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スキル「成長促進5パー」は地雷みたいな神みたいな、やっぱ地雷みたいな

作者: モロコロス

スキルって無限の可能性。

 十歳の誕生日って、街の神殿に出向いて神に与えられたスキルを確かめるんだって。神様がわざわざ一人ずつスキルを与えるってのも不思議な話だなあ、と思ったんだけれども、スキルが無いと生きていくのも辛いこんな世の中に、ポイズン。よくわからない事を父ちゃんに言われたので、そういうもんなんだなあ、と納得することにしたっつうか納得しなくちゃいけない雰囲気。


 いや、スキルだもんね!どうしよう、炎魔法の使い手とかになっちゃったら。僕、超有名な魔法使いんなっちゃうよ?チート?チートかな?


「そんなレアなスキルはそうそう貰えないよ」


 姉ちゃんも、姉ちゃんの友達のブンダラ兄もそう言って笑う。大抵は「家事」とか「力仕事」とか「農作業」とか、その人にあう、日々の暮らしがちょっと楽になるスキルが貰えるんだって。お母さんは「水仕事」で、お父さんはちょっとレアな「腕力」だって。木こりには丁度いいって。


「魔法とかは激レアなのよ、この街でも三人くらいしかいないのよ?」


 ブンダラ兄は「火の使い手」、火にまつわる仕事がやりやすくなったり、種火を作りやすくなったりするんだって。山でも冒険でも重宝するし、スキルを使いこなせれば色々出来ることも多いし、何より火魔法、炎魔法のスキルの人と相性がいいんだって。姉ちゃんはちょっと残念そうだけど。


 姉ちゃんは「時のまもり人」っていうよくわからないスキル。スキルはこういうもんだ、ていう大まかな説明は皆知ってるけど、姉ちゃんみたいな「今まで誰も見たことがないスキル」ってすごく珍しいらしくって、今度都で調べてもらうことになってるんだ。姉ちゃん凄いね。ブンダラ兄が、さっきの姉ちゃんと同じく、ちょっと残念なのが笑える。もういいから付き合っちまえよお前ら。


 いかんいかん、つい大人のコメントが。


 明日十歳になるってことは、体感年齢が二十五か。十八の時にこっちに転生して意識が目覚めた三つの時から、もうずいぶん経つ。こどもの僕で居る時間にもだいぶ慣れてきた。このまま意識はこの坊やに吸収されてしまうんだろうなあ、と思ってるんだが、ついね、初々しい二人を眺めたりしてるとオッサンの心が戻っちゃうんだよね。まわりから「時折妙に聡い子供」て思われてるから、自重しないといけないね。


 話を聞いて逸る心を抑えても、やっぱり神殿に出向く前の日だからなかなか寝付けず、結局当日の朝は寝過ごしてしまい皆にめっちゃ怒られた。


 怒られて不機嫌かつ眠い顔した僕が、父ちゃん、母ちゃん、姉ちゃんに連れられて神殿を訪れたのはお昼の鐘がなる直前で、言われた通り、一人で神殿の奥の小部屋に向かい、その部屋の、真っ赤な貫頭衣に身を包むじいちゃんの前に座る。たった一人で。ちょっとこわい。


「さて、お前さんの名前は?」

「グリンドラ」

「グリンメルローレの弟かの?」

「そうだよ!姉ちゃんのこと知ってるの?」

「そりゃあの子も特別じゃから」


 ちょっとチクッと胸にささった。こりゃ嫉妬だな。少しくらいの嫉妬は成長のバネだ。悪い事じゃないぞ、と思うことにする。確かに僕は姉ちゃんが羨ましい。みんなに特別に見てもらえていいな、って思ってる。けど僕だって、良いスキルもらえるかもしれない。負けないから。それに僕には、ほら、転生ボーナスあるかも!


