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愛を知らない蕾達  作者: Mizuka
8/11

各自持ち寄りの衝撃写真

今回のストーリは創作が殆どです。

安心して読んで下さい。


※訂正とお詫び※

高卒後直ぐの大学1年の年齢が18~19歳で、大学2年次が19~20歳という事を改めて確認しましたので、主人公の年齢を訂正させて戴きました。私自身遠い昔のことなので年齢を1つ勘違いしてしまいました。大変申し訳ありませんでした。

大学の夏休みは9月中旬頃まであった。その間、ミルキーは多摩地区のとある教習所とバイトをしながらあっという間に夏休みは過ぎてしまった。特にどこかへ旅行に行ったのでは無いので写真など持ち寄れと言われても何も無い状態になってしまった。


10月中旬に入り、紅葉が広がり秋らしい様子が肌でも目でも感じられるあるサークル活動日の木曜日の午後。部室にサークルメンバーが集まって持ち寄った写真を見ていた。

4年の先輩は、教育実習と公立学校の教員採用試験が一通り終わりひと段落付いた感じである。

両者とも国家公務員試験はダメだった様子で、東京都の教員採用試験の結果待ち状態みたいだ。

3年の先輩は、研究室での軟禁生活もようやく終わりゼミと就活の合間をぬって参加している。

白い丸いテーブルには写真が沢山置いてあり、それを囲んで椅子に座って元部長の福田先輩を筆頭に写真をじっくりと見ている光景だ。


「これ気持ち悪いですねぇ。」と遥が手に口を当てて眉間に少しシワを寄せながら言っていた。

福田先輩と橋本先輩以外のメンバーは冷静さを欠きどよめき始めた。

湖の単なる風景写真なのだが、湖面の全体から無数に手が伸びている写真だ。湖面から出ている無数の手は、どれも青白く少し透明掛かっていて掌が上にに向けて開いており、何かを呼び込んでいるようにも見える。ミルキーも遥も口に手を当てたまま体が硬直したかのように固まってしまった。


「これって福田先輩の合成写真じゃねー?」とヘラヘラしながら言って一人だけ空気が読めないのは幸ちゃんだった。合成写真と言われれば、そう見えなくもないけど・・・元部長の福田先輩がそんな事する人では無いし、色々な体験談を既に聞いている事から他のメンバーは合成写真だとは思えなかった。

「冗談ッス!ジョーダン!」と手を叩きながら大笑いし幸ちゃんは輪から外れて一人で部室を出てコーヒーを買いにスタバに行ってしまった。そんな幸ちゃんの言動により、ミルキーと遥は緊張が少し解れた様子だ。


その写真は、福田先輩がお盆休みに彼女と泊まり掛けで富士急ハイランドと富士五湖周辺を探索した時に空気が重く感じたとかで湖全体を撮ったらしい。

富士五湖のとある湖畔では、霊気が漂っており様々な怪奇現象が起こっていると云う噂話がある。


「こっちの写真と・・・それとこれもかなりのモノだと思うけど・・・。」と言い、目を左右に泳がせながら手に持ってる写真を皆に見えるように置いたのは、橋本先輩だった。

遥が彼氏と行った旅行先で撮った写真の1枚にサイパン島にあるバンザイ岬に観光に行き、何気にカメラを向けて撮った写真だと言う。その風景写真は、夕日を背に崖の壁面に白い発光体のような物が無数に写り込んでいる。

もう一枚はグアム島の恋人岬に行った時の写真で、遥の右肩から肘までが薄っすらと消えており肘から先が全く無かった。ノースリーブ姿の遥の右手の肘から先が全く写っていなかった。遥の左手は軽く頬に手を当てていて笑顔で立っている姿なのに、ある筈の右手が消えている衝撃な1枚でもあった。

サイパン島のバンザイ岬もグアム島の恋人岬いわくつきではある。


遥は淡々とグアムで起きた怪奇現象の体験を話し始めた。

「私がぁ、勇樹君とグアムのホテルに泊まった夜にィ、ホテルの窓際から気配がしてぇ、気配を感じた窓を見たらぁ、そこに人影があったんだよぉ。私達が宿泊した部屋は5階だったのにぃ、どうやってバルコニーに・・・と思ってねぇ、誰かバルコニーにいるみたい、って勇樹君に伝えてぇ窓を開けて一緒にバルコニーを確認したんだけどぉ、誰もいなかったんだよぉ。」と話してから「それとぉ・・・こっちの写真はロスに行った時にぃ、パパの知り合いの霊能者さんに透視して貰ってぇ、除霊みたいな事をして貰ったんだよぉ。霊能力者さんの話だとぉ、このままだと右手を負傷するか骨折するか何かしらあるとご先祖様が知らせているんだって言われたんだよぉ。」と少し安堵しているような様子で話した。


その他には、城所先輩は実家がある愛知県に帰省した時に地元の神社で撮った写真や、岡先輩と本木先輩は参加したゼミの夏季合宿で日光に行った時の写真をそれぞれ持参していた。


