農業高校の日常
ついに授業がスタートです。
地獄の新入生合宿研修を終えた耕太達、しかし休む暇なく翌日も学校はあった。
「だぁ・・・合宿研修の次の日くらい休ませてくれてもいいのになぁ・・・」
机と一体化しそうなのは主人公川島耕太。
「耕ちゃん、そんなんじゃあやっていけないよ~なぁ~?南のお嬢~」
ぽけーっとした顔で言うのは、クラスメイトでなんだかんだ耕太と一緒にいる下永哲也。
「あんたが元気なだけよ」
きっぱり言うのは同じくクラスメイトで、生徒会長の妹南麗華。
いつもの三人衆である。
「それじゃ、俺っちがバカって言ってるみたいじゃないか~」
怒っているのか微妙な下永。
「ちがうの?」
キョトンとした顔で首をかしげる南。
「うっそん・・・」
肩を落とす下永。
「はは・・・腕痛い・・・」
まだ痛みが残っているらしい耕太。
がらがら
ドアが開く音がする。
「よぉーし!ホームルーム始めるぞー!席につけ~!」
熱井先生が元気よく入ってくる。
「熱井先生は元気だよな・・・」
元気な先生が羨ましい耕太。
帰りのバスの中でも一人だけ起きていた。
「そりゃ~熱井先生だからな~」
下永は足を伸ばしながら言う。
「なんか納得・・・」
実際、熱井先生が疲れているところを見たことがない。
「よぉし、全員いるな~!さて、今日から本格的な授業が始まるわけだが・・・」
そう、今日からは授業があるのだ。
「5,6時間目のための実習服忘れた奴はいないよな~?」
5,6時間目の授業は、環境科学基礎(現在は農業と環境に改訂)。
実習が多く行われる科目だ。
「よし、いないな!初日に忘れた奴がいたらどうしてやろうかと思ったぜ!」
さらりと怖いことを言う熱井先生。
((((((忘れなくてよかった・・・))))))
ほっとするクラス全員。
ホームルーム進み。
「よし!ホームルーム終了!一日頑張れ!」
先生が去っていくと徐々にざわざわし始める。
「一時間目ってなんだっけ」
耕太が聞く。
「えっと・・・国語総合?」
下永が答える。
現在は改訂されている教科も多いが、あくまで作者のいた頃の教科で進めていく。
「国語かぁ・・・あんま得意じゃないな・・・」
耕太は本を読んだり、長文を読むことが苦手なのだ。
「耕ちゃんは何が好きなん?」
下永が聞く。
「・・・・・・・・ない?」
「・・・・・・・・俺っちもや・・・」
「「はぁ・・・」」
どちらも勉強は苦手みたいだ。
「南のお嬢は好きな科目ある?」
すがるような思いで南に聞く下永。
「好きなものはないけど嫌いなものもないわ」
答える南。
「「・・・(すぅぅ)」」
静かに涙を流す二人。
「な、なんで泣くのよ!?」
慌てる南。
「耕ちゃん・・・優等生がおる・・・優等生が・・・」
「落ち着け下永・・・わかっていたことじゃないか・・・最初から・・・わかっていたじゃないか・・・」
「耕ちゃん・・・」
「強く生きていこう下永・・・俺たちの未来は明るいぞ・・・」
「そうやな耕ちゃん・・・強くならなきゃな・・・」
「そうだぜ!俺たちは強い!」
「俺たちは強い!」
「で・・・何が言いたいの?」
「「勉強教えてください!!!」」
「はぁ・・・」
ため息をつく南。
ふたりはわらにもすがる思いだった。
1時間目、国語総合。
「この作者の考えは?川島くん」
耕太に問う先生。
「はい!わかりません!」
胸を張ってはっきり答える耕太。
「胸を張りながら言う言葉じゃありません!」
「は、はいい!」
撃沈。
2時間目、英語。
「この英語の意味は?川島くん」
「はい!わかりません!」
胸を張ってはっきり答える耕太。
あれ・・・デジャヴ?