「それではお前さんのスキルを確かめるとするか」


 僕の目の前には羊皮紙が一枚置かれていて、僕がその羊皮紙に触れると、なんだか文字が浮かび上がってくる。あ、そうそう、僕、文字読めるんだよ!この世界は文字が読める人が少ないから、読めるだけでも仕事が増えるんだ。そういう事言うから「聡い」子供扱いされるんだけど、仕方ない。僕だけじゃなく姉ちゃんやブンダラ兄にも字を覚えさせなきゃだし。僕が言うしか無かったんだよ。


 浮かび上がった文字は、


「【成長期限定】成長促進5パーセ」


 …途中で切れてるやん。


「おお、おめでとうグリンドラよ。とても良いスキルじゃな」


 そうなの?とてもそうは思えないんだけど。


***


「元気だしなよ、そんなに悪くはないよこのスキル」

「そうだなあ、レベル上げりゃあどんどん実感できるらしいし」

「ダメよ!こんな小さなリンドにレベル上げなんて」

「けど【成長期限定】て書いてあるんだよな」

「成長期ってそろそろだっけリンド」

「こいつあんま食わねえしなあ、おいリンド、もっと飯食うんだぞ」


 グリンドラのグは家の名前、リンドが僕、ラが男の子を示す。だからリンドが僕のこと。落ち込んでる風な僕に、父ちゃん、母ちゃん、姉ちゃんやブンダラ兄まで、いや兄ちゃんなんで居んの、と口々に僕を慰めようとしてるんだけど、僕は落ち込んでるんじゃなくて、切れてるスキル名が気になって仕方ないの。変な限定期間まで付いてるし、そういう制限が必要なスキルなのか?


 この手の成長促進系って、僕や父ちゃんが知ってる限り、


取得経験値二倍

成長促進五パーセント/年

成長促進十五パーセント/レベル

成長促進五パーセント/レベル


 こんな感じの筈。上から順に貴重かつ有用って扱い。レベルごと、もしくは年ごとに5パーセントのボーナス成長が付く。どっちにしても悪いスキルじゃない、とは思うけど。


「五パーでもさ、レベル十で十五相当の実力って、相当なボーナスじゃないの?」


 僕は気になったのでつい聞いてしまう。単利だとしてもレベル十で合計五十パー、5レベル分って大きいよね?


「経験値二倍は成長率に極端な差が出るから、うちでも大歓迎だよ。成長促進も年ごとならな、年をとるごとに強くなる。ある程度の年の奴が持ってれば期待できるだろう。しかしレベルごとだとなあ、一定以上レベル上げなくちゃいかんだろ。レベル上げるのどれだけ大変か知ってるか?」

「死亡率高いってのがなあ。いや騎士の家系とかならまあいいんだが、うち普通の木こりだし」


 本家が領主んところで私兵隊経営してるブンダラ兄がスキルとレベルについて軽く説明してくれるが、僕もそこら辺は知ってる。調べたし。


「もういい、寝る」


 僕は立ち上がった。気分が悪いんだ。あくまで「それなりに良さげ」なスキルなんだよ。特別なわけじゃないし、取得経験二倍にくらべりゃ落ちるって評価だ。姉のスキルと比べて軽く泣きそうになっても仕方ないよね。それに痛みもあるし、ん?痛み?


「どうしたのリンド」


 母ちゃんが僕に問いかける。


「何か膝とか腕が痛い」

「あら、どうしたのかしら」


 本当にどうしたんだこれ。風邪?そういやこの痛み記憶があるけど、まさか。


***


 やっぱりそうでした。成長痛でした。


「うぎぎぎぎ」

「一晩で五パー背が伸びる?そのスキル凄くね?」

「ブンダラ、その計算だと、一月でこの子、街の誰より背が高くなるのよ。病気よ病気」


 痛みを我慢して、無理に立ち上がった僕は背丈を十五の姉ちゃんと比べる。昨日は確か胸の辺りまでだったはずだけど、今朝起きたら腕と足が凄く痛くて、頭が姉ちゃんの胸の上、鎖骨辺りに届きそうになってる。五パーくらい?だよね。正面向き合ってなので姉ちゃんの胸が目の前。ドキドキ。嘘です腕と膝が痛くてそれどころじゃありません。


