衝撃写真
内容は噂話を元に著色を加えております。殆ど創作ですのでご安心してお読み下さい。
実在する地域や団体名は一切関係ありません。
よみうりランドに行ってから1週間後の金曜日のこと・・・。
城所先輩は自分のノートバソコンでHPのサークル活動記録を更新している最中だ。
岡先輩がいつものように持参したドーナッツとスタバで購入したアイスコーヒーでスナックタイムをしている。そこには幸ちゃん、佐藤先輩、轟先輩と本橋先輩が丸いテーブルを囲って椅子に座り同じくスナックタイム過ごしている。
基本的にサークル活動は毎週木曜日の午後4時からなのだけど、不定期に集まりたい時に部室に来ては好き放題な状態だ。殆ど談話室状態だ。他のサークルはどうなのか知らないので何とも言えないのだが・・・。
轟木先輩は、体格が良すぎてもっさりとしているからトトロみたいだ。
笑顔は可愛いけど、大食いで食べ方が汚らしくイケ好かないタイプ。
話し方もシドロモドモで口の中でモゴモゴ言う感じで何を言っているのか分からない時がある。
そんな轟木先輩をミルキーと遥の2人の間では、勝手にトトロと命名している。
本人には、苗字の驫木がトトロと似ているし、驫木先輩って呼び難いからと説明してトトロ先輩と呼んでも良いかを本人に了解を得ている。
ミルキー達は、いつものように大学の無料巡回ミニバスに乗って英文学部の校舎からメイン校舎に向かっている最中だ。本当なら今日はサークル活動日ではないので、遥と一緒に立川駅のルミネで買い物をしようと思っていたのにラインでサークル一斉呼び出しを受けて仕方なく参加することになった。
「別に明日でも良いのでは?」と思ったのだが、明日はサークルコンペを開催する予定の為、仕方なく参加することにした。明日の参加費もまだ納めてないから調度良いかって思っていた。
サークルの部室に着いたミルキーと遥を迎えたメンバーは、嬉しそうな顔を浮かべていた。
特に遥には大歓迎の様子だ。
ミルキーはそんな様子を余所にパソコンを操作中の城所先輩に近寄った。
明日のコンペ会費3500円を財布から取り出して城所先輩に手渡しながら、「どうして今日は一斉呼び出しがあったんですかぁ?」と質問した。
お金を受け取りながら「どうも。明日のコンペ来るって事でOKだㇻ。」と言って受け取ったお金を参加費専用袋に入れて自分のカバンに入れてから続けて「そっか、内容までは知らせて無いんだㇻ?飯田も意地悪だㇻ」と城所先輩が言いながら、丸いテーブルを囲んで座っている男性陣の中に遥も加わって何かしら見ている方角を指さした。
遥が何かを見て悲鳴をあげていた。ミルキーは早歩きで彼らの傍に寄って行った。
それはよみうりランドで撮った写真だ。
その写真の数枚に、白く光る発光体のような物が写っていた。ハッキリとはしていないがモヤモヤとしているもので、その発光体は集合写真の1枚の中でお化け屋敷の前で撮った写真の1枚で本木先輩と遥の顔の間にあった。
他の写真にも同じようなモノが写っていたが、どれも本木先輩周辺に同じような感じで写っていた。
それを見て「何だろうね?こっちの写真には特に何も写って無いのにね?」と遥が険しい顔を浮かべながら言った。
「だ、だ、だから僕は心霊スポットなんて行きたくなかったんだよなぁー!まぁ、ま、魔除けのブレスレットして行ったからい、い、いんだけどなぁー!」と言いながらご自慢の魔除け用のブレスレットを見せていた。気が小さく気が弱い本木先輩らしい発言だ。
「その発光体みたいに写っているのって、多分夕日とかの反射なんじゃないですかぁ?だからなーんも心配しなくて大丈夫ですよ?」と気休めになるか分らないけど言ったのはミルキーだった。
「遊園地に行くか、って聞いたらお前がOKしたんじゃんか!行ったら行ったで楽しかっただろ? 写真結果はチョット災難だったなーっ」と言いながら体全身を使って大笑いしている。
その言葉の後に、「でもぉー、このお化け屋敷の前で撮った写真だけは違うと思うだけどぉー。」と言ってその写真をじーっと見ているのは遥だ。
「じゃぁ、その写真だけサークルのHPにアップしようぜーっ。」と幸ちゃんは遥が手にしていた写真を横取りして城所先輩に持って行った。遥は少し頬っぺたを膨らまし膨れっ面。