「胸を張りながら言う言葉じゃありません!」
「は、はいい!!」
撃沈。
3時間目、数学。
「この場合、グラフはどこ方向に凸でしょうか、川島くん」
「はい!・・・右?」
今度は自信なさそうに答える耕太。
正解は上か下しかありません。
「はぁ・・・」
頭を押さえる先生。
下永は大爆笑、南は机に頭をつけていた。
撃沈。
4時間目、測量。
「この角度を求めてみろ、じゃあ川島!」
担当教員は熱井先生だ。
「はい!・・・できました!」
自信満々な耕太。
「川島・・・三角形の内角の和は180度だぞ・・・その計算だと360度だ・・・」
撃沈。
昼休み。
「・・・(ずーーーーん)」
耕太は机に顔をうずめ動かない。
目の前には
「ぎゃはははっは!耕ちゃん!ありゃないわ!!俺っちもあそこまでとは思わんかったわ!!」
大爆笑の下永がいた。
「ほんと・・・あそこまでとは思わなかったわ・・・よくあんなので高校合格できたわね・・・」
呆れ気味の南。
「推薦できたので、面接と小論文しかありませんでした・・・」
泣きそうな顔で答える耕太。
「この学校推薦入試で半分とるからね~」
椅子をがたがたしながら言う下永。
「こんなんじゃ、勉強教えるにしても基本の基本からになるわよ・・・」
頭を押さえるのを止めることのできない南。
「め、面目ない・・・」
「まぁ!いいじゃん!それより飯飯!」
空気を変えるように言う下永。
「そうだな、飯だな」
切り替える耕太。
「そういえば耕ちゃんは自分で作ってるんだっけ?」
思い出したように聞く下永。
「そうだよ?」
「ちょっとちょーだい!」
「あ!ちょ!」
耕太の弁当から卵焼きを抜き取る下永。
「ん・・・んん!?」
「どうした?まずかったか?上手く出来たつもりだったんだが・・・」
下永の反応に不安になる耕太。
「うんめえええええええええええええええええええええ!!!」
「!?!?びっくりした!」
突然叫びだす下永とびっくりして箸を落としそうになる耕太。
「耕ちゃん!こりゃうまいで!うちの母ちゃんよりうめえ!」
興奮気味の下永。
「あ、ありがとう・・・」
戸惑う耕太。
「南のお嬢も食べてみって!」
「え、ええ・・・いいの?」
耕太の方を見る南。
「どうぞ・・・」
弁当を差し出す耕太。
「じゃ、じゃあいただきます」
小さな一口。
「!?!?おいしい!!!え!?こんなことって・・・」
驚愕する南。
「うえぇぇ!?」
驚きすぎて椅子から落ちそうになる耕太。
「私よりうまいなんて・・・(ぼそ)」
「やろ!?やろ!?」
興奮が収まらない下永。
「耕ちゃん・・・俺っちのために毎日弁当作ってくれ」
「告白の定番をアレンジしてきやがった!?」
もうわけがわからない状態に。
意外な耕太の特技でした。
5,6時間目、環境科学基礎。
「環境科学基礎では主に作物の栽培を行う、作物の栽培は一年生でしかやらないから、真剣にやるように」
「「「「「「はい!」」」」」」
学科主任の火野先生が説明を行う。
このような実習科目は実習棟で説明を受け、その後実習場所へと向かう。
さらに、学科の先生のほとんどが出てくることが多い。
緑地土木科は普通にやっていれば、作物栽培はしない科だ。
そのため、一年生の環境科学基礎の時間に取り入れている。
「この、作物栽培は命を育てる、作物も命だ、決して生半可なことはするなよ!」
「「「「「「はい!」」」」」」
「そんじゃ!実習圃場へ移動!」
実習圃場へと歩いていく。
長靴を履き、軍手をつけた形で実習圃場へと集合した。
長靴は実習服と同時に入学以前に全員購入する。
この実習圃場は、生活科、畜産科など園芸科以外の作物栽培をしない科が使う圃場の他に、園芸科が使う温室、農業機械科が使う田んぼ、ぶどう温室、2ヘクタール以上ある畑など沢山のものが密集した形になっている。
現在も、温室では園芸科が実習を行っている。
園芸科が栽培するものは文化祭で実際に販売される。
そのほとんどが、すぐに完売するほどの人気だ。
「よーし、今日は作物を植えるための畝を作るぞ!」
畝(うね)とは作物を植えるための土を盛り上げたものを言う。
よく、畑に何も植えていない状態で、通り道より高く盛ってあるものが畝である。
作物を植えるための土台ともいえよう。
「できたらマルチ引きも行う」
マルチとは、畝の上にひく黒いビニールシートのようなものだ。
説明を受けた皆は作業へと取り掛かる。
「いや~、最初から植えるんじゃないんだな」
耕太が言う。
「何事にも準備は大切ってことやな~」
下永が言う。
「なるほどな~それにしても、広いな~」
「そうやな~全部で3ヘクタールはあるやろな~」
「うへぇ、さっきから生徒が乗ったトラクターが走り回ってるし・・・」
農業機械科の生徒は大体がトラクターに乗る。
と、耕太達の横の道路を畜産科の三年生が騒ぎながら走っていく。
「うまれるぞ!!いそげ!!牛だぁぁぁッぁぁぁぁ!!がんばれ!マサコォォォッォォ!!」
「「・・・・大変だな」」
牛の出産が始まったらしい。
畜産科は時々こうゆう事がある。
その頃南は・・・
「・・・川島くんの勉強法・・・は!こんなことはどうでもよくって!畝!畝作らなきゃ!・・・あ、でも基本から・・・」
耕太のことを考えてました。
そして無事、畝作り、マルチ引きが終了した。
その後のホームルームも終了し。
「「「「「「部活だァァァァ!!」」」」」」
体育会系の皆様は部活へ行かれましたとさ。
耕太達はというと
「じゃあな~」
「じゃあね~」「またあした・・・」
早々と帰っていきました。
1時間後。
「ただいま」
家へと着いた耕太。
そして、ひとつの仏壇の前へ。
そこには笑顔の男性と女性の写真があった。
「ただいま、母さん、父さん」
手を合わせ目を瞑る耕太。
「よし」
耕太は台所へと向かった、そして自ら作った弁当を持ち出かけていく。
「いってきます」
続く
どうもりょうさんです!農業高校の日常をお送りしました!
前回、農業高校の日常編と書きましたが、この一話のみです。
次回からは耕太の過去編、現状編に入ります。
耕太の家庭事情なども書いていきたいと思います。
少しシリアスになってしまうかもしれませんが、シリアスに書けるかどうかも分からない文章構成能力なので、お気に召さない形になってしまったらごめんなさい。
それでも精一杯頑張りますので!よろしくお願いします!
それでは、また次回お会いいたしましょう!
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