 痛みが耐えられず、その日はベッドで休んでたんだけど、次の日起きても痛みは引かず、むしろ背丈がさらに伸びていて、頭は姉ちゃんの肩か顎に届きそうになっていた。


 そうだなあ、一メートルくらいの背丈だから、五パーで一日五センチかあ。え、毎日?いきなり十歳児の身長が十センチも伸びるなんて、成長痛で死ねるかもしれん。


「計算すると、十日で母ちゃんを抜いて、その後ブンダラも抜いて、二十日で父ちゃんに並ぶ」


 姉ちゃんが冷静に計算結果を告げる。僕まだ十歳になったばかりです。そんな身長まだ必要ないです。


「一月放っておくと、頭が天井にぶつかる」

「一年だとあれ?計算おかしくね?」

「あってるわよ。あの一番高い物見櫓くらいね」

「人間じゃなくなっちゃうなあ」


 ブンダラ兄と姉ちゃんがのんびりと計算結果を見て検算している。そうそう四則演算とかも教え込んだんだよこの二人に。けどべき乗とか教えてたっけ?ってそれどこじゃねえわ。


「呑気に言ってないで助けてよ!あいたたたた」


 街の一番高い物見櫓を超える背丈の僕が、ドスンドスンと街を歩いたり、父の手伝いで山に入る姿を想像する。うーん、どう見ても魔物。討伐されちゃうなあ。死んじゃうなあ。嫌だよう!足と腕の痛みもあって、涙を浮かべてベッドで暴れる僕。


「大丈夫よ、背丈が伸びるのを抑える薬があるから、これからちゃんと毎日飲みましょうね」


 母がやさしく僕の頭を撫でてくれた。え、そんなんあるの?


「もともと成長促進が年ごとに来る人向けのお薬だから」

「安いとはいえ、お値段あるからね、リンドもそろそろちゃんと働きなさいよ」

「まあ、成長期だけの辛抱なのはありがたいか」

「成長期限定でよかったわ」


 よくない!なんだこの地雷スキル!背が異常に伸びるスキルって普通に呪いだろうが!僕は叫んだんだけど、そんな僕を見て家族とブンダラ兄がさらに笑った。それで、笑われる程度の呪いなんだなって僕もなぜか安心した。


***


 背丈の問題は何とか解決したけれど、着られる洋服が足りなくて困る。それにスキルの謎が残ってる。あと毎日飲む薬めっちゃ苦い。最後が一番大事だ。まだ十歳だし。


 僕は神殿の奥の小部屋に座る、真っ赤な貫頭衣のおじいちゃんに頼み込んで、もう一回スキルの検査をしてもらおうと交渉中だった。


「いやあ、羊皮紙には限りもあるし、一人一回って決まっとるし」

「だから途中で文字切れてんだから無効じゃん」

「そんな長いスキル名あるとは誰もしらなんだし」

「よかったよね、今後の参考にしてね」

「リンドは厳しいのう。姉とは大違いじゃ」

「背丈伸びすぎて討伐されるとこだったの!そりゃ荒くもなるし!」

「ふむ、『聡い』リンドは怖いのう」


 神官の爺さんはニヤニヤ笑って、前回よりちょっと幅が広くなってる羊皮紙を取り出した。


「そう言うてくると思ってのう。あらかじめ準備しといたのじゃよ」

「わかってんなら勿体つけんああああ!」


 俺は机を両手でぶっ叩いて叫んだ。この爺ちゃん面白いけど疲れる。


「ワシもお前さんが討伐されるとこなぞ見たくないしのう」

「いいから、スキル早く見せてよ」


 頬を膨らませて睨む僕の前で、神官のじいちゃんが羊皮紙を置き、ほれ、と僕の手を羊皮紙の上に置いた。ぽわぽわって羊皮紙が光って、


「【成長期限定】成長促進5パーセント/日(」


 と今度こそ全部、全部、全部表示されてない!続きあるっぽい!あとやっぱり「/日」だった。


「こりゃたまげたのう、お前さん、文字多すぎじゃのう」

「僕のせいじゃないし!」


 あ、やば、泣いちゃいそうだ。なんで僕だけこんな目に合うんだろう。そう思ったときに神官の爺ちゃんは引き出しからもう一枚羊皮紙を取り出して、僕に言った。


「これを使う時がきたか」


 それは今までの羊皮紙よりちょっと上質な、幅広というより横書き用に作られた羊皮紙。なんだよ初めから僕用のやつあるんじゃん。


「これは神の使徒、と呼ばれる特別なスキルを持つ人間専用の羊皮紙でなあ」


 なんかビックリするような言葉を爺ちゃんが言った気がする。やば転生ボーナスここで来た?


