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農業高校は毎日が戦争だぜ  作者: りょうさん
二年生編~1学期編~
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1学期編~遠足ワン!~

本格的に季節が春へと移り変わってきた頃。生徒会顧問の先生からこんな一言が発せられた。

「遠足をしよう!」

当然生徒会メンバーは唖然としてしまう。この畑農には遠足という行事はないのだから。

「あの先生?何故いきなり遠足なのですか?」

未だ唖然としている生徒会メンバーの中で、いち早く気を取り直した美紅が尋ねる。

「うむ!うちと懇意にしている畑南小学校があるだろ?」

「はい。何度か交流したことがありますね」

「そこから一緒に遠足に行かないか?とお誘いが来たのだ」

畑農は多くの教育機関と連携を取っている。畑南小学校もその一つだ。

「ほら、よくあるだろ?一年生と六年生が手をつないで遠足するやつ。あれの学校と学校バージョンだよ!」

「なるほど。学校側・・・主に校長先生はどういってるんですか?」

そう、全ての最終決定は校長に委ねられるのだ。校長がYESといえばYES。NOといえばNOなのだ。

「どんどんやってくれ!って言ってたよ」

「さすが校長・・・」

校長はこういう楽しい行事を好む人であった。これまでにも多くの行事を行ってきている。

「というわけで、最後に君達の意見を聞きたい。生徒の代表としてね」

ここに集まっているのは生徒会メンバー。いわば生徒の代表なのだ。学校側も生徒の意見も聞いておきたいのだろう。

「そうですね。私はやってみたいと思いますが・・・。他のみんなはどう?」

美紅が生徒会メンバーを見回し、最後に耕太を見た。耕太をはじめとする生徒会メンバーは小さく頷いた。皆一様に賛成の意を表した。

「みんなは概ね賛成のようです。他の生徒はどうかわかりませんが」

「そうか。じゃあ明日また聞くとしよう。じゃあ今日はこれで解散」

「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」

結局、今日のうちに決まることはなく、決議は明日ということになった。


「ねえねえ耕太君」

「はい?どうしました美紅先輩?」

帰宅準備をしていた耕太に美紅が話しかける。

「耕太君は遠足の案に賛成?」

「わし自体は賛成ですよ?でも、ほかの生徒がどうかはわかりませんよね」

「そうだよね~。私も賛成なんだけど、ほかの生徒のことまではわからないからね」

思案顔を浮かべる美紅。

「じゃあ、生徒会メンバーが在籍しているクラスに賛成の数を調べてきてもらいましょうか」

「そうだね。私も聞いてみるね」

「わしも聞いてみます」

その後、話の内容を生徒会メンバーに説明し、実践してもらうことになった。



翌日。二年緑地土木科の教室。現在は朝のSHRの時間だ。

耕太は昨日相談したとおり、クラス内での賛成・反対の人数を調べていた。遠足の案があがっているということを説明すると、反応は皆一様だった。

「やりたい!賛成賛成!」

初めに賛成の意を表したのは哲也だった。耕太も哲也ならば必ず賛成してくるだろうと思っていた。哲也の言葉を皮切りにその他の生徒も、

「俺も賛成!」

「僕もー!」

「俺もじゃ!」

と賛成の意を表す言葉を発した。終わってみれば賛成四十。クラス全員が賛成だった。賑やかでお祭り好きなクラスであると共に、社会奉仕活動でもわかるように、子供が好きな者ばかりな為このような結果になったのだろう。


その日の放課後。他のクラスの結果を見てみても、多くの生徒が賛成の意を表していた。

「ふむ。して、生徒の反応はどうだった?」

先生が美紅に結果を聞く。大体予想はついているようだが。

「はい。多くの生徒が遠足について賛成しています。生徒の方は実施に賛成ということで構いません」

「うむ、わかった。それでは実施の方向で進めさせてもらう。日時に関してはまたおいおい話していこう」

「「「「「「はい!」」」」」」

こうして、畑農と畑南小学校の合同遠足案がここに可決された。

「そういえば、場所はどこに行くんですか?」

「うむ。畑丘陵公園だ」



季節も五月となった。暖かい日が続くようになり、時折暑いと感じる日もあった。今日は比較的過ごしやすいだろう。

そんな日、畑農生約八百人は近くの小学校。畑南小学校へと来ていた。

「畑南っ子の皆さん、畑農生の皆さんおはようございます!」

朝礼台に登って話をしているのは畑南小学校の校長だ。畑農の校長ほどではないがそれなりに長い話をしていた。畑南小学校と畑農の生徒、合わせて約千六百人程が集まった校庭の景色は圧倒されてしまう。耕太は若干酔いかけていた。

「うぅ・・・」

「おにいちゃん大丈夫?」

「大丈夫だよ。ありがとうね」

「うん!」

酔いかけていた耕太を心配してくれたのは、ひとりの少女だった。この子は今回緑地土木科が受け持つ二年二組の少女だった。畑農と畑南小学校の全校生徒はほぼ同じであるため、大体の生徒がひとりの児童を受け持つこととなった。そして、今回耕太が受け持つこととなった児童がこの少女だということだ。名前を椎名香織(しいなかおり)という。歩くたびにぴょこぴょこ揺れる小さなツインテールが可愛らしい。身長も小さく、どことなく美紅のような子だった。