城所先輩は、写真を受け取り「了解だㇻ。自宅のスキャナーで読み取って近日中にUPして置くだㇻ。」と言って写真も確認せずにそのままカバンに入れた。
その脇でまだゴチャゴチャと話しているメンバー。遥の膨れ顔を見たメンバーは「遥ちゃんのそんなんお顔も超可愛い~、萌えーーー。」などと言って騒いでいた。
その中で不意に「よみうりランド周辺の心霊スポットの由来を知ってる人居んの?」とモソモソと発言したのはトトロ先輩だった。「本物の霊が出るって噂話は知ってんけど由来までは知らねーなー。」と言いながらメンバーの顔を見回したのは岡ちゃんだ。
トトロ先輩が「よみうりランドって山に囲まれてるっしょ?もともとよみうりランド近辺は、戦国時代に戦って亡くなった人達の霊が出るって話なんだよね。んで、昔あった河川敷周辺に何かの建造物を建てようと土を掘ったらいくつかの白骨が出てきたらしいよ。それで急遽変更して供養する為に慰霊碑を建てたんだって。だから、そう言う霊体が彷徨ってるって話だよ。」と言ってドヤ顔をした。
こんな場面でドヤ顔する気持ちが理解出来ないミルキーだった。でも、そう言われてミルキーは少しハッとした。あの時に見た霊体はそう言う事だっただったのかと少し納得した。まぁ、お父さんも何やら怪しい事を呟いてたけど、お父さんに聞くの嫌だったから情報が入って良かったかも?と同時に思った。
その話を聞いたメンバーは、全身に鳥肌を立てて背筋が凍ったように思えた一瞬でもあった。
「別に気にしなくって良いんじゃねーっ!それより明日のコンペ楽しみだな?元部長も橋本先輩も来るって話だぜっ。」と幸ちゃんが発言した。
「霊能力がある元部長の福田先輩に例の写真を見せて感想を聞けば良いと思うけど。」とトトロ先輩が言った。「だって、俺がその話を聞いたのは、元部長からだしね。」と続けた。
そんな付け足しの会話で終わって、各自部室を退室した。男性陣はそのまま学食へ向かい夕飯を済ませていく参段だった。
ミルキーは遥と一緒に帰途に向かい、予定通り立川の駅ビルのショッピングエリアに立ち寄って明日着ていく洋服を物色し洋服を試着してはお互いに感想を言いながら気に入った洋服を購入した。
夕飯も遥と一緒にレストラン街のどこかのお店で食べようか相談したが、ミルキーが参加費を払ってからの買い物だった為に懐が寂しくなり断念した。それで渋々モノレール駅に向かい家路に向かった。
家に着いたミルキーは自室で部屋着に着替えてからリビングルームでTVを見て寛いでいる。ミルキーはお笑い系のテレビ番組が好きでクスクス笑いながらその番組を見入っていた。
台所では母親が夕飯の支度をしている最中だ。
「そろそろお兄ちゃんもお父さんも帰って来る頃だゎ。テレビなんか観てないでチョット手伝ってよ。」と優香がミルキーに言い放った。
仕方なくミルキーは食器を並べたり、野菜サラダの準備をしたりと手伝った。
「私も仕事しながら家事もしているんだから、それ位の手伝いはして貰わないとね。」と母親が呟いた。
それを聞いたミルキーは、少し気まずそうに「明日サークルの飲み会があって今日会費払っちゃったし、明日着て行く洋服も遥と駅ビルで買って来ちゃったかたさぁ~、今月のお小遣い足りなくなっちゃったから、少し頂戴、ねぇ~お願いします。」と甘えた口調でお願いして、仕方なさそうに母親が食器棚の引き出しに隠してある母親のヘソクリから5000円を取り出して差し出した。ラッキーっと思ってペッロと舌を出して首を右側に傾げながら遠慮なく受け取り「Thanks, mommy!」と言って部屋着の短パンのポケットにしまった。
父親は車通勤で車庫に車を入れている最中に、ケンちゃんが最寄りの駅から徒歩で自宅前に到着した為、父親とケンちゃんが同時に玄関に入ってきた。
ケンちゃんは大学卒業後に都内の某大手企業に就職しており社会人2年目でスーツ姿が板についてきた様子。大学受験で第2希望の東京経済大学に入ったのだが、半年で止めてしまい翌年亜細亜大学・経済学部に受験して入りなおした。どうしてそんなことをしたのかは誰も知らない。