城所先輩が「地元のこの神社は、子供の頃に頻繁に火の玉が出ていわくつきだったんだㇻ。帰省中に神社とその神社の近隣にある広場で夏祭りがあって、久し振りに行ってみただㇻ。」と鼻の下のヒゲを右手の指で軽く撫でながら話していた。

その神社には、有名な神社で昔は首を洗って並べたと言ういわくつきの神社らしい。

城所先輩が持参した写真の中には、盆踊りを楽しむ町内の子供達や大人達の姿を撮った写真、露店で楽しむ子供達の写真が多数あり、その中でも「これは?」と息を呑んだ1枚は、神社の鳥居の写真である。

鳥居の手前の両サイドにある守り像の左側の獅子らしきの両目が怪しく黄色ぽっく濁って光っており、その脇には腰から上の上半身しか写ってない男の子でその子が獅子みたいな石像の足元に右手を載せているような姿があった。その男の子の様子はどこか寂しそうな笑顔を浮かべているようにも見えて、少し透明気味で写真に写っている。

メンバーは慌てて、その男の子が他の写真にも写っているかを全員で確認し始めた。

しかし、どこにも居なかった。

不意に思い出したかのように城所先輩が「もしかしたら、この男の子は昔夏祭りの帰り道にトンネル付近で交通事故に遭って亡くなってしまった子かも知れないだㇻ。」と言い出した。地元にはいわくつきのトンネルがあり、そこは地元では有名な心霊スポットらしい。


持ち寄った写真の中には、夏季ゼミ合宿で日光に2泊3日で参加した本橋先輩が華厳の滝を背景にゼミ参加者の記念撮影した写真があった。その写真には、2つの顔が浮き上がっている写真だった。

華厳の滝の上部に1つ、滝の中流部に1つ、それぞれの顔が浮き上がって写っている。

その顔はハッキリと見えないが、何気に苦痛に耐えているような表情を浮かべている様子が分かる。


それぞれの写真を部室の窓際に福田先輩が一列に並べて置き始めた。もちろん遥の右手が薄っすらと消えている写真は、既に除霊済との事で除外された。

そして橋本先輩がカバンから黒っぽい羽織を出して体に纏った。そして片手に数珠みたいな物を持ち、窓際に並んだ写真がある方へと歩み寄り、手を合わせて合掌を始めた瞬間に、部室のドアが突然開いたのだった。

幸ちゃんがスタバのコーヒーを両手に抱えて部室に戻って来ただけなのだが、気が弱い本木先輩が異様なほど驚いてしまい、部室の空気が急に可笑しくなった。

「お前、何驚いてんだよー?」と笑いながら入ってきた幸ちゃんは、買ってきたメンバー分のコーヒーを配っている。サークルのメンバーがそれぞれ傍にいた人と顔を見合わせて少し肩を竦めて「プップ」と笑ってしまった。メンバーの雰囲気は緊張感が全く無くなってほのぼのとした感じに成り掛けた。その最中「静粛に。」と注意を促したのは橋本先輩だった。橋本先輩の実家はお寺で先祖代々お坊さんをしているという事もあり、幼少から聞き馴染んでいるお経を少しだけなら出来るらしい。そう言った経緯もあり、これから写真に写った霊達の供養と言うか、少しでも宥める為にお経を詠むと言う事だった。完全なる供養は出来ないと橋本先輩は言っていた。本人は次男で兄がお寺の継承者であるが故に、お坊さんになるための修行をした経験が無いから完全な霊の供養は出来ないって話である。それでも何もしないよりかは、少しでも安らかになって欲しいと思う橋本先輩の気遣いから行っているとの事だった。

サークルメンバー全員が橋本先輩の背後に座り軽く手を合わせてお経が終わるまで静かな時間が流れた。

無事に除霊みたいな事が終わって、再度丸いテーブルを取り囲んだ。



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福田先輩が「橋本がお経を詠んだし、全員で合掌した事だし・・・多分大丈夫だろうから、これらの写真を大きく引き伸ばして学際では写真展みたいな事をしたら良いと思うのだけど、どうだろうか?」と参加している全メンバーの顔を見回しながら言った。

遥とミルキーはお互いに顔を見合わせて「やっぱり・・・。」と言いたそうな顔をして頷いた。

「あまり予算が無いからねーっ。それが一番良いっスねー。今回、先輩方の協力も頂いた訳ですし、それしか無いっしょ?」と幸ちゃんが言い、サークルメンバーの意見も一致した。


