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農業高校は毎日が戦争だぜ  作者: りょうさん
春休み編
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春休み編~桜の舞う村~

「ありがとう」

彩花は耕太と麗華に見送られ、東京へと旅立っていった。


電車が通り過ぎた線路を見つめる耕太と彩花。

「やっぱ寂しい?」

「当たり前じゃない。やっと仲直りできたのよ?」

「そうだよね」

耕太は線路をまっすぐ見つめる麗華の言葉に微笑を浮かべる。

「でも、これは姉さんが決めた道。私に止める権利もないし、止めるつもりもない。それに、姉さんだって今更道を変えるなんてしないわ。背中を押したのが川島君なのだから」

「なんでわしが関係あるの?」

耕太は首をかしげる。

「あなたが姉さんの【想い人】だからよ」

耕太は顔を赤くし、そっぽを向く。

「私は・・・」

麗華は耕太に向けていた視線を線路に戻し、口を開いた。

「私は進む。姉さんが進むように、私も前を向いて進むわ。そして、いつか姉さんを追い抜く」

「・・・南さんならできそうだね」

嘘は言っていない。耕太は本当に麗華なら出来ると思っていた。

「ふふ、当たり前よ。それに・・・」

南は少し間を空け、少し顔を赤らめながら下を向き、もじもじしながら口を開く。

「姉さんの想い人は私の想い人でもあるのだから・・・えっと、その・・・」

完全に俯いてしまった麗華は意を決したように顔を上げた。

「姉さんには渡さない。あなたの隣には必ず私が立つわ!」

「・・・!」

耕太は再び顔を赤くしてしまう。

「え、えっと・・・。が、がんばって?」

完全にかける言葉を間違えている耕太。

「・・・川島君ってほんとにずるいわね。普段はこんなにあたふたするくせに、いざという時はかっこよくなるんだもの・・・」

「えっと・・・」

「でも・・・」

「・・・?」

「そんなあなただから私は好きになったのかもしれないわね。どうしようもないくらいに」

麗華は思わず見とれてしまいそうな優しい笑顔を向けそう言った。

耕太はやはり何も言えない。

「もう・・・。ふふ。さあ!帰るわよ!」

「あ!ちょ!」

麗華は耕太の腕を取り駆けていった。


二人が駅へと帰ると哲也だけが待っていた。

「なんだ。帰らなかったのか?」

「耕ちゃん達を待ってたんだよ~。耕ちゃんこそ帰らなかったの~?」

「まあ、お前が居るような気がしてな」

「さすが耕ちゃんだね~」

二人は笑みを浮かべた。

「で?ちゃんとお見送り出来たの?」

「たぶんな」

「そっか。南のお嬢も?」

「ええ」

「そっかそっか♪」

哲也は嬉しそうな表情をした。

「悪かったな。手紙任せちゃって」

「いいんだよ。あの役目は俺っちが一番適任だと思うしね~」

「私からもお礼を言うわ。ありがとう」

「いいっていいって♪まあ、今度ジュースでもおごってもらおうかな♪」

哲也はそう言って笑った。

今回の計画は哲也が引き金となるものだった。哲也が手紙を渡さなければ成功しないからだ。偶然外を見るなんてことも少ないだろう。

ある程度彩花とも面識がある哲也なら適任だろう。

「じゃあ、耕ちゃん達も帰ってきたし、俺っちは帰ろうかな~」

「わしも帰ろうかな」

「じゃあ、私も」

そう言って3人は駅で別れることとなった。


帰宅途中、耕太の携帯に一通のメールが届いた。

【今日はありがとう。 南麗華】

シンプルなメールだった。シンプルすぎるが、それが南麗華という人間の一部だろう。耕太は少しおかしくなってふっと笑った。


ある日、耕太は少し散歩に出ていた。川沿いに歩いていく。するとそこには桃色の花を咲かせた大樹がそびえ立っていた。

「桜だ」

川沿いには多くの桜が植樹されていた。その多くが花を咲かせていた。

「ん?」

その桜の下に立ち、桜を眺める女の子と男の子が耕太の目に入った。

「ここら辺じゃ見ない子達だな~。観光客かな?」

耕太の住む村はこの時期になるとそこら中で桜が咲く。その為、花見客や観光客の穴場スポットとされているのだ。耕太はその観光客だと思った。

どちらも中学3年生、もしくは高校1年生位に見えた。

するとその二人は一眼レフカメラを構え、桜へと向けた。

「写真か~。確かにきれいだもんな」

二人はお互いに撮った写真を見せ合っていた。その表情は笑顔で、穏やかなものだった。

「ここの桜は綺麗だよね」

「「え?」」

耕太は思わず二人に話しかけていた。

「あ、ごめんね。わしは、この村に住んでる地元民なんだけど、君達みたいな観光客は少なくて、つい」

観光客や花見客といっても結構年を食った者が多いのだ。

