血の施し
しかし、口がなくなるというのは不思議な感覚だろ。現在進行で体験しているしな。
親友だったものは間違ったことを彼女に言って引っぱたかれていたな…。口は災いの元というし、口はいらないかもしれない。叫び声とか泣き言を言わなくていいし。
あれ?でも前の人は叫んでいたし口があったのかな。
不思議だ。
ついでに足もない。魂みたいな状態だしな。前に進もうとしたら進むし、後ろに進もうとしたら進めない。何これ。結構不安なんですけど。鬼から逃げられないし。
将棋の歩兵とかチェスのポーンもこんな気持ちだったのか?
その理屈でいうと俺は成ったり別の駒に変化することができるのか?
そんなどうしようもないしょうもないことを考えながら、恐怖を紛らわしていたら誰かが鬼の後ろから来た。
「そいつ、どうせ試練受けて死ぬだろー。例の奴だから死んでも面倒いし。施ししていい?」
助けてくれるの。マジで夢じゃない。てか、こいつ誰?仮面かぶって、いまどき流行らない真っ赤なスーツなんか着て。
でもところどころ青い…。深く考えないでおこう。この状況は変わらず現実だけど…。いや、希望は、捨てちゃだめだ。てか、希望あるの。多分、いや絶対あの赤色のやつは血だよね。血の面積の方が大きいってどういうことなの。
「まぁ、そうだな。けど、規則あるしなぁ。」
「規則は破る為にあるんだよ。」
「お前、前それで減給くらったろ。」
このなんか無法地帯が管理されていることに一番にビックリしたことにビックリしたよ。俺意外とまだまだ余裕があるらしい。こんなドロドロしたところなのに。まぁ、俺のハートは鉄でできてるからな。
「う、痛いとこつくなー。いいじゃん、暇なんだよー。俺とお前の仲だろー。」
「まぁ、いっか。けど、お前が責任取れよ〜」
「おう、何にしようかな〜」
軽いな。おい。
なんとなく話の流れからして血スーツが何か施し?とやらをしてくれるらしい。
施しってなんだよ。
「適当でいっか。どれにしようかなっと。これか。微妙なんだよなぁ。他の面白い奴にしよう。」
なんか不安の残ることを言っている血スーツ。
何か決めたのか。いきなり俺の体(魂)を握ってきて何か送り込んでくる。
分からない。けど、気持ち悪い。乗り物酔いみたいな何かを感じる。
これが、施しか。
だから、施しってなんだよ。
体(魂)で感じても何が何だか結局分からなかった。