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暇潰市 次話街 おむにバス  作者: 誘唄
「単話8」
175/287

あおの中を歩く

「この絵を見て好きなように書いて」というポスト(旧、ツイート)を見た。

のはいいのだが、それをブクマし忘れて元の絵を忘れて、メモを発掘して思い出しつつ書いた話。

たぶん実際の元絵とは色々違うと思う。



本項のタグ:「風景画」「猫と月と水面」「うろ覚え」「たぶんエッセイ的なもの」「あるいは散文」「インデントなしは仕様」


波に揺れた月が水切りのように跡を残す。

それを横切るのは1匹の猫だ。

朝靄に包まれた世界は全てがあおい。


悠々と歩いている猫は薄暗い中では姿がはっきりとは見えない。まるで青みがかった影のようだ。

ときおり真っ直ぐに伸びた鍵尻尾がゆらゆらと揺られて、猫であるぞ、と主張している。


その鍵尻尾に合わせて朝靄のあおい世界で緩やかに風が靡く。

遠くでさざめくのはまだあおい葦が奏でる楽曲だろうか。

不慣れな旋律に踊り出した朝靄はぎこちなく、千変万化にあおい濃淡を描き続ける。

その隙間から差し込むあおい星の瞬きは少しずつ遠くなりながら、ステージの主役である月にその座を譲って減っていく。


金の月は朧気に丸く、縁に至るほど蒼を強くする。

まるで朝靄に溶け出しているような、どこまでも月が空に広がっているようなあお。


あおい葦とあおい水面が奏でるさざなみに包まれた、朧気な満月と朝靄に溶けるあおの中で、猫のあおい影だけが世界の主役であるかのように悠々と歩き、自身あり気に鍵尻尾を揺らしている。


水面に映った水切りの跡のような月の影に、きっとその猫が振り返ったのだろう。

猫の形が保たれなくなり、一瞬だけ猫の頭らしいものを覗かせて、丸い固まりとなってそこに止まる。

鍵尻尾も揺れるのをやめてしまったのだろう。

静かに、ゆっくりとあおい葦と水面が奏でていたさざなみが遠くへと溶けていく。


水面で水切りの跡のようだった月が、ゆっくりと、少しずつ一つへと繋がっていく。


やがて訪れた静謐。

写真に収めたような風景の中で、朝靄は揺らぎもせず猫だった固まりも身動ぎもしない。


遠くにあるだろう葦はその存在を確かめる術もなく、果たしてそこにあるのが未だに猫であるのか知る術もない。

ただ、水面に映る満月が、あおく染められて浮かんでいるのが見えるだけだ。


そうしてどれだけ眺めていただろうか。


水面から月は沈み、朝靄は晴れ、猫は姿を消して、朝が訪れた。

目覚めた鳥たちが騒々しい、あおい静けさが忘れ去られたような朝だ。

あおい名残りを惜しむように騒々しい声の中を歩き出す。


朝日に照らされて、ひっそりとあおい影がついてきた。




あまり文章を書く練習というのはしたことがない素人の妄言というか体験談ですが、本頁のようなことを昔暇つぶしにやったな、とか思い出した。

見た絵を文章化するとか、連想して話を書くとか。

なんかの練習になるのかはわかりませんが、暇つぶしにはなります。

皆さんも気が向いたらやってみませんか?

(そして小説を書いて投稿するのだ)




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