やがて、開会行事も終了し続々と目的地へと出発していった。

耕太の前には哲也。一人の少年を連れている。後ろには麗華。一人の少女を連れていた。そして、耕太の横にはしっかり手をつないだ香織がいた。

「大丈夫?つらくない?」

「うん!大丈夫だよおにいちゃん!」

香織は耕太の問いかけに全て笑顔で返してくれていた。耕太もその笑顔を見れることが嬉しいらしく、終始顔が綻んでいた。

「耕ちゃん本物のおにいちゃんみたいだね!」

「そ、そうか?わしは妹はいないからな~。よくわからないんだけど・・・」

耕太に妹はいない、このような小さな子と遊ぶこともあまり多くない。あるとしても、秋穂くらいだ。更に、耕太はおにいちゃんと呼ばれることを痛く気に入っているようだ。その為、このように純粋におにいちゃんと呼んでくれる子を溺愛してしまう傾向にあった。

「よく気にかけていてすごいと思うわ」

後ろの麗華も耕太を褒める。

「そう?南さんも結構面倒見がいいと感じるけど?」

「そ、そんなことないわよ」

麗華は少し顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。麗華も先程からこまめに少女の体調を気にしていた。麗華は姉はいても妹はいない。その為、なにかと気にかけてしまうのだ。彩花がそうしてくれたように。

「ははは!みんな子供が好きだね~。あ、水飲む?」

そうは言うが、哲也自身人のことを言える立場ではなかった。

それは緑地土木科全員に言えることで、周りを見てみれば緑地の多くの生徒が耕太達と同様に、顔を笑顔でいっぱいにしていた。


そして和やかな雰囲気のまま、一行は目的地である畑丘陵公園へと到着した。畑南小学校から約三十分。小学生の低学年もいるのだ。この程度の距離が妥当だろう。

この畑丘陵公園は丘陵地にある。子供が楽しめるアスレチックや遊具、更には動物園・水族館を備えた総合テーマパークのような場所である。畑市民にとっては割とポピュラーな場所である。

音楽堂などもあり、多くのアーティストがライブを行ってきた場所でもある。

現在の時刻は十時。これから昼間では自由時間だ。昼になれば各自で食事。その後再び自由時間である。基本自由時間でこの遠足は構成されていた。

「よーし。じゃあどこ行こっか」

「「「動物園!」」」

哲也が三人の少年少女に問うと、皆同じ場所を希望した。一番楽しみにしていたのだろう。

「耕ちゃん達も動物園でいい?」

「もちろん」

「構わないわ」

「よし!じゃあ行こう!」

「「「「「おー!」」」」」

六人は意気揚々と動物園に向かった。


やがて六人は公園の南側にある動物園へとやってきた。道中で児童を全力で追い回す花や小学生と見分けのつかない美紅を見たが全力でスルーをした一行であった。

「おー!広いなー!」

哲也が驚きの声を上げる。麗華は受け取ったパンフレットを凝視していた。

この動物園は公園に併設された物にしては広く、動物の種類も豊富なため畑市外、更には県外からも観光客がやってくるらしい。

「さーて!どこを見に行こうか」

「ライオン!」「トラ!」「キリン!」

耕太が問いかけると元気に答える少年少女。

「ぞうさん!」

調子に乗って哲也も答える。

「犬、猫」

「「「「「・・・はい?」」」」」

麗華の言葉に五人は耳を疑う。我に帰った麗華はみるみる顔を赤く染める。

耕太はもしや?と思い先程まで麗華が見ていたパンフレットを見てみる。

「・・・わんにゃんワールド」

見事にそのようなエリアの名称があった。ご丁寧にわんにゃんワールドの主人公、【ニャンコさん】のイラストまで添えて。もちろんパクリなどではない。公式にコラボしているのだ。この動物園には元々わんにゃんワールドというエリアがあった。そして、わんにゃんワールドが放映され始めた時最初にコラボをし始めたのがこの動物園というわけだ。麗華はこのことを知っていたのだ。パンフレットを見て確かめていたのだろう。パンフレットを凝視していたのはそのためだ。この動物園はわんにゃんワールドファンの中では聖地と呼ばれる場所。その為、つい声に出てしまったのだ。

「よ、よーし。まずは犬と猫に会いに行こうー。いいかなー?」

耕太は若干棒気味に少年少女に問いかける。

「「「う、うん」」」

少年少女も困惑しながら頷いた。

「よし!行こうみんな!」

哲也は早口でまくしたてるように告げ走り出した。皆もそれについていく。

「いっそころしてえええええ!」

麗華はそう叫びながらも先頭を独走していた。


続く

どうもりょうさんです!1学期編~遠足ワン!~をお送りいたしました!いかがでしたでしょうか!

ある日突然降りてきた遠足回。地味に文字数が伸びてしまい、分割することとなりました!ほのぼのとした回にしたいと思います!

何故か自分も楽しく書かせていただいております!最近行き詰まっていたので、この遠足回が見事救世主になってくれました!それではまた次回、遠足つー!でお会い致しましょう!


8500PV超えました!ありがとうございます!これからもよろしくです!


作者のもうひとつの小説「こんなの家具なわけねえ!」も読んでいただけると嬉しいです!久しぶりに更新しました!


ブクマ、感想など頂ければ作者は泣いて喜びます

なにか、問題、ご要望があればメッセージなどいただければ嬉しいです!

この小説がお気に召しましたら評価の方もお願いいたします


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