といしゃさん(プロローグ?)
この『といしゃさん』ですが、基本的に各話完結しているので、前の話を読んでいなくても問題ないかと。
3回目でプロローグっぽいのが入るくらいですから、細かい事は考えずに読んで貰えればいいかなぁと。
もし気になる方は、前の話もお読みください。
各話のタグが?に浸食されてきてます……なんでだろう。
本話のタグ:「ホラー(?)」「フリーゲームっぽいネタ」「百合風味(?)」
生徒に伴走した後、女同士でイチャイチャしていた二人を追い払う。
最近、変な奴が多すぎる。
生徒が走っているのを盗撮しているヤツとか。
生徒の帰りをつきまとうようなヤツとか。
サボっている生徒に乱暴をしようとするヤツとか。
たむろしてる生徒に問いかけてくるヤツとか。
見つけた時には追い払っているが、少しするとまた湧いて出る。
渡り廊下を越えてグラウンドへと抜ける通り。
生徒たちが走り抜けた後、キャンキャンイチャイチャしてた二人は、それに気づいていなかった。
伴走で上がった息を整えて、伸びる手を踏みつけ、蹴る。
全く気がつかずにお互いのことしか頭にない二人の姿を見て、先週まで恋人と同じような甘い雰囲気を味わっていた自分を思い出した。
「振られたのかい?」
地面から浮かんできた顔が問いかけてくる。
その嘲笑うような声に、反射的にイラッときて睨みつける。
うるせぇな、振ったんだよ。たかだか四時間生徒の話をした程度で飽きやがって。
「君は今、幸せかい?」
余計なお世話だバカヤロウ。
ぞろぞろと顔が浮かんでは同じ質問を繰り返す。だいたい、てめえらなんなんだ。
変人も変態も変異も、うちの生徒によってくるんじゃねえよ。
無表情な顔。下卑た笑みを浮かべた顔。ガン飛ばしている顔。その後ろに隠れている、真面目ぶった顔を睨み、蹴る。
別に理由はない。そいつのツラが元彼に似ていたのが悪い。
蹴られて目を剥いて驚いているツラを踏みつけて、地面へとねじ込む。
「うちの生徒にちょっかい出すな。同じことやってるバカどものとこに行け」
他人を脅かしといて、何テメェら怯えたツラしてんだ。
周囲に浮かぶ顔を睨んでいると、校舎の陰から体育着姿の生徒が数名、顔をのぞかせた。
頭から水をかぶったのか、滴る水で湿っているのがわかる。
「ハルちゃんせんせー? バテちゃったー?」
「おー、先行って柔軟やっとけ。ちゃんと水分補給もしろよ。それと、部長にハチミツ漬けレモン渡してあるからみんなでわけろ」
「やった。あれ美味しいよね。ハルちゃんせんせー大好き」
「私も好きー」
「ハルちゃん大好き」
「……好きです」
「へーへー、ありがとさん。休憩終わったらダッシュやれよ」
…………やっぱ、うちの生徒かわいいよなぁ。
あぁ? テメェまだいたのか? 何見てんだバカヤロウ。生徒にちょっかい出してんのは私じゃねえよ。蹴りつぶすぞテメェ。
足を振ると、そいつらは地面へと沈んで消えていく。周りを見ても見当たらず、気持ち悪い問いかけも聞こえなくなった。
一息ついて、目を閉じて冷静になって考えてみる。
…………今のってなんだったんだろう。
挿話、あるいはプロローグ。
ハルちゃん先生は生徒から大人気です。
卒業シーズンには滅茶苦茶生徒に泣かれますが、それ以上に滅茶苦茶泣きます。
その姿と普段のギャップで惚れ込む生徒もいます。
たまーに、ガチな娘もいます。