3学期編~別れの始まり~
新しい年を迎え、迎えた3学期始業式。
長期休業後恒例の宿題騒動は行われていた。
「ああああああ!間に合わねえ!やべえ!ああああ!」
「漢字の書き取りおわらねえ!なんだこれ!」
「うおおおおおお!ファイヤアアアアアアア!」
緑地土木科の教室内は混沌と化していた。
もちろん南は、その混沌の中に入ってはいないが、今回は耕太もその中に入っていない。
目の下にクマができているということはない。
ないのだが・・・
「川島君、どうしたの?その傷」
「えっと・・・まあ、誰かさんに殴られまして・・・」
耕太の顔には無数の傷跡があった。
もちろん、静音によるものだ。
あのあと、耕太はひどい目に遭っていた。
その内容は話すことができない程だ。
「あなたも、懲りないわね・・・」
「わしのせいなのかな!」
「そうなのではないかしら・・・」
南は呆れたように息を吐く。
「そういえば、哲也が来てないな」
「そうね、珍しいわね」
教室内を見回してみたが、哲也は見当たらなかった。
すると、教室の扉が開いた。
「ういぃーす・・・」
「お?哲也・・・!?」
教室に現れたのは、目の下にクマを作り、顔が少しやつれている哲也だった。
「どうしたんだよ!?」
「はは・・・ちょっとね・・・」
哲也は何があったのかを話し始める。
それは一昨日、耕太から電話があった後の話だ。
「ああああああ!宿題!どうしよう!あああああ!」
哲也は一人部屋で床の上を転がっていた。
「やっぱり甘奈に頼るしか・・・」
そして、哲也は甘奈に電話をかけたのだが・・・
(嫌です!もう哲也様なんて知りません!)
一発で断られてしまったのだ。
その後、何度か頼んだが甘奈の口からいつものように、【しょうがないですね】という言葉が発せられることはなかった。
「あああああああ・・・どうしよ・・・あああああ」
哲也は万策が尽きてしまった。
哲也が甘奈以外に頼める人などいなかった。
「こうなったらあああああ!」
哲也は意を決し、一人で宿題に取り掛かった。
しかし・・・
「もーだめだあああ!」
やはり一人ではできなかったようだ。
耕太は一人でもなんとかやり遂げるが、哲也はそうもいかないらしい。
それでも哲也は泣きながら宿題に取り組み、今日の朝までかかったらしい。
「やはり自業自得ね」
「ぐはああ!」
南は哲也の話を聞いて、きつい一言を哲也に投げかけた。
「え、えっと・・・どんまい!」
耕太も反応に困ってしまった。
哲也は涙を流していた。
その後、教室に熱井先生が登場し、宿題騒動はひとまず終結する。
ホームルーム中も宿題をしている者もいるのだが・・・
その後、始業式を行うために体育館へと向かった。
全員が体育館へと集合完了し、始業式が開始する。
耕太や美紅をはじめとする生徒会は、生徒の列の横へと整列していた。
「これより、3学期始業式を開式致します。一同、礼」
司会者の号令により全員が礼をし、始業式が開式する。
恒例の校長の長い話が終わったあと、生徒会長である美紅が壇上に上がり、挨拶をする。
「みなさん、今日から3学期が始まりました。3年生のみなさんにとってはあともう少しで卒業となります。この3学期を精一杯過ごしてください。1、2年生のみなさんも頑張っていきましょう」
美紅の挨拶が終わり、美紅へと暖かい拍手が送られる。
そう、この1月、2月を超えれば3年生は卒業。
しかも、2月からは自由登校となり、ほとんど学校には来ない。
農業高校は専門高校であるため、大学進学者にしても多くの者が、推薦入試や指定校推薦などを使うなどして、一般よりも早く進路を決める。
そのため、2月という早い時期から自由登校となる。
就職する者も多く、その比率は大体半々くらいだ。
3年生はこの3学期、ほぼ1ヶ月しか学校に来ないということになるのだ。
もちろん、今年の3年生も既に進路を決めている者がほとんどで、あとはセンター入試を受ける者のみとなっていた。
なにはともあれ、もう少しで3年生はこの学校から去ってしまうのだ。
始業式が終了したあとは、放課となる。
哲也は家で休みたいと言って帰宅、南も素早く帰宅した。
耕太は、生徒会室へとやってきていた。
「寒いですね~美紅先輩」
「そうだね~・・・」
耕太と美紅は生徒会室でぼーっとしていた。
別に行うべき仕事はないのだ。
なんとなくここにいるだけ。そんな感じだった。
「ホント寒いね~・・・あ!そうだ!」
「どうしたんです?」
美紅は何かを閃いたように手をポンと叩く。
「耕太君!目をつむってて!」
「目ですか?」
「そうだよ♪」
「わかりました・・・」
耕太は目をつむった。
すると、大きな音が聞こえ始め時折、美紅の「あうっ!」や「ふぇええ!」などの可愛い声が聞こえてくる。
「美紅先輩?大丈夫ですか~?」
「大丈夫だよ!・・・あう!」
「・・・」
一体何をしているんだ・・・耕太はそう思った。
そして、
「目をあけていいよ~」
「それでは」
耕太が目を開けるとそこには・・・
「こ、これは!こたつではないですかああああああ!」
生徒会室の真ん中にこたつが置かれていた。
それを見た耕太は大興奮だ。
「美紅先輩!これどうしたんですか!」
「ふっふっふ~調達してきたのだ~」
美紅は得意気に鼻を鳴らす。
「どこにあったんですか?」
「生徒会用具室」
「なんでそんなとこにあるんだあああああ!!」
耕太は美紅の口から発せられた場所に驚き、叫んでしまった。
「南先輩がもって来たやつを保管してたみたい」
「あの人は自由だなああああ!」
南姉のマイペースさを再認識した耕太であった。
「はぁぁぁ・・・」
「はぅぅぅ・・・」
二人はこたつの虜になってしまっていた。
人類の生み出した最高の産物、人を虜にし、人をダメにする最強の道具・・・それがこたつなのだあああああ!