結局、オタ研は『心霊写真』と『メンバーが遭った怪奇現象』をテーマにブースを作り展示会をする事となった。


学際は11月だ。

それに向けて特に準備する事は無い。

写真のネガを持っている人達が、ネガをトトロ先輩に手渡しただけだった。

トトロ先輩は外見に似合わずに、趣味で写真の現像を自宅でもやるほどの実力者である。

実家は下町にある写真屋だけど、トトロ先輩の趣味で自分専用の暗室もあるなんて知らなかったから驚いたのはミルキーと遥であった。

先にそれを知ってれば、「遥の写真の現像もトトロ先輩に頼めば良かったのにね。」とミルキーが遥に言ったが「ううん、良いのぉ~。彼氏との思いでの写真も沢山あるから知っている人に頼むよりもぉ、お店で現像して貰ってからのぉ~、勇樹君と2ショットの写真を取り除いて持ってきたからぁ♡」とごもっともな意見を聞いて「そうだよねっ。」とミルキーは笑った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



折角、久しぶりに福田先輩に会ったのだからと、ミルキーが「あの、先輩? 少しだけお時間良いですか?」と窓際に座っている福田先輩に話しかけた。

「この前、お借りした本はあそこの本棚に置きました。でも、何故あの本を私に直接貸してくれたんですか?」との質問に対して「あぁ、アレね・・・迷惑だったかな?読んでみたの?」と返ってきた。

「そんなぁ、迷惑だなんて思っていませんが、何故貸してくれたのか少し気になったので・・・」と少し戸惑い気味に答えた。

そして「実際には軽く目を通しただけなんですけど、客観的に同意出来ない部分満載で福田先輩の意図が解りません。」と彼の目を見て自分の意見をハッキリと伝えた。


福田先輩は、そんなミルキーの言葉を真摯に受け止めながら

「あの本は、昔実際に居た海外の有名な霊媒師が神に近い魂を自分の体に呼び込んで、神に近い魂の言葉をこの世に生を受けた人々に『霊界とはどんなところか、人は死んだらどうなるのか』などを伝えるために様々なメッセージを綴られた本の一つで、日本にも結構広まっている内容でもあるのですよ。」と説明をした。

続いて「君には霊感があるように感じたから読んでみたら良いと思って差し出しただけですよ。霊界とはどんなものか、霊とは何なのか,を知れば人は何故生まれてくるのか、などの答えを読者側に訴え掛けているし、自分なりの答えを見つける為の手助けをしてくれると思っているからですよ。例え霊を見た経験があったとしても何も怖がる必要はありませんよ。」と清々しい顔をしながら話してくれた。


確かに、人は何故生まれてくるのか? 何の為に生きるのか?は人生に於いての難題でもあるが、現在のミルキーはまだ20歳目前で『生と死』について深く考えた事など無いから、解らない課題を突き付けられて困惑した。

そんな様子を悟ってか「これからの君の人生に於いて、何かしら大きな壁にぶち当たる時が訪れると思います。その時に大学のある先輩が何か言っていたな、と思い出して欲しいですね。」と少し笑みを浮かべながら橋本先輩が帰り支度を済ませたのを確認して、「お先に。」と言って橋本先輩と福田先輩は部室を去って行った。


白い丸いテーブルを囲みながらコーヒーを片手に遥に馴れ馴れしく群がる先輩達の方へとミルキーが歩み寄って行き、遥の肩を軽く叩いて「お待たせ、帰ろう。」と声を掛けて、女子2人で「お疲れさまでした。お先に失礼します。」と先輩達に軽く会釈して部室を去った。

★ネタバレ★

実際にあった写真の話もあります。

富士五湖の内のある湖畔では、怪奇現象や彷徨っている霊がいると云う噂話も多数あります。

とある湖の水面から無数に伸びている手の写真は実際にあった話です。しかし富士五湖ではありません。

日本国内の湖だか海外の湖だかは忘れましたが、私が高校生の時に話題になった写真だったと思います。

その湖は自殺の名所となっているらしく、過去にその湖に身投げした方々や、湖畔周辺で自殺された方々の手が湖面から無数に出ていると云う写真を知人から見せられてそう言う話を聞いた覚えがあり、今回はそれも含めて書いてみました。

(その写真が合成写真で話もデマだったかは私も未だに分かりません。)


作者(私)はサイパンにもグアムにも旅行に行った経験があります。

戦時中に日本軍がサイパン島のとある岬に元日本軍が守っていたとされている場所には大砲などがいくつか残っていて観光に行きました。そして、バンザイ岬はその昔、敗戦を知った日本軍が捕虜になる覚悟よりも日本男児としての誇りを優先し「日本バンザイ、天皇陛下バンザイ」と口々に叫びながら身投げした場所としても有名らしいです。そこにも観光に行った事がありますが特に変わった事はありませんでした。

終戦後、何十年も経過したのち(現在の)天皇陛下と皇后様が初めてサイパンにある元日本軍人の慰霊碑を参拝する前迄は、心霊写真が多数あったとの噂があったらしいですが・・・私は実際にそれらの写真を見た事がありません。

グアムにある恋人岬は心霊スポットではない筈です。

それよりも危ない場所は他にあります。グアム島内のあるホテル周辺では、本当に霊が出ると云う話があります。そういう場所には絶対に行かないようにご注意ください。

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