新たな出会いは唐突に……
「……あれ?橘?」
俺は、駅の待合室にちょこんと座るクラスメートに出くわした。
「え……?今井君?」
「こんな所で会うなんて珍しいな」
「いつもは2本早い電車に乗っているのよ。今日は寝坊しちゃって……」
そう言って、橘は頬を赤らめた。
「まじか!?そんなに早く学校行ってたのかよ!知らなかった……」
「そうでしょうね。2年の二学期で初めて会うんだもの」
「だな。……あれ?その小説……」
彼女が手にしている本に目線を落とす。
「それって最近芥川賞取ったやつだよな!?面白いよな、それ!!」
「え……?」
橘は大きく目を見開き、俺の顔をまじまじと凝視した。
「今井君もこういうの読むのね。意外だったわ」
「ああ。……って、なんかさりげに酷い事言われてるよな、俺」
「ふふっ」
「ははっ」
それから俺たちは、友人として今でも傍にいる。
ちなみに彼女は、2本電車を遅らせるようになった。