家族全員で夕飯を済ませてから父親と兄がテレビを観ている。その番組は「世界の霊能力者が難解事件を解決に導く!」と言う類の特番で、両親が大好きな番組の1つだった。この時期になるとそのような番組がどのテレビ局でも企画するみたいで、別に観たくないテレビ番組でもリビングに居るとついつい観てしまうミルキーだった。ケンちゃんは暫くしてから浴室に行ってしまったので父親と二人だけになってしまった。
母親は食後の片付けをしながら、リビングから聞こえるテレビ番組に耳を傾けている様子。
父親が独り言のようにブツブツとテレビに向かって言っているのか、ミルキーに向かって言っているのかイマイチ不明だが、適当に頷いて対応した。無言だと父親が不機嫌になるからだ。
母親が食後のお茶を入れてリビングに持ってきた。そのお茶を啜りながらテレビ番組を観ていた。
結局最後までその番組を見入ってしまった。
兄が浴室から出て来て、「次の人どうぞ。」とミルキーの顔を見て言った。
ミルキーはお風呂に入ってから、床に就き眠ったのだが、、、その日の深夜2時過ぎにとてつもない金縛りに遭ったのだった。
ミルキーに取っては、久し振りの金縛りだった。
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最後に金縛りに遭ったのは、高3の夏休み中で母方の親戚が全員集まって勝浦の民宿に宿泊した夜だった。母は、5人兄妹で兄が1人、妹が2人、弟が1人で母が長女だ。大家族と言えばそうかも知れない。
母方の親戚が集まると従兄妹達も当然来るので人数的に多くなるのは当たり前である。
到着した日の翌日が母方の祖父の1周忌で、風の瀬家からは母親と私だけが出席することになった。
母方の親戚は殆どが八王子周辺に住んでいるのだが、母方の祖母の実家が勝浦にあり、先祖代々の墓が勝浦にあったからである。勿論、祖母も叔母さんも叔父さんも従兄妹達も全員が母方の親戚だった。
民宿は祖母の親戚が経営しており、祖母は身内のように親しげであった。
祖父の墓参りはその時が初めてで、葬式にも参列してなかったので、遠い親戚が勝浦に居ることなんて知らなかった。祖母や母も叔父も叔母も従兄弟たちも何やら親し気に話している姿が新鮮に見えた。
どうして祖父のお葬式に母も私も参列出来なかったと言うと、父親方の祖母の体調が悪くてずっと入院していた為に、近所に住んでいる私達がお世話をしていたからだった。それに父親の幸太郎は母側の親戚との付き合いを疎遠してたいと望んだ経緯があって、母親の優香は夫の意見を尊重して親戚との交際を遠慮していたからだ。世間で聞くような親戚付き合いの問題だ。
祖父の1周忌の参列の為に初めて勝浦に行ったのだが、来なければ良かったかも?と思ったのは1周忌の前夜に祖父がミルキーの枕元に出てきて皮肉めいた事を言ったからである。
正直な話、生前の祖父に可愛がられていた記憶が無い。高1の夏休みに母親にだけこっそり伝えて、母方の実家に一人で遊びに行った時も、祖母が色々と面倒をみてくれたのに対して、祖父は私の顔を見るたびにムスっとした顔をして全然喋らない。祖父は身長165㎝位の細身、白髪でスポーツ刈りぽくしていて、お酒を少し嗜みお刺身が大好物でお刺身をつまみに晩酌をすることが、人生で唯一の楽しみであるかのような人だった。若い時は八王子市内で青果店を営んでいたらしいが、老後は市内の都営アパートの住み込み管理人を祖母と2人でしていた。基本的には無口な祖父だったのだが、美優だけには特別に嫌な顔を平気でする人だった。その理由は美優には解らない。父親が母側の両親や親戚に対する卑劣な対応に堪忍袋の緒が切れていたのが孫の美優に降り掛かっていたのかも知れないが・・・。
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民宿に到着した時も、親戚皆で夕食を囲んだ時も、天気が良かったのに・・・・。
親戚とは言っても男性陣と女性陣とは襖で仕切られて大広間を使用して、別々に分かれての夜を過ごすように組み分けされていた。布団に入りミルキーも含めて全員が熟睡していた深夜2時過ぎ頃に、急にミルキーの体に異変が起きた。急に金縛りになって重苦しくなった途端に、民宿のすぐ脇に落雷した。そしてミルキーの枕元に祖父が正座しており、生前の祖父が夏の時期になると着用していた甚平姿だった。
