オカルトトークの悲劇
今回の登場人物の中の福田先輩の体験談は、知恵袋で戴いた方の実際の体験談をもとに少し手を加えております。
戴いた情報をそのまま書いている部分もありますが、場所(地名)を1部変えて書いている場面もおります。
何故なら被害に遭わられた方々の中に、いまだに大変な思いをされている方々もいらっしゃると思ったからです。
実在する地名や団体名は一切関係ありません。
登場人物は全て架空の人物です。
今夜はオタ研の定期飲み会だ。授業を終えてから一度家に戻り急いでシャワーを浴びた。濡れたセミロングの髪の毛をドライヤーで乾かしてから、昨日買った膝上丈のふんわり素材の半袖ワンピースとミニ丈のボレロのような長袖カーディガンに着替え、簡単にメイクを済ませて家を出た。
ミルキーのメイクと言えば、ファンデーションなんて使わないし、リップクリームを唇に載せるだけの超簡単メイクだ。睫毛も生まれつき長くてパッチリしているからビューラーも必要ない。眉毛も生まれつき形が整っているから差ほど手入れには困らないのである。
飲み会は大学近くの都内の某居酒屋で7時半集合になっていた。ミルキーはモノレールの最寄りの駅で遥と待ち合わせをして現地に向かう。
遥の服装は、いつもよりも増して可愛い。一緒に買い物に行って実際に試着した姿を見ているけど、その時よりも断然可愛かった。今日のメイクとヘアースタイルのせいかも知れないが・・・。
この年でGカップなんて規格外の胸の大きさが羨ましいようにも思える反面、気の毒のようにも思える。
ミルキーはいまだにCカップだ。Cカップでちょうど良い塩梅だと自分では思っている。肩こりにもならなし、普通に歩いている時も運動している時も邪魔だとは思った事がそうそう無いからである。
金曜日の夜ともあって街は人で賑わっている。会社帰りのサマリーマン達やOL達、学生服を着ている高校生らしき人達や大学生っぽい人達と様々だ。
居酒屋に着いたら既に先輩達が予約席のお座敷を陣取っていた。
奥から元部長の福田先輩、橋本先輩、轟木先輩、佐藤先輩、本木先輩で折り返して岡先輩、城所先輩、飯田先輩とあり、福田先輩と橋本先輩の向えの席が空席だった。
ミルキーと遥が「遅れてすみませーん。」とペコリと頭を下げてから腕時計で時間を確かめた。2人の到着時刻は7時35分だったしそんなに遅れてはない。男性陣が早く到着したようだ。既に料理がテーブルに用意されており、飲み物もビールやジュースなど出ていたのだ。
男性陣の会費は5000円ともあり学生にしたら結構贅沢で豪華である。女性陣の会費は3500円でまだ未成年の2人はアルコールは飲めないしと諸先輩方の気配りだった。
豪華な料理を見て少し驚いている2人に対して「イイから早く座ってっ!」と幸ちゃんが2人に呼び掛けた。そして「女子2人は文学部の先輩方を合うのは今日が初めてだったよね?学部違うし大学の校舎も学部ごとだから滅多に会わないだろうしね。」と言った後に、「こちらが福田先輩で、こちらが橋本先輩だよ。」と超簡単な自己紹介を受けて、靴を脱いで空席になっていた席に取り敢えず座った。
現部長の幸ちゃんが元部長の顔を立てて乾杯の音頭をお願いした。そして元部長の福田先輩が簡単に挨拶をして「カンパーイ」と言った後に続きサークルメンバーも「カンパーイ」と合唱、宴会のスタートだ。
色々なおつまみや料理がテーブルに並んでいるので、遥が気を遣って向かい席に座っている元部長や橋本先輩の顔を見て「あのぉ、先輩方何か取りますかぁ?」と聞いていた。「イイよ、気を遣わないで。無礼講で大丈夫だから。」と清々しい笑顔を浮かべていたのは元部長の福田先輩だった。
そう言われてもお酌くらいはしないと、と思いミルキーが席を立ってビール瓶を両手で持ちお酌をしながら、「英文学部1年の風の瀬です。よろしくお願いします。」と元部長と福田先輩に伝えた。その後も次々とお酌をして回っていた。
傍らでは遥にゲスな先輩達が次から次へと取り分けたおつまみや料理を持って来ている。
「遥ちゃんは、今日もキャアワイィねーっ。」とどこからともなく聞こえてきた。男性陣の目のやり場は勿論遥のデカ乳だ。岡先輩なんかは、遥の胸元から視線を逸らしてうっすらと笑みを浮かべている。何を想像しているんだか・・・ムッツリスケベだ。
ここでも遥はお姫さま扱いを受けているらしい。遥は困った顔をしながらも「どぉもデース♡」と言って受け取り、ミルキーが座るテーブルにも並べていた。遥的にはミルキーと一緒に食べようと思って遠慮しないで次々と受け取った様子だ。
