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農業高校は毎日が戦争だぜ  作者: りょうさん
春休み編
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春休み編~幼馴染とのひと時~

春休みも残すところ一日となった春休み最終日。耕太はかねてより約束していた、静音との三回目のデートのため、駅前に立っていた。

「・・・なんでわざわざ待ち合わせなんだろ」

耕太のこの言を静音に聞かれれば、わかってないな~と言われるだろう。

「眠い・・・」

耕太はあくびをしながら呟いた。

昨夜、冬休みより更に少ない課題を終わらせていた耕太はそれ程眠れていない。

「まだかな・・・」

「もういるよ~」

「うお!?」

耕太の後ろに現れたのは、水色で長袖の服にクリーム色のカーディガンを羽織った静音がいた。

「いつからいたんだよ」

「えっと~・・・。ねむい・・・くらいから?」

「さっきだな」

「さっきだよ~♪」

漫画やラノベなら「・・・なんでわざわざ待ち合わせなんだろ」からと答えるだろうが、静音はそう答えなかった。本当にそこから居たのだろう。

「まあ、いっか。行こうか」

「うん!」

「・・・おい」

「なぁに?」

耕太の右腕には暖かく柔らかい感触のものが押し付けられる。

「・・・なんでもない」

「えへ♪」

耕太はそっぽを向くが静音は笑顔を浮かべるだけ。確信犯だ。


耕太と静音は駅の近くにあるカラオケ店へとやってきていた。

「久しぶりだな」

「ん~?」

耕太は懐かしむようにカラオケルームを見ながら呟く。

「昔は親父さん達とよく来てたろ?」

「そういえばそうだったね~」

歌うことを趣味に挙げるほどの歌好きである耕太は、三郎や皐月、静音の兄である純也や静音とよくカラオケに来ていた。純也が大学に進学してからはあまり来なくなっていたことから、懐かしく感じたのだ。

「耕太はあの頃から歌が好きだったよね~」

「まあな。母さんも好きだったしな」

「あ~。そういえば私も子守唄を歌ってもらったことある~。あれ聞くとすぐ寝れるんだよね~」

耕太の母である雅子は、よく子守唄を耕太や静音に聞かせていた。耕太はその子守唄を聞くのが楽しみであった。その為、耕太が歌を好きになるのは必然だった。

「わしもだよ。さ!歌うか!」

「おーう!」

静音は早速一曲目を入れる。明るいポップ調の曲だ。静音らしい元気な歌だった。


「うーん!結構歌ったね!」

「そうだな~。久しぶりだったし楽しかった」

二人はカラオケ店をあとにすると、伸びをする。

「それは私といたから?」

「まあ、それもあるんじゃないのかね~」

「もう!適当だなー!」

静音はニヤニヤしながら耕太に問いかけたが、耕太の反応に不満を表す。

「はいはい」

「ふにゃ!?」

耕太が静音の頭を撫でると可愛い声が静音から漏れた。

「・・・もう。耕太のバカ・・・」

静音の顔は真っ赤だ。だがそれに気づかないまま耕太は歩き出していった。


カラオケが終われば次は買い物だー!と両腕を上げながら訴える静音に連れられ、耕太は電気屋へと連れてこられていた。

「何買うんだ~?」

「えっとね~・・・。ドライヤー」

「壊れたのか?」

「うん。ちょっと前から調子悪かったんだけど、ついに寿命がきたみたい」

「なるほど」

耕太は静音の長い髪を見る。確かにドライヤーがなければ不便だろうと耕太は思った。

「どれにしようかな~」

静音はあれでもない、これでもないとドライヤーを手に持っては棚に返している。

「ふむ」

耕太は少々暇になってきたようだ。辺りを見回していた。

「・・・あ」

耕太の目に入ったのはカメラコーナー。それだけなら何も問題はなく、ほかの場所へと目を向けるだろう。だがそこには最近知り合った後輩が仲良くカメラを見ていた。

「「あ」」

あちらの二人も気がついたようだ。もちろん、紗奈と智である。

「川島さん!」

紗奈は満面の笑みを浮かべながら耕太の方へと走ってくる。その後ろには明らかに不機嫌な智がいた。

「遠藤さん?なんでここに?」

「はい!カメラを見に!」

大好きなカメラを見ていたからだろうか、若干テンションが高い。静音も気づいたようで、ほぇ?と声のする方へ体を向ける。

「お、シズ。決まったか?」

「あ、うん。決まったよ!・・・えっと、その子達は?」

静音は紗奈達の方へ視線を向ける。

「ああ、この子達は明後日から畑農に入学する新入生だよ」

「こんにちは!食品科に入学します!遠藤紗奈です!」

「おー!畑農の後輩ちゃんか!可愛いね~♪」

「ほぇ!?可愛い・・・」

顔を真っ赤にして照れる紗奈。

「・・・耕太。何この子、超可愛いんだけど」

「落ち着け」

静音から若干危ないものを感じた耕太だった。

「そっちの子は?」

静音の視線は智へと向かう。

「遠藤智です。緑地土木科に入学します」

(あれ?)