「リンド、ここまで長いスキル名を頂くということは、お前のスキルは到底ありえない摩訶不思議なスキルということじゃろう。姉のスキルなど目じゃないわい。まずこっから先はワシとお前さんだけの秘密にするようにな」


 そう言いながら、もう一度爺ちゃんは僕の手を取って、その何か不思議な紋章が書き込まれた羊皮紙に僕の手を乗せた。


 しゅいんしゅいんしゅいんしゅいんと、文字が浮かび上がってくる。効果音?


「【成長期限定】成長促進5パーセント/日(体力魔力経験値、全ステータス&身長、但し体重は除く)


 一日ごとに対象の体力、魔力、スタミナの最大値と全ステータスが五パーセント恒常的に上昇する。例外は体重のみ。身長の上限は十メートルで、十メートルを超えると自動的に身長の成長が停止する。他のステータスに上限はない。


 成長期限定の理由:十歳から十八歳までの期間限定。限定しないと際限無くて危ないので。


 身長制限の理由:前々回同じスキルを渡した勇者が巨人と勘違いされ三カ月で討伐されたから。


 体重例外の理由:前回同じスキルを渡した勇者が、魔王を飲み込みブラックホール化しちゃってエラい事になったので。大変だったから二度と勘弁。


 使用上の諸注意:このスキルは大変危険です。お渡しする際は、神様は以下の条件をも」


 やっぱ地雷だこのスキル!大変危険って書いてあるし!身長の上限が十メートルとか高すぎる!ブラックホールは嫌だ!めっちゃ嫌だ!そしてまだ続いてる!一番知りたいところから切れてる!


 一々ツッコんで、もう疲れたよもうやだよおお!と泣いて机に突っ伏す僕の前で、スキル説明を見た爺ちゃんが流石に目を丸くしていた。


 お願いだからほお、勇者かあ、とか呟くの止めてください。


***

 

 多分、十歳になったばかりの僕のステータスって1くらいだった。子供だし。こっから身長は抑えられるけど、他の全ステータスが毎日五パーセント上昇しているらしい。


 二週間くらい試したところ、懸垂が三回しかできなかったのが、二週間たったら六回できるようになっていた。あ、これ複利だなやべえな。二十日かからなかったもんな。


 こりゃ神スキルっぽい。チートなんか目じゃねえ、みたいな。


 毎回変わらず元金じゃなくて元の数で計算する単利とちがい、「次回の計算は元金と利子の合計で計算」を複利って言うんだ。確か。よーしらんけど。そんで、5パーセントの複利で計算すると、大体十五日で元の数字の二倍になる。単利だと二十日。そんな違い無いように見えますね。しかし単利だと次の二十日間でもう一倍増えて三倍になるだけだが、複利だと次の十五日でその二倍、つまり三十日で最初の日からステータスが四倍に増える。それがずっと続くんだよ、考えてご覧?二ヶ月たったら単利は4倍、複利で16倍だよ?


 そう、72の法則っていうのがあって、例えば3パーセントだと72を3で割って24、二十四回で大体倍になるっていうざっくりと見積がとれる法則。便利だよね、72を5で割ったら14と15の間くらいだね。だから二週間だね。いやそんな適当な話はおいといて。