福田先輩は、年相応に落ち着いており普通に恰好がよく笑顔が素敵な好青年だ。顔から文系ですと言うように滲み出ていて、頭が賢そうである。図書館の受付や市役所のどこかの課に居そうな佇まいをしている。
橋本先輩も賢そうな顔つきをしているが、何かと目が泳いでおり落ち着きがイマイチなさそうな感じである。どこにでもいるような普通の青年でやっぱり文系って言う感じが滲み出ている。高校の時の現代文や古文(古典)の先生に雰囲気が似ておりインテリぽさがある。目の前に飛び込んでくる遥の巨乳の目のやりどころに困るのも分かるが、それ以前の問題があるかもと思うのだ。
年齢的に自分達と4歳も離れているとどう接して良いのか分からずに、何となく話し難い雰囲気でもある。
ミルキーの兄との年齢差は6歳だが、中学生になった頃から兄貴とは話さなくなってしまったので、兄妹というよりも他人的な存在で親しみがない。だから年上の考えている事が把握できるとするなら2学年上までだろうと自己判断している。中・高生の時に入っていた部活での交流範囲内がミルキーに取っての許容範囲だと思い込んでいる。
一通りお酌が終わって、自分の席に戻ったミルキーは遥と料理に舌鼓をする。
まだ19歳のミルキー達はジュースで我慢しているが、この騒がしい居酒屋の雰囲気に酔ってしまっている。無礼講の了解を貰っているからと、遥とミルキーは2人して初対面の先輩方に質問攻めをしている。
「どうして幽霊部員なんですかぁ?」
「就活はどんなことをしてるんですかぁ?」
「就職先はどんな企業を考えているんですかぁ?」
「彼女さんはいますかぁ?」
などの問いに各自回答をしてくれた。
福田先輩は「4年になると何かと忙しいからサークルは出れない。申し訳ないけど、息抜き程度にこうして顔はだすよ。就活と言うよりも一応2年から教職取ってるのと、公務員試験に向けて勉強中だよ。もし教壇に立てなかったり、公務員になれなかった場合は、親父の伝手で在日米軍基地の中で働けるように頼むつもりだよ。一応その為のTOEICの勉強もしてるんだ。彼女はいるよ。」と紳士的な対応だった。
橋本先輩は、「俺も教職取ってる。教育実習中で実習先に自宅から直行で大学には行ってないからね。それと公務員試験の勉強もしてる。教師になれなかったら・・・そうだなぁ、就職浪人かな?彼女は一応。」と考え込むように目を泳がせながらの回答をしていた。
次第にザワザワと盛り上がってきている男性陣が、昨日問題となった写真の話題をし始めた。
例の写真を出して、福田先輩の意見を伺っている。福田先輩が「こんなの問題ないよ。」と言いながら謎のミニアルバムをカバンから取り出した。100均で売っているような安っぽいアルバムに写真が数枚ほど入っていた。その中の1枚をアルバムから出して「これは俺が高校ん時に沖縄修学旅行があってね、ガマに行ったんだよ。それからずっと頭が痛くなってね、夕飯も食べずに布団に入ってたんだ。その時に友人がふざけて俺の姿をカメラで撮影したんだよ。」と言って見せてくれたのが、若き日の福田先輩が寝ている頭から白い光が天井に向かって弧を描くようにモヤーっと伸びている写真だった。
写真は回し見状態でメンバーが次々とその写真を見ることになった。
福田先輩と橋本先輩は平常心だが、他の男性陣メンバーは「これはマジ、ヤベー。」と大声で言っている。ミルキーと遥は絶句していた。この写真と遊園地の例の写真を比べてしまうと遊園地の写真の方は、ホントどうってことないって思えてしまうから不思議だ。
沖縄のガマの話は有名だ。戦争の悲劇とでも云うべきだろうか・・・。
戦後70年以上経った現代でも癒える事がなのであろうか、と戦争について改めて考える一瞬だった。
次に取り出された写真には、福田先輩がスケボーでジャンプしている姿でその後ろ姿の背中には無数の顔だけが写っていた。その写真をメンバー全員が回し見をしながら、口を押えて悲鳴をあげる人や息を呑み絶句している人も居たが、福田先輩と橋本先輩は至って平常心だった。
その写真の説明は、大学1年の夏休みに親の勧めで海外ボランティアで、とある国の町へ行った時に、交流の為にスケートボートを持参したとのこと。その町は未だに貧困で子供達から大人までがまともな生活が出来ないで苦しんでいることや、昔は内戦や虐殺があった地域であった事などを淡々とした口調で教えてくれた。
それから、福田先輩が体験したことを教えてくれた。「俺が小学生の時に父親が家を購入して引っ越した先が墓地の裏で、室内の電気が勝手に点いたり、消えたりは日常茶飯事で、お線香の匂いがしたり、襖が勝手に閉まったり、誰かが歌う声が聞こえたり・・・と不可解な現象が起きた中古物件だったんだよ。」と言っていた。