「いえ、大丈夫です。そうですね。ここの桜、綺麗です」

女の子の方が耕太に答えてくれた。

長い髪をしていて、整った顔をしている。綺麗な子だった。

「ここの桜はね、わしのおじいさんやその他の人が植えて、大切に育てた桜なんだよ?」

「この村全てですか?」

「そうだよ。なんでも、この村を何かで埋め尽くしたいって思ったんだって。その時、真っ先に思い浮かんだのが桜だったらしいよ」

「そうだったんですね。この村のいたるところに桜が植えてあるのにはそんな理由があったんですね」

「そうだよ。で、これにちなんで、この村の名前が舞桜村(まいおうむら)になったんだ」

話を聞いた女の子はふむふむと頷いていた。

「あ、ごめん。わしは川島耕太って言うんだ。4月から高2になるよ」

自分が名乗っていないことに気づき、慌てて名乗る耕太。

「私は、東の方から来ました、遠藤紗奈(えんどうさな)です。こっちは双子の弟の智(さとし)です。両方とも4月から高校生です」

「双子だったのか」

確かにどこか似た雰囲気があった。

そして、さっきから弟の方は口を開かない。

「智、ちゃんと挨拶しなさい」

「紗奈は俺のだからな!近寄るな!しっし!」

「・・・え?」

黒髪で短髪の男の子、智はいきなり耕太に罵声を浴びせてきた。

(紗奈は俺の・・・?あ・・・シスコン・・・)

「す、すみません!この子極度のシスコンで!」

(やっぱシスコンなんだ・・・)

慌てて謝る紗奈。

「いや、大丈夫ですよ。罵声にはなれてますから」

「な、慣れ・・・?」

紗奈は不思議そうに首をかしげる。

(沢山浴びてきたぞ・・・。シズのストレートな罵声、南さんの追い詰め系の罵声、美紅先輩の何故かこちらが罪悪感を持ってしまう罵声その他多数・・・。あれ?涙出てきちゃった~)

「か、川島さん!?」

「あ、ああ・・・大丈夫だよ」

紗奈はいきなり涙を流し始めた耕太に驚く。

耕太は頬を伝った涙を拭い、大丈夫だと告げる。

「そういえば、カメラ好きなの?」

耕太は首からぶら下げている一眼レフカメラに視線を移す。

「あ、そうなんです。父が好きで、昔からよく触らせてもらってたんですけど、私ものめり込んじゃって」

えへへと照れ笑いを浮かべる紗奈は可愛かった。

「今回も友達からここの事を聞いて来たんです。桜がすごいからって勧められたんです」

「なるほど。じゃあ、弟さんもカメラ好きなのかな?」

耕太は視線を智へと移す。

「別に?」

「・・・」

その答えはそっけないものだった。

「えっと、智はあまりカメラのことは好きではないんです。今回もついてくると言って聞かないので連れてきたんですけど・・・」

「な、なるほど・・・」

(凄まじいシスコンっぷりだな・・・)

耕太はそう思った。

「なんだよ。悪いのかよ」

「別にそんなことはないよ?」

「・・・けっ」

(こやつ、どうしてくれようか・・・)

耕太も少しイラッときたようだ。

「すみませんすみません」

紗奈がすかさず謝ってくるので強く出ることはできない。

「こんな奴に頭下げんなよ」

「あんたのせいでしょ!」

紗奈の拳骨が智の頭に落ちる。

「いって!なにすんだよ!」

「うるさあああい!」

(仲は良いんだろうな)

耕太は二人を見てそう思ったのだった。

紗奈は別れる最後の最後まで頭を下げ続けていた。智も態度を変えることはなかった。

二人が去ったあと、耕太は桜を見上げる。

「春だね~」


その夜、耕太の携帯にメールが届く。

【明後日お花見をしましょうぜ!場所は畑農近くの公園で!各々食べ物、飲み物持ち込みOKだぜ!んじゃ、よろしく! 下永哲也】

「偶然か、それともこいつは狙っているのか?」

耕太は笑いながらも【了解】と返信した。


続く

どうもりょうさんでございます!春休み編~桜の舞う村~をお送りいたしました!

さてさて、今回新キャラが登場いたしました!このタイミングでの登場で、4月から高校生・・・もうお分かりですよね?

紗奈ですが、基本的に面倒見のいい子です。

シスコン智を怒りながらも突き放すことはありません。ちゃんと面倒を見ています。いい子であり、苦労人ですね。

そして智、この子はお姉ちゃん大好きっ子です。紗奈に近づく男に対しては厳しく当たります。それは耕太を少しイラっとさせるほどです。

これからの二人の活躍に期待です!

それではまた次回お会い致しましょう!


作者のもうひとつの小説「こんなの家具なわけねえ!」も読んでいただけると嬉しいです!


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なにか、問題、ご要望があればメッセージなどいただければ嬉しいです!

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