするし……。さぼっちゃおうかな……」


L:おなかの調子でも悪いのかも。そう思っておなかをさすったとき。




L:膨らんでいる気がした。




L:そんな馬鹿な。裸になって腰を見る。


L:「うそ……」


L:モデルのような私は消え去っていた。くびれが幻覚だったかのように、つい先日まで存在を主張していた脂肪がそこにあった。




S:「効果は一時的なものですので」



L:思い出した。効果は一時的なもの。そういわれていたことを。


L:でも、それならもう一度店に行けばいい。あの施療を行えば、それでまたモデルのような私に戻れる。



N:会社に行く準備も忘れて、彼女は電話をしていた。店に行くための予約の連絡。営業時間外にならされた電話は、なぜかつながった。



S:「ご連絡、お待ちしておりました」


L:「元に戻ったのよ。詐欺じゃない、こんなの。もう一度、ちゃんと施療してもらうわよ」


S:「あいにくですが、ご返却を頂きませんと施療は致しかねます」

L:「はぁ!?」


S:「数日過ぎてしまいましたが、今からご返却いただければお支払いをお止めできますので。今からご返却にお越しいただけますか?」



L:「返却って……何をいってるのよ? あ、あぁ、瓶ね。瓶だったら返すわよ」


S:「いえ。ご返却を頂きたいのは担保としてお渡しした液体のほうです」

L:「はぁ!? そんなの残ってるわけ…………ん? なんて? いまなんか、変なこと言わなかった?」



S:「ですから、利息のお支払準備がすでにできておりますので、お早めにお返しいただきたいのです」


L:「利息……? なによ、それ。私から金をむしり取ろうっていうの? あんたの店がハンパな仕事したから、ちゃんと責任とれっていってんでしょ?」


S:「私どもは、買取はしておりませんので、貸付にて対応をさせていただきました。そのように説明をさせていただいておりますが」


L:「何? 何を言ってんの? 何の話をしてるのよ……?」



L:理解が出来なかった。そんなことが問題ではなく、体型がもとに戻ってしまったことが問題なのだ。二の腕だってたるみが戻っているし、おなかだってくびれが消えて。



L:「え……? な、に? え?」



L:気持ち悪さを感じて、おなかをさすった手に感じた感触。掌に伝わる感触は、なぞっているのが私のおなかだということを感じさせている。なぞられているおなかにも、掌の感触がある。なのに。


S:「あぁ、利息の支払いが始まったようですね。お早目にご返却をお願いしました理由が、ご理解いただけたかと思います」



L:「い、いやぁぁぁぁぁぁっっ!!」




N:携帯を取り落し、彼女は叫んでいた。




L:「ありえない。ありえない。ありえない。ありえない」




N:悲鳴を上げて否定を続ける彼女を気にすることもなく、電話の向こうから言い聞かせるようにゆっくりとした声が聞こえる。


S:「たとえば。土地を担保にお金をお借りした場合、利息としてお金をお支払いたします」


S:「今回、私どもは液体を担保に脂肪をお借りいたしましたので、利息として脂肪をお支払しております」




L:姿見に映った私の姿がゆがんでいく。


L:二の腕が、腿が、腰が、首が、頬が。


L:ぶくぶくと。ぶくぶくと。ふくらみ、たるみ、ゆがんでいく。もとの姿さえわからないほどに。



S:「担保にした元本を返却いただきませんと、私どもも利息を払い続けなければなりません」


S:「他のお客様から多く預けていただいておりますので、いくらでもお支払いいたしますよ。それでは、ご返却でのお越しをお待ちしております」



N:ぷっ。つー。つー。つー。つー。






シーン6(終幕)



N:「みなさん、いかがでしたか? 利息というのは、おそろしいものですねぇ」


N:「みなさんは借りているものはありませんか? 貸しているものもありませんか?」



N:「心当たりがない? 本当に? 手を当てて考えてみませんか?」


N:「あぁ、違いますよ。胸じゃなくて、もっと下」


N:「…………あなたにも利息が付いていませんか?」







この話を実際にやる場合、特に許可許諾は必要ありませんが営利目的利用はご遠慮ください。

まぁ、いないと思うけど。


正直、筆者も「よし、じゃあ俺も脂肪で利息を払おう」と思っても、やり方が分かりませんし。

他者に脂肪を支払う方法をご存知の識者の方がいらっしゃいましたら、ご教授いただければ幸いです。

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