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農業高校は毎日が戦争だぜ  作者: りょうさん
3学期編
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3学期編~姉妹でありライバルであり~

「どうせなら、今から話さない?」

そう言って耕太と南の前に現れたのは、彩花だった。

「姉さん!なんでここに!」

「そんなの別にいいじゃない。麗華ちゃんだって昨日つけてたんでしょ?」

「わ、わかってたの!?」

「わかってたわよ」

「くっ!・・・で、何を話すっていうの?」

南は一瞬顔をしかめたが持ち直す。

「・・・」

「・・・」

二人の間に沈黙が訪れる。

「私は・・・」

先に口を開いたのは南だ。

「私は悲しかった、悔しかった。大好きだった姉さんにあんな風に言われて・・・」

その言葉を聞いた彩花は顔をしかめ、苦しそうな表情をする。

「そしてなにより・・・寂しかった」

「・・・!」

彩花は驚きの表情を浮かべる。

「いつも味方だった姉さんが遠くに行ってしまった。自分の味方ではなくなったと思って寂しくなった!」

南の悲痛な声が響く。

その一言一言にあらゆる感情が乗せられている。

「あの時私は・・・姉さんに見捨てられたと思った」

彩花の顔は下がってしまった。

「だけど・・・」

「・・・?」

南はそう続けた。

「一方では感謝してる。あの時の私はこう思ったの。【姉さんに追いつけば姉さんはまた私の味方になってくれる】ってね。それから私はそれまで以上に頑張った。川島君の言ったように少なくとも成長できたと思うわ。そういう面では感謝しているの」

南は顔をしっかり上げ、まっすぐ彩花を見ていった。

彩花はその顔を見て肩を震わせた。

「そういうとこだよ・・・」

「姉さん・・・?」

「私は麗華ちゃんのそういうところが羨ましかった!」

「・・・!?」

彩花は大きな声を上げる。

「麗華ちゃんのそうやって頑張れるところが羨ましかった!自分なりに頑張って、必死に追いかけてくる。そんな麗華ちゃんが羨ましくてしょうがなかったの!同時に怖かった!後ろから迫ってくる麗華ちゃんが怖かった!だからあの時あんな風に言ってしまったの・・・」

「姉さん・・・」

最後は消えりそうな声だった。

再び二人の間に沈黙が訪れる。

「でも・・・」

口を開いたのは彩花だ。

「私も麗華ちゃんには感謝してるところもあるよ」

「・・・!?」

「今思えば、ああやって迫ってきてくれた麗華ちゃんがいてくれたからこそ私は成長できたと思う。追いつかれまいと必死に頑張った結果だと思う。そういう面では感謝してる。昔はそう思えなかったけど」

「・・・」

(ああ、やっぱりこの二人は・・・)

ここまで黙っていた耕太は思った。

やはりこの二人は姉妹だと。

そして同時に、

(ライバルだ)

お互いに高め合うライバルだと、そう思ったのだった。

(この二人は、自分より大きい存在を追いかけること、迫ってくる存在に負けないと思うことで自分を成長させていたんだ。そしてそのことを二人は今、自分でもわかっている)

よく時間が解決してくれるという言葉がある。

この言葉を否定する者も多いだろうが、この二人に関しては時間をかけ、自分を見直すことで解決の一歩が踏み出せている。

あと一歩。

あと一歩の歩みで解決する。

その歩みを踏み出すには何か後押しが必要だ。

その後押しを出来るのはだれかの存在である。

この二人にとっての誰かとは・・・


「私、耕太君が好き」


そう言い放ったのは彩花だ。

「・・・!」

「へ?」

耕太は驚いた表情を隠すことができない。

「もうそろそろ頑張るのも疲れてきた、そう思ってた。もう麗華ちゃんに追い抜かれてもいいかなって思ってた。だけど!誰にも渡したくない人が私の前に現れたの。それが耕太君」

彩花は南から目を離さず、しっかりと見つめた。

「・・・私だって」

「え?」

耕太は疑問の声を上げた。

「私だって・・・私だって川島君が好き!誰にも渡したくなんてない!いつまでも・・・いつまでも一緒にいたい!私の笑顔を好きって言ってくれた!私のことを仲間と言ってくれた!そんな川島君が・・・私は川島君が好きなの!」

南の顔は赤く、涙が溢れていた。

(ど、どうなってるんだ!?なんでわしが出てくる!?)