そんな話を聞いたメンバー達の中には既に知っている内容だと言うような顔でいた。
初めて聞いたメンバーはミルキーと遥だけだった。こんな事を平常心で言える福田先輩って凄いな~と思ったミルキーであった。普通はこんな事言ったら頭が可笑しい人だと思われるだろうに・・・。
でも、やっぱりオカ研だから許されるのだろうか?とも同時に思った。
それから次々とメンバーの中で発表したい人だけが自己の体験談を打ち明けていったのだ。
勿論、お酒の勢いも相まってオカルトトークに花が咲くって感じにどっぷりと恐怖体験の発表会がされたいた。幸ちゃんは霊感が無いので「そう言う類の話って科学的に証明されないから信用出来ないんだよねーっ。」と否定的なことを言いうけど、一応興味を持っており皆の話には笑いながら耳を傾けている。それ以外のメンバーは霊感を信じているみたいで、それぞれ似通った体験をしており、体験談を聞いているうちにミルキーの口がアングリ状態であった。こう言う体験談って世間では軽蔑される状況だし、誰かに相談するなんてあり得ない事だと思っていたからだ。でも皆と共有することで気持ちが楽になるならと安堵していると、ミルキーの発言の順番がやってきて、自分が体験した話をしようかどうしようか考えて、一瞬悩んで「でゎ、皆さんに聞いて戴きたい体験談があります。実ゎ私、この前の遊園地で...」と言い始めたその時に・・・・急に通路側の電気だけが勝手に消えたり点いたりの繰り返しが数回起こってから、パチーンと電球が割れる音がした。ビックリして店内のお客さん達がどよめき始めた。
居酒屋の店長らしき人物が「大変失礼いたしました。皆さま、どうぞ落ち着いて下さい。恐らく電球のワット数が合わないのが原因で突然割れたのだと思います。」と釈明した。
それを機に「もう止めよう。」と福田先輩が言った。
予約が2時間飲み放題プランで丁度時間切れとなり宴会はお開きとなった。サークルメンバーは靴を履きぞろぞろと店を出て行った。
幹事の城所先輩がお会計をしている。
外で城所先輩を待ちながら、「そもそもこの地域でも大昔に関東大震災で亡くなった方々がいるんだし・・・無理もないかも?」と誰かが発言した。無言で全員の意見が一致した。居酒屋を出た先で元部長の福田先輩がミルキーに1冊の本を差し出しながら「この本を読んでみたら良いと思うよ。」と言って続けて「この本はサークルに寄付するから、読んだら部室の本棚に。」と手渡してくれた。ミルキーはどうして福田先輩が本を貸してくれたのかの意図も分からないまま不思議そうな顔をしながら「ありがとうございます。」と言った。その本の題名は『スピリチュアリズムと霊訓』という類で、海外の有名な本で霊能力者達の集会で霊界通信によってもたらされた膨大な霊的真理の正しい理解と実践に役立つことを願って、ニューズレターを集約した本であった。ミルキーは自分のカバンに本を閉まった。
途中まで方角が一緒の先輩達と一緒にミルキーと遥は急いで駅に向かい電車に駆け込んで帰途へ向かった。次々と先輩達が乗り換えの駅で降りて行った。ミルキー達は中央線に乗り継ぎができる駅で乗り換えをして中央線の快速電車を待っていた。
遥はその待ち時間中に彼氏の勇樹君にラインでメッセージを送っていた。立川駅で待ち合わせをする約束をしたらしい。彼氏に久し振りに会えるのが嬉しいらしく円満な笑みを浮かべていた。
快速電車に乗り、空席を見つけて2人で並んで座った。立川駅に着くまでの間、延々と遥は彼氏と過ごす今夜の予定やら自慢話に花が咲いている様子だ。ミルキーは、半分耳を傾け、半分は聞いたふりをしながら頷いて対応した。ミルキーはさっき居酒屋の店内で起きた事が頭から離れない。それと福田先輩が貸してくれた本について気になっており、考え込んでいたからである。
立川駅の改札口で別れたミルキーはモノレール改札口へと向かって行った。
その後、無事に家に着いたミルキーは玄関先で母親を呼び、お清め用の塩を持って来て貰い、母親に背中に振りかけて貰った。それから自室へ向かったのだ。
これで今夜は何事もなくグッスリと眠れそうな気がした。ベットに入り借りた本を読み始めて暫くしてから深い眠りにへと入って行った。
居酒屋で起こった超常現象は作り話ですのでご安心ください。
※作者からのお願い※
日本国内でも、海外でも困っている方々はいらっしゃいます。
どうか募金活動にご協力をお願い致します。
日本赤十字社で行われている募金活動でも良いですし、他の団体が運営している募金活動に参加されても大丈夫なので、あなたの誠意と愛を持って一人でも多くの命を救って下さい。宜しくお願いいたします。