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農業高校は毎日が戦争だぜ  作者: りょうさん
夏休み編
98/110

夏休み編~海だー!さん!~

「暑いな~、人多いな~、楽しそうだな~」

耕太以外の面々が海へと走っていく中、耕太は一人パラソルの下に残った。耕太には勇気を貯める時間が必要なのだ。

「あれ?こうにぃ何してんの?」

「ん~?お~春香か。楽しんでるか~?」

「なんでそんなに無気力なの!?」

「勇気を貯めてるからだよ」

「勇気って・・・」

勇気を貯める為、少しばかり無気力な耕太に驚く春香だが、すぐに呆れた表情を浮かべる。

「それで?春香はどうしたんだ?」

「ちょっとジュースでも買ってこようかと思って、財布をね」

「なるほど、いくら海とは言え水分補給は大事だからな」

耕太は納得したように頷く。

海で遊んでいるとは言え、水分補給を怠ってしまえば熱中症になる可能性は十分にありえる。だからこそ、こまめな水分補給が大切なのだ。

「そういえば、なつ姉と秋穂ちゃんは?」

「先に海の家に行ってるよ」

「そっか、よし!こうにぃもついて行ってあげよう」

「ほんと!?・・・じゃなくて!ついて来たければ来ればいいじゃん」

耕太の言葉に嬉しさを表情に出すが、慌てて引っ込める春香。

その顔は夏の暑さも相まってか、少しばかり赤くなっていた。

「はは、ついて行きたいから行くよ」

「ふ、ふん!いんじゃない、別に!」

やはり素直でない春香だったが、耕太は先程の無気力さはなく、優しい笑みを浮かべていた。


「その水着似合ってるな」

「ふぇ!?そ、そうかな・・・?」

「ああ、似合ってるよ」

海の家へと向かう道中、耕太は春香の水着を見てそう告げた。

春香の水着はビキニではない普通の服のようなもので、半袖でお腹の辺りが大きく空いた上着にショートパンツというものだった。

ビキニのように露出は多くないが、大きく空いたお腹辺りは、くびれた腰やおへそが出されていて、健康的でスレンダーな体型の春香の魅力を大きく引き出していた。

「えへへ、よかった」

春香も褒められたことが嬉しいのだろう、表情を崩していた。

「春香、友達できたか?」

「うん、できたよ。少なくとも孤立してはないかな」

「そうか。春香のことだ、モテるんだろう?」

耕太はからかうような口調で尋ねる。

中学校の頃からモテるということは聞いている。日々成長し、魅力の増している時だ。更にモテるということはあっても、モテないということはないだろう。

「まあ、それなりにはね。うかうかしてると誰かと付き合っちゃうかもよ?」

その春香の言葉は、可能性がないことではないと同時に、少しばかりの願望も含まれていた。嫉妬して欲しい、そんな小さな願望だ。

「そっか~、そんな良い人が居るのか?」

しかし、そんな願望が耕太に届くはずもなく、耕太は持ち前の鈍感さを発揮する。わかってはいたが、春香は少しばかり肩を落とす。

「でも・・・」

春香は耕太の言葉に顔を上げる。

「ちょっとだけ、寂しい気もするかな」

耕太は顔を明後日の方向に向けながら言った。

春香は忘れていた、耕太の得意技を。耕太は人一倍鈍感だが、同時に無意識に不意打ちを仕掛けてくるのだった。

「・・・あ、・・・うぁ」

春香は胸を鷲掴みにされたような苦しみを覚え、同時に胸の奥の方からこみ上げてくるものを感じた。

「・・・恥ずかしいけどな!」

そう言って明後日の方向に向けていた顔を春香の方へと向け、はにかむ耕太を見た春香は一瞬で顔を赤く染め上げる。

「・・・春香?」

「ちょっとだけこのままで」

「わかった」

二人は互いの手を絡め合い、海の家へと歩いて行った。


「あ!春ねーたん!こーにいちゃん!こっちだよー!」

本日二回目の海の家へと到着した耕太達を、元気に手を振る秋穂が迎えてくれた。道中一度も離されることのなかった互いの手は自然と離されていた。

「あれ~?こーくんも来たの?」

「ちょうど暇だったからね」

「あれを暇だというのかは微妙だけどね」

夏美の問いに答える耕太にすかさず突っ込む春香。

「ん?おー坊主。また来たのか?」

「あ、おじさん。今回はただの付き添いですよ」

「おー、この可愛い嬢ちゃん達は坊主の彼女かい?」

「そーです」

「いとこです」

ニヤニヤしながら話す店主の問いに、すかさず肯定の言葉を発する夏美だが、耕太はそれを素早く否定した。