ミルキーは心の中で「お祖父ちゃん?お祖父ちゃんなの?」と問いかけた。
そしてミルキーの心に直接祖父が話し掛けてきた。
「何故来た?」と聞こえたので、
「お祖父ちゃんの1周忌に参加する為です。」と心の中で答えた。
再度、「何故、お前が来た?」と聞こえたので、
「明日きちんとお墓にお参りに行くので、どうか許して下さい。お願いします。」と念じた。
続けて「南妙法蓮華経・・・お葬式に参列できなかった事をどうか許してください。ごめんなさい。ごめんなさい・・・」と何度も何度も心の中で強く答えた。
その後、豪雨の音が聞こえてから直ぐに重くのしかかっていた圧力が軽くなった。
その後も雷雨が民宿に響き渡り、眠っていた人達が吃驚して起き上がり、叔母さんの一人が部屋の電気を点けた。
電気を点けてから数分もしない間に、室内の電球が勝手に消えたり点いたりの繰り返しが始まった。
従妹達は怖がって悲鳴をあげていた。
そうこうしているうちに、雷がおさまり徐々に雨が止んでいった。室内の電球が平常に戻り、叔母さんの一人が「何があったんだろ・・・。みんな大丈夫?」と全員に言いながら確認をした。
ミルキーは隣の布団の上で起き上がって座って居た自分の母親の傍に寄って行き母親の浴衣の袖を掴みながら「お母さん・・・さっきお祖父ちゃんが来てね、私に何故来たんだ?って質問してきたんだよ。」と母親の耳元に顔を近付けてこっそりと伝えた。優香はミルキーの背中を優しく擦りながら「そうなんだ・・・さっきまでお祖父ちゃんが窓際に立ってこちらを見ていたから、お母さんも分かったわ。大丈夫、明日きちんとお墓参りしましょう。」と返ってきた。
それを聞いたミルキーはビックリしたと同時に、少し安心した。
母親にも霊感があったんだとこの時に初めて知ったのである。
次の日の朝、1周忌が始まるかなり前に祖母に「ねぇ、お祖父ちゃんが亡くなってお葬式の時の棺にお祖父ちゃんが夏に着ていた甚平を入れたの?覚えてる?」と質問してみた。
祖母は「うん、入れたよー。お祖父さんが気に入っていた洋服も何枚か持たせたし、あと下駄も持たせたよ。」と言われた。ミルキーは「そうなんだぁー。教えてくれてありがとう。」と祖母に伝えて母親の傍に擦り寄った。
1周忌は、何事も起こらずに滞りなく終わり、親戚一同安堵した。
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そして、あの勝浦の民宿での不思議体験後から、ミルキーの霊感は強くなったのだ。
金縛りには遭わなかった。多分、金縛りなどで出てくる幽霊とミルキーの魂の波長が合わなくなったのだと勝手に思っていた。
空気が重い場所などに行くとくっきりと霊体が見えたので、霊に対する怖さは消えていた。
霊体と言っても、人間が少し透けて見える様な状態で、頭も顔も体も手足もきちんとあり身なりが整っていて立ちすくむ姿がハッキリと見えていたからだ。何かを言いたそうな顔を見せるが、こちらから話し掛けない限り何も話しかけて来ない事をミルキーは気が付いていた。だから、霊体を見ても何も問いかけないようにし、立ちすくむ霊体から一旦目を逸らしてもう一度目を向けると、霊体は目の前から消えているのが多々あった。
サークルのメンバーでよみうりランドの写真を見た後に聞いたあの話が切っ掛けでこんな苦しい金縛りに遭っているのだと思った。
うっすらと瞼を開けて天井を見てみたが、何の気配も感じなかった。
重苦しい金縛りの最中に「南妙法蓮華経・・・・」と何度も繰り返し唱えて「バーサレ!バーサレ!私はこの世で生きている人間だ!あなたのような霊が来て良いところでは無いんだ!バーサレ!バーサレ!」と心の中で唱えた。その後、徐々に軽くなって体を起こして電気を点けた。
特に異変はなかったので、安心して階段を下りて台所に行き白湯を飲んで一息。
ついでにトイレに行き、用足しを済ませて再度自室のベッドに入った。
無事に翌朝を迎えたのであった。
祖父の1周忌についての内容は実話を元に書いてます。
登場人物の名前は全て仮想ですが、私の実体験を基に書いてます。
「嘘だー!」と思う方もいらっしゃると思いますが、共感できると思う方もいらっしゃるとも思います。
それぞれの感じ方にお任せ致します。