「一ヶ月でステータスが1から4に増えるくらい、誤差の範囲ではないかの?」

「だから来月16、再来月64、その翌月256だよ?」

「はあ!そりゃまた。256って懸垂だと三百回くらいかの?」

「そんなんで済めばいいけどさあ。筋力だけじゃなくて、知力、敏捷、全部だよ、その月ごとに四倍つうのが、十八まで毎月続くの。わかる?」

「勇者に与えるスキルなだけあるのお」

「勇者はいやだ。けど十一になる前に世界最強になっちゃうかも、ステータス五千万になるし」

「それの5パーって、どれくらいじゃ?」

「二百五十万」

「利子を返し続けても元金が減らないよ〜、てとこかの?」

「なんだそれ」

「五年前の教会普請の借金がいつまでも減らん理由が今わかったんじゃ」

「爺ちゃん数字弱すぎ」

「そんなことはない。ま、それはともかく、どうするんじゃ?」

「どうしようもないよ、さっさとスキルの検証しなくちゃ」


 僕は神殿奥の小部屋で、真っ赤な貫頭衣に身を包むじいちゃんとヒソヒソ話していた。


「まだ経験値ボーナスも効果わかんないし」

「経験値も同じ勢いで増えたら、レベルがエラいことならんか?」

「そだよ!これ以上強くなってどするの僕!早く残りの文章読まないと」

「変なとこで止まっとるからの。『も』って何じゃ?」

「そうだよどんな地雷残ってるかわっかんないんだよ怖いようもう」


 僕、ガチ泣き。放っておいても一年以内に世界最強になれるスキルなんて怖くてしかたないよ!


「ふーむ、勇者として頑張ってくれるなら、その辺はもうどうでもいいんじゃが」

「ん?勇者なんかなんないってば。爺ちゃん、秘密にしてくれるんでしょ?」

「『ワシ』はなんも言わんよ。お、そろそろかのう」


 ニヤリとする爺ちゃん。


「待てジジイ、なに隠してんの?」

「やはり聡いとはいえ子供よのう。いやな、あの特別製の羊皮紙、アレな、使ったら教皇庁に自動で連絡が行くようになっとっての」

「早く言えジジイ騙したなああああ!」


 僕は慌てて小部屋を飛び出す。ワシよりよっぽど頼りになる奴等じゃよ、てノンビリしてる爺ちゃんを蹴っ飛ばしたいけど時間がないのでアカンベで済ませ、とにかく家に向かって駆け出した。


 家に帰って父ちゃんと相談しなくちゃいけない。もちろん逃げる算段だ。姉ちゃんと一緒に都に行くでもいいかな、そろそろ姉ちゃんだって都に行かなきゃね。ブンダラ兄とじれったくイチャイチャして時間引き伸ばしてても、流石に行かないわけにはいかないだろうし。


 そっから何とか身を隠さないといけない。下手すりゃマジで勇者に祭り上げられてしまう。この三カ月はまだそんなに僕強くないからね。とっつかまって洗脳される前に逃げなきゃ。それか隠れないと。


 そう思って家に帰ったんだけど、残念。勇者を護衛する教皇庁からの一団が、既に我が家に到着して待機してたので、僕は膝をついて崩れ落ちた。終わった。僕の平穏な生活が今、終わった。涙が浮かぶ。


 おろおろする父ちゃんと母ちゃん、僕に恭しく一礼する騎士の皆さん。抱き合って喜ぶブンダラ兄と姉ちゃん。え?喜んでるの?裏切られた気分だよ。いや、僕が偉くなったり立派になるのが純粋に嬉しいだけなんだ二人共。わかってる。


 まあ、跡取りの僕がこんなんなっちゃったから、ていうかもともとそのつもりだったブンダラが嬉しそうに婿入りの話を急ぐべく、姉ちゃん父ちゃん母ちゃんと始めちゃったので、暫くは我慢してやるけど。あくまで暫くだよ。そりゃウチは人手足りてないし、ブンダラ兄なら任せて安心だし、いいんだよ。いいんだけど。


「だって、リンド絶対木こりで収まるわけないじゃない。まさか勇者とは思ってなかったけど、まあ」

「ずいぶん前にブンダラとは婿入りで話済んでるぞ」


 さっさと落ち着いた父母まで笑顔。そうか、ブンダラ兄っていつも居ると思ったらとっくにそういう関係だったのかよ知らなかったよ!もう!教えてよ!


ローンて大変ですね。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「五パーでもさ、レベル十で十五相当の実力って、相当なボーナスじゃないの?」  僕は気になったのでつい聞いてしまう。単利だとしてもレベル十で合計五十パー、5レベル分って大きいよね? …
[一言] たぶん、10m上限をみた過去の勇者が血涙飲んで頑張って努力して、身長成長抑制薬作ったんだろうなあ(´;ω;`) 過去の勇者たち、おつかれ!w 下記の条件……絶対やばいぞ
[良い点] 終盤投げてるところ。 [気になる点] 今後の展開 [一言] 色々面白いお話を書いてますね。頑張ってください。
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