寒い冬には必需品だ。
「耕太君・・・これはダメだよぉ・・・」
「確かにぬけ出せなくなりますね・・・」
「あぁん・・・こたつ・・・・」
美紅の声がだんだん甘く、とろけそうになる。
はたから見ると、なぜかエロい。
「耕太くぅん・・・」
「美紅先輩、エロいっす」
「ふにゃ!?エロい!?」
耕太のストレートな指摘に顔を赤くする美紅。
「だめだな~耕太君。ここは押し倒すところだよ~」
「「!?」」
突然、耕太と美紅以外の声が聞こえる。
「南先輩!?なんでここにいるんですか!てか!いつ来たんですか!」
「はっはー!私は神出鬼没だよ~」
「こわいわ!」
突然現れたのは南麗華の姉であり、前生徒会長である南彩花だった。
「細かいことは気にするな~!」
「この人は・・・」
はっはっはと笑う南姉を見て、呆れる耕太だった。
その頃、美紅は・・・
「お、お、お、押し倒す・・・ふぇぇぇぇぇ!!」
「真に受けないでください!」
南姉の言葉を聞いて顔を赤く染めていた。
美紅が落ち着いて、話を再開する。
「それで?何しに来たんですか?」
「もー耕太君!前生徒会長は生徒会室にきちゃいけないのー?」
南姉は少し拗ねたように言う。
「別にそういうわけじゃないですけど」
「ならいいよねー♪」
「もう好きにしてください・・・」
やはり耕太は南姉には勝てないようだ。
「まあ、実際のところは~現生徒会長と副会長の様子を見に来ただけだよ~」
「なら普通に入ってきてくださいよ・・・」
「面白くないじゃん!」
「面白さを求めるほうがおかしいよ!」
それを見た美紅はくすくすと笑っていた。
「ん~?どうしたの?美紅ちゃん」
「い、いえ、本当におふたりは仲がよろしいんですね♪」
美紅は笑顔でそういった。
「うん、そうだよ~仲良しだよ♪」
「そうでしたっけ・・・」
「あー!耕太君ひどーい!」
また言い合いになる二人。
「でも、美紅ちゃんも耕太君と仲いいよね~」
「え!?私なんて・・・」
「え・・・美紅先輩・・・」
耕太は捨てられた子犬のような目をする。
「ああ!嘘!仲いいよね!耕太君!」
慌ててフォローする美紅。
そのあたふたする姿はとても可愛かった。
それをみた耕太は笑顔を浮かべ・・・
「はは、可愛いな~美紅ちゃんは♪」
そう言って美紅の頭を撫でた。
「もー!またからかって!私先輩なんだよー!?」
いつものように可愛く怒る美紅であった。
「ほら仲いい」
「これはからかわれてるだけですーー!」
このような会話が下校時刻まで繰り広げられた。
二人に別れを告げた耕太は帰路へとついていた。
「うー寒いな~」
冷たい風が吹く中、耕太は自転車をこいでいた。
余計に寒い。
「もうすぐ1年か・・・」
耕太はこの道をここまでずっと走り続けていた。
その期間ももうすぐ1年。
全体の三分の一があと3ヶ月で終わろうとしている。
「早いもんだな~いろいろあったけど、楽しかった」
これまであったことを思い出していく耕太。
「これからもいっぱい思い出作んなきゃな!さて!寒いし早く帰ろ!」
これからに期待を膨らませながら、耕太は自転車のペダルを強く踏み込んだ。
3学期、開始。
続く
どうもりょうさんです!3学期編~別れの始まり~をお送りいたしました!
まず、更新遅れてすみませんでした!
色々と忙しくて時間が取れませんでした!
これからはもう少し頑張ります!
さてさて、ついに別れの学期である3学期へと突入いたしました。
南姉との恋はどうなるのか!南と南姉の関係はどうなるのか!
乞うご期待です!期待を裏切らないように、精一杯書かせていただきます!
文才のない僕の小説を読んでくださっている皆さん!いつもありがとうございます!
それではまた次回お会い致しましょう!
4500PV超えました!みなさんのおかげです!ありがとうございます!
作者のもうひとつの小説「こんなの家具なわけねえ!」も読んでいただけると嬉しいです!
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