「はは、そうかい。さっきナンパされてたから、追い払ったんだが余計なお世話だったかね?」

「いえ、全力で感謝します。なつ姉、秋穂ちゃん大丈夫だった?」

店主の言葉に素早く礼を告げる耕太。

先程の春香との会話からわかるように、耕太は三姉妹を非常に大切にしている。悪い男や変な男に奪われることを耕太は許さないのだった。

「お姉ちゃんは大丈夫だよ~」

「秋穂も大丈夫!」

「そっか、よかった」

耕太はひとまず安堵する。

この三姉妹は、美少女だ。それゆえ、ナンパには慣れていると言って過言ではない。だからこそ、慢心するのではないかと耕太は逆に心配してしまうのだが。

「こーくん!お腹すいちゃった!何が美味しいのかな?」

「そうだな~。やっぱりタコ焼きと焼きそばかな!」

「よーし!おじさ~ん!焼きそばとタコ焼き二つずつね!」

「あいよー!」


「はい秋穂」

「わーい!いただきます!」

春香の分を少し分けた焼きそばとタコ焼きを受け取った秋穂は、行儀よく合掌をして食べ始める。

これは、耕太がしているのを秋穂が見て真似をしたのである。

「おいしい!」

「よかったね秋穂ちゃん」

秋穂は焼きそばとタコ焼きを口に運ぶと笑顔でそう口にする。

耕太はその笑顔を見て、優しく秋穂の頭を撫でる。

「ほんとだ、美味しい!」

「そうだね~♪」

春香と夏美の口にも合ったようだ。

「お、嬉しいね!嬢ちゃん達可愛いからサービスしちゃうぜ!」

「いいんですか?」

「なぁに!気にするな!」

「ありがとうございます!

三人の反応に気をよくしたのか、店主がタコ焼きを二つサービスしてくれる。

店主の顔は嬉しそうな笑顔だった。

「そういえば春香、部活はどうしたんだ?」

「郷土研究部」

「はい?」

聞き慣れない部活名に思わず聞き返してしまう耕太。

「日本全国の郷土文化や郷土技術を研究したりする部活なの」

「へぇ、郷土文化とかに興味があったんだな」

「うん。同じ日本なのに、地域ごとに違う文化を持ってて、凄い技術があるの。その地域ごとに良さがあって、どんどん引き込まれていっちゃった」

そう語る春香の目はキラキラしていて、本当に好きなものを語る表情だった。

「そっか、本当に好きなんだな」

「うん!実際に見て回ったりするみたいだし、今から楽しみ!」

「秋穂ちゃんは新しいクラスには慣れた?」

「うん!慣れたよ!」

「そっか、よかった」

小学三年生といえば、学校によって違うが、小学校に入学し初めてのクラス替えが行われる学年だ。クラスの変わることの期待と共に不安もあるだろう。明るくて可愛い秋穂だが、孤立してしまう可能性もないわけではない。耕太は少しばかり心配していたのだ。

「友達もできたよ!」

「さすが秋穂ちゃんだね」

「えへへ♪」

耕太が秋穂の頭を撫でると、嬉しそうに目を細める秋穂。

「ねえこーくん。進路とかどうするか決めてるの?」

夏美が真面目な顔で質問をする。

「うーん。まだ決めてないかな」

「就職か進学かは?」

「それもまだ・・・」

二年生にもなれば、進路のことについて学習を始める。早い者は公務員試験に向けてコツコツと勉強を始めている。進学者についても同様だ。

しかし、耕太は資金のことや家庭環境などから決めあぐねていた。

「そっか~、うちは農学部があるけど来る気はない?」

「なつ姉のところは私立だよね?ちょっとお金がね・・・」

「そっか・・・」

残念そうに肩を落とす夏美。

「まあ、もうちょっと時間はあるから考えてみるよ」

「そうだね」

「よし!それじゃわしは行くよ」

「うん!ばいばーい!」

「気をつけてねこうにぃ」

「ばいばいこーにいちゃん!」

耕太は三人に別れを告げ、海の家をあとにした。

「進路・・・か」


続く


どうもりょうさんでございます!

「どうも川島耕太です!」

さて、今回はいとこ三姉妹との絡みでしたね!

「春香との絡みが最近多い気がするけど、なんか理由はあるの?」

特にはないんだけど、やっぱり高校生とか一年生っていうのは扱いやすいんだよ。

「なるほど、新しいことや夢ってのがあるからね」

そういうこと。

さて、本編では海編が続いておりますが、次回で終わりそうです。

「次回をお楽しみに!」

それではまた次回お会いしましょうね!

「さようなら!」

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