智は礼儀正しく自己紹介をする。耕太は自分との態度の違いに違和感を覚えた。

「ほうほう。耕太の直接の後輩だね~」

「ああ、そうだよ」

「緑地は色々と大変だろうけど、頑張ってね」

「はい。ありがとうございます。・・・けっ」

智は静音から耕太へと視線を移し、明らかに嫌そうな顔をした。

(こいつ!くっそ!わかったぞ!こいつ静音は女子だから、遠藤さんに近づくことはないとわかって、わしとは態度変えやがったな!)

さすがシスコンの智である。

「・・・シズ。遠藤君はシスコンだぞ」

「ほぇ?」

耕太の言葉に首をかしげる静音。そして、顔を青くしていく智。

(少しくらいいじめてもいいよな。だってわし先輩だし)

「・・・ほーう♪」

静音は徐々に黒く悪い顔になっていく。

そこから先、智は静音の壮絶なイジリに捕まってしまった。


「そういえば、シズの紹介してなかったな」

「おー!そうだったねー!」

静音は手をパンと叩いた。

紗奈の後ろではゲッソリとした智がいた。

「そういえばそうですね!」

紗奈はまるで気にしていない様子だ。

「こいつはわしの幼馴染で、生活科二年になる・・・」

「三島静音だよー!」

「先輩でしたか!よろしくお願いします!」

先程後輩ちゃんかー!と静音が言っていたのだが、覚えていないようだ。意外と天然のようだ。

自己紹介が済んだあとは、耕太が二人と出会った経緯を静音に話した。

その後、用事があるからと紗奈達は帰っていったが、静音は遠藤姉弟を気に入ったようだ。

「可愛い姉弟だったね~」

「遠藤君の方はあまり得意じゃないけどな」

「だと思ったー♪」

「気づいてたのか」

「あからさまだよ~♪」

耕太は後頭部を掻く。

「仲良くなれそうか?」

「もっちろん♪」

「そうか。よかったよ」

耕太は笑顔で紗奈達が歩いて行った方を見つめた。


気づけば夕陽が空へと浮かんでいた。

耕太達は村へと戻ってきていた。

「もうすぐ桜も散り始めちゃうね~」

「そうだな」

二人は村一面に咲く桜を見ていた。

「あ~あ、三回目のデートが終わっちゃった~」

「別に約束がなくたって連れ回すくせに」

「えへへ♪そうかも~」

どうにも憎めない笑顔を浮かべる静音。

「明日から学校だね」

「ああ。そうだな」

「楽しみ?」

「学校が楽しみっていう子供はあまりいないとは思うが、わしは楽しみかな」

耕太は優しい笑顔で答えた。

「あ、耕太が笑った」

「わしは割と笑ってる方だと思うけど?」

「そうだね~。前の耕太からは考えられないほどにね~。でも、私は時々見せるその優しい笑顔の方が好きかな」

「うーん。わかんね」

「えへへ♪私だけがわかってればいいの」

「そんなもんか?」

「そんなもんだよ♪」

静音は手を組み目を閉じてそういった。

「私は、耕太君も耕太も好きだから」

「・・・?どういうことだ?」

「おっしえな~い♪」

「なんだそりゃ」

耕太は困った顔をするが、静音はただ笑うだけ。しかし、耕太はこのような時間さえも愛しく思えた。そして、このような時間が作れることに幸せを感じ、それを可能にしてくれた者達に感謝した。

「かえろっか」

「ああ、そうだな」

耕太と静音は互いに笑顔で帰宅していった。


続く

どうもりょうさんでございます!春休み編~幼馴染とのひと時~をお送りいたしました!

さて、今回で春休み編終了でございます!

次回より、二年生編へと突入いたしますよ!一年生編にはなかったイベントや行事があるかも!

新キャラも出るよ!たぶん!

そんな盛りだくさんになる予定の二年生編、お楽しみに!

それではまた次回お会い致しましょう!


ユニーク2000人超えました!いつも読んでくださっている皆さん!これからも各キャラ愛してやってください!


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