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暇潰市 次話街 おむにバス  作者: 誘唄
「単話11」
294/302

日常という名の戦記

トップページの広告で『戦記』テーマで書いてみないかと誘われたので書いてみた話。


本項のタグ:「戦記」「日常」「敗戦」

 

 戦記という言葉に抱くイメージはどんなものだろうか。年号と屋号と称号が入り混じる、僅かな著名な数名と数多の無名の織りなす戦歴が最も一般的な学習要綱だろうか。


 朝は眠気と争う。

 意識の領海を侵犯し続けている微睡の侵攻に抗うべくシャワーの熱という援軍の力を借り、かろうじて今朝も戦線を維持する。未だ目覚めきっていない臓腑は押し込まれていく朝食に類似した戦線を築こうと抗うが、その内乱に目を瞑り新たな戦に備えるため身支度を急ぐ。

 今ではリモートという名の戦線離を選ぶものも珍しくはなくなったものの、それでも通勤通学という紛争は止むことも絶えることもなく日常的に繰り返し行われる。まるで洗濯槽に押し込まれた穴の空いた靴下のように窶した風を装って、通い慣れた戦地へと自ら赴く。

 そこでは個々人の生活に応じて、種々雑多な戦乱が蔓延る。だが往々にしてそれらは不要有用の別も不確かな知識の襲撃を浴び続けて出来不出来を計られるか、有能無能の別が確かな智慧の砲弾を撃ち続け出世不出世を測るか、戦端が一方的な防戦か相互的な応戦かという程度の違いでしかない。

 そして陽光が世界を満たす頃には、より長く続く同じような戦争に身を投じるべく、ひとときの癒しを求めて昼食を摂る。それがときに限りある資源の簒奪や独占を目論む別種の闘争であるとしても。その癒しが、あるいは別種の闘争が過ぎ去ると、より苛烈な戦線に舞い戻る。

 知識、智慧の応報という馴染みの戦線には通学通勤のときからスパイのように侵入した疲弊が微睡と連盟を組み、午睡という強国となって再び侵攻を開始する。

 二面戦争は容易に長びく。

 世界を満たした陽光が潰えても休戦の兆しが見えないことすら珍しくない。そうしてより国内に疲弊という名の外敵を増やし、しかしそれでもまた今朝の類型である紛争へと飛び込まざるを得ない。穴だけでなく破れも生じ、ほつれた糸を他の洗濯物に絡みつかせながらも脱水を終えたようなくたびれた姿となって帰路という紛争が終わる。

 そして陽光の届かない時間の中で積み重なった戦歴が争乱の理由さえ不明瞭にした最中へと身を投じることとなる。人は飯を食い通うことにその生命をかけているわけではなく、それら闘争により勝ち得たものを費やすためにこそ生命を賭ける価値を見出している。たとえそれが日々同じような戦乱に身を投じる戦友のような間柄であろうと、あるいは戦乱から離れて傷を癒しあう間柄であろうと、決して分かち合えるとは限らない個々人の戦場へと注力する。

 そうしていつのまにか逃げ場もないほどに疲弊と微睡と時間に包囲され、数えきれないほどに積み重ねた敗北という戦記が今日も綴じられていく。




書いている途中で敗色濃厚になり撤退戦を行なって敗走した記録がこうして残った。(予約投稿するのを忘れて気がついたら寝落ちして明け方だった、という事実が残った)

こうして何かに敗北し、また何かに勝利することが日常とかいうんです。と開き直ってみる。

……皆さんは遅刻したときの言い訳ってどんなものが思いつきますか?

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