耕太はパニック状態だ。

「麗華ちゃんみたいな無愛想な女の子が耕太君に釣り合うわけがない!おっぱいだって私のほうがあるし!」

「姉さんみたいないい加減な性格な人こそ釣り合わない!それにそんな脂肪の塊なんていらないわよ!デブよ!デブ!」

「デブじゃないわよ!女の魅力よ!」

「そんなの女の魅力じゃないわ!女の魅力は愛嬌よ!」

「いつの時代よ!ていうか、麗華ちゃんに愛嬌なんてないでしょ!」

「う、うるさいわね!」

二人の言い合いはどんどん幼くなり、激しさを増す。

「あ、あのー・・・二人共落ち着いて・・・」

耕太は少しなだめようとする。

「「耕太君|(川島君)は黙ってて!」」

「は、はいいい!」

付け入る隙などなかった・・・


「はぁはぁはぁ・・・」

「ふぅふぅ・・・」

散々言い合った二人は肩で息をしていた。

「れい・・・かちゃん・・・もう、喧嘩なんてバカバカしくなってきたんだけど・・・」

「奇遇ね姉さん・・・わ、私もよ・・・」

二人はとぎれとぎれに話す。

「お互い、耕太君は譲りたくないってことよね・・・」

「ええ、そういうことね」

「・・・」

「・・・」

二人はお互いの目を見つめ合う。

「あー!もうバカバカしい!お互いを牽制しあってたのがバカみたい!お互いに言いたいこと言ってすっきりした~!」

「私もだわ。今考えるとくだらないわ」

二人は脱力したように座り込む。

「・・・麗華ちゃん」

「なにかしら姉さん」

「仲直り・・・しよ?いつまでもこのままは私も寂しい」

「・・・ええ、そうね」

二人はお互いの手を取り合う。

「ごめんね、麗華ちゃん」

「私こそ・・・ごめんなさい。姉・・・お姉ちゃん」

「「あああああああ!」」

二人は抱き合い涙を流した。

ごめんね。

ごめんなさい。

麗華ちゃん。

お姉ちゃん。

二人の女の子は姉妹へと戻った。


二人はどれくらい泣いていただろう。

その間耕太は後ろを向いていた。

「ほんとにごめんね」

「いいのよ、お姉ちゃん」

何度目かわからない謝罪。

二人はだいぶ落ち着いたようだ。

「でも、耕太君のことは諦めないから・・・」

「私だってそうよ」

「「・・・ふふ」」

二人は姉妹となり、お互いをライバルと認めた。

「「耕太君|(川島君)」」

二人は耕太を呼ぶ。

「解決した?」

いつものように笑顔を浮かべる耕太。

「色々と迷惑かけてごめんなさい」

「南さん。仲直りできてよかったね」

「・・・ええ!」

南は目を赤く腫らしながら笑顔を見せた。

あの笑顔だ。

「こ、耕太君・・・ごめんね」

「謝ることないですよ。・・・仲直りできてよかったですね」

「・・・うん!」

彩花は上辺だけの笑顔ではない笑顔を浮かべた。

思わず見惚れるほどに眩しかった。

「「私は・・・」」

「・・・?」

「「あなたを誰にも渡したくないです」」

「えっと・・・その」

ここまではっきり告白されれば流石にわかってしまう。

「今は・・・誰とも付き合う気はないです。だから、あなたたちとも付き合えません」

「「・・・」」

二人は一瞬俯く。

しかし、

「待ってる。いつか、その時が来るまで!私はそれまでアタックし続ける!覚悟しといてね。耕太君♪」

「・・・怖いですね」

耕太は苦笑いを浮かべた。

「私も・・・諦めない。待ってる・・・から」

「いつになるかなんてわからないよ」

「それでも」

「そっか」

耕太は後頭部を掻いた。

「「覚悟しておいてね。川島君|(耕太君)」」

「はは・・・」

耕太はやはり、苦笑いを浮かべるしかなかった。

その後、二人は手をつなぎ帰っていった。

その光景は姉妹そのものだった。

遊園地で止まったままの思い出は、今再び動き出した。


その夜。

耕太の携帯に一通のメールが届く。

【今日はありがとう。あれから、姉さんとよく話をしたわ。私の知らない姉さんがそこにはいた、姉さんは私が目を背けていたうちにすごく変わっていたみたい。それを伝えたら、姉さんも同じことをいったわ。やっぱり私達は姉妹なのね。ほんとにありがとう。大好きよ。愛しているわ。 南麗華】

「・・・」

耕太は顔を赤くした。

主に最後の文を読んで。

少し身悶えた後、耕太はふと笑顔を浮かべる。

「少しは、後押しできたかな・・・」

そして耕太は返信ボタンを押す。


【わしはなにもしてないよ。】


続く。


どうもりょうさんです!3学期編~姉妹でありライバルであり~をお送りいたしました!

あっさり解決したと思う方もいらっしゃるかと思いますが、これが私の文才での精一杯です!

さて、物語はこれより卒業式へと向かってまいります。

別れの日は着々と近づいてまいります!

そして、新しい出会いも近づいてまいります。

もう少しでこの物語もひとつの区切りを迎えます、その後も続いては参りますが、これからも【農業高校は毎日が戦争だぜ】をよろしくお願いします!

それではまた次回お会い致しましょう!


作者のもうひとつの小説「こんなの家具なわけねえ!」も読んでいただけると嬉しいです!


ブクマ、感想など頂ければ作者は泣いて喜びます

なにか、問題、ご要望があればメッセージなどいただければ嬉しいです!

この小説がお気に召しましたら評価の方もお願いいたします


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