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農業高校は毎日が戦争だぜ  作者: りょうさん
冬休み編
41/110

冬休み編~悪夢再び~

今日は1月5日。

明後日から3学期が始まる。


「・・・」

耕太の前にある机の上には、沢山のプリントやノート類。

まあ、なんというか。

宿題だ。

「・・・いやね、やろうとは思ったんだよ?でもさ!やる気が起こらなかったんだよ!むしろ忘れてなかったのを褒めて欲しいね!!」

一人逆ギレを始める耕太。

もちろん、誰かに教えてもらおうとした。

しかし・・・


南の場合。

「あの・・・宿題を・・・」

「自業自得」

撃沈。


美紅の場合。

「宿題・・・」

「もう知らないっ」

撃沈。


哲也の場合。

「しゅく・・・」

「あああああ!忘れてたああああ!!」

違う意味で撃沈。


静音の場合。

「宿題を・・・」

「いやだ」

撃沈。


このように、全て撃沈していたのである。

「ああああああああ!どうしよ!特に英語と数学!こんなの答えなしでできるわけないじゃないか!!」

耕太は考えた、何か、何か方法はないかと。

「やはりあの人に頼るしか・・・いや!でもあの人は・・・でも今はあの人しか!」

耕太が頭に浮かべた人物とは。


「お願いします!純也さん!」

「え!?なに!いきなり!」

耕太が頭を下げている人物の名前は、三島純也(みしまじゅんや)。

名前でわかるように、三郎と皐月の息子であり、静音の兄である。

隣の市にある農業大学に通っており、畑農の卒業生でもある。

将来、三郎の家業を継ぐため勉強をしている。

今は、隣の市で一人暮らしをしている。

「わしの宿題を手伝ってください!」

「俺じゃなくても静音に教えてもらえば・・・」

「断られました!」

「・・・しょうがないな、次からはちゃんとやるんだよ?」

「はい!そりゃ!もちろん!」

耕太は元気よく返事をした。

「耕太君は昔から返事だけはいいんだから・・・」

純也は苦笑を浮かべながら少しため息を吐く。


「ここは、xを代入するんだよ」

「なるほど!・・・できた!」

「お、あってる。正解だ」

純也の教え方はわかりやすいものだった。

「さすが、純也さん!わかりやすいです!」

「はは!ありがとう」

「純也さんは高校時代から頭が良かったの?」

純也の通う農業大学は、県内でも高い偏差値を誇る学校だ。

「いや、俺も最初はここまではできなかったよ」

「純也さんが?」

耕太は小首をかしげる。

今の純也からは想像できないからだ。

「ああ、高校時代の友達に教えてもらってここまでできるようになったんだよ」

「へ~。その人も頭が良かったんですね」

「まあね、生徒会長だったからね。でも、なんていうか・・・天然だったな」

「天然ですか・・・そっか、純也さんは副会長だったんですよね」

純也は畑農時代、生徒会副会長をしていたのだ。

「ああ、いつも会長に振り回されてたよ」

純也は笑みを浮かべながら話す。

「へぇ、なんていう名前なんですか?」

「ああ、確か今、妹が畑農にいたはずだな。名前は西野美桜って言うんだ」

「へ~。西野美桜さん・・・へ?・・・はぁ!?」

耕太は驚きの声を上げる。

思い返してみれば、美桜は現在大学2年生、そして純也も大学2年生だ。

考えてみれば分かることだ。

「どうしたんだ?大きな声を上げたりして」

「ああ、すみません。最近、その美桜さんと知り合いになりまして」

「へぇ!そうだったのか!西野は元気か?」

純也は目を輝かせる。

「ええ、元気すぎて手に負えませんよ」

「はは!あいつはそうだもんな!そうか、元気にしてるか」

純也は笑顔を浮かべる。

「あ、純也さん。ここがわからないです」

「ん?ああ、そこはな」

このようにスラスラと宿題は進み、夜の7時には宿題を終えた。

夏休みほど量が多くなかったのが幸いした。


「ふぅ・・・やっと終わった」

「お疲れ様、耕太君」

「ありがとうございます」

純也はお茶を出してくれる。

「もうこんな時間か、よし!耕太君外食に行こう」

純也は膝を叩き立ち上がる。

「外食ですか?」

「そうだ、おごってやるぞ~」

「でも・・・」

「いいんだ、行くぞ!そら!」

「うお!」

純也は耕太の腕を引っ張っていく。

純也も耕太の事情を勿論知っている。

純也なりの優しさなのかもしれない。


「どこに行くんですか?」

「う~ん、そうだな。よし、あそこにしよう」

道を歩いていた純也は手をポンを叩く。

そして、純也に連れてこられたのは一軒の喫茶店。

入店すると客の入店を知らせるベルが、カランコロンと鳴る。

客は誰も入っていなかったが、どこか落ち着ける雰囲気が漂っていた。

「いらっしゃいませ~」

奥から一人の女性が出てくる。

ウエイトレス姿で、髪はまとめているがおろせば長いだろう。

はっきり言ってすごく可愛い、街でナンパを受ける確率はほぼ100%だろう。

カウンターにはマスターらしきおじさんが立っている。

「2名様です・・・ね?って純也先輩」

「おう♪2名だ。来たぞ沙耶」

「お知り合いですか?純也さん」

「ああ、俺の彼女」

「・・・へ?彼女!?」

純也は笑顔を浮かべ、沙耶は顔を赤く染める。

「そ、神田沙耶(かんださや)」

「神田沙耶です。よろしくね」

「あ、よろしくお願いします」

耕太は頭を下げる。

「この子は妹の幼馴染でね、まあ俺の幼馴染でもあるけどね」

「そうだったんですね。あ、お席にご案内します」

そう言って、沙耶は耕太達を席へと案内した。

話を聞くと、沙耶は同じ大学のひとつ後輩で、同時に畑農時代の後輩でもあるらしい。

今年度の春、入学してきた沙耶に純也が話しかけた。

その数日後、沙耶から告白を受けたとのことだった。

関係はいたって良好らしい。

「このコーヒーおいしい・・・」

耕太は出されたコーヒーを飲んでいた。

その味はどこか落ち着ける、そんな味だった。

「ありがとう」

マスターが小さな声で呟く。

マスターは無口でおとなしい人らしい。

しかし、この店の雰囲気にはとてもあっている。

耕太達はカウンター席に座り、マスターの正面の位置にいた。

「ご注文は?」

マスターがやはり小さな声で呟く。

「じゃあ、俺はナポリタンで」

「じゃあ、わしはカルボナーラで」

「了解」

各々注文を告げる。

やがて、注文した料理がやって来る。

「おいしい・・・」

「だろ?ここの料理はうまいんだ」

耕太は料理の美味しさに驚いていた。

純也は自分のことのように自慢する。


料理を食べ終えた耕太はコーヒーをもう一杯頼んだ。

「サービスだよ」

マスターはそう呟く。

どうやら、コーヒーのお代はいらないという意味らしい。

コーヒーを飲み干したあと、耕太達は店を後にした。


「どうだった、あの店は」

「とてもよかったです。また来たいです」

「そっかそっか!それはよかった!」

純也は屈託のない満面の笑みを浮かべる。

「じゃあ、わしはこのまま帰ります」

「そっか、またおいでよ。静音達によろしく」

「はい、それじゃ」

耕太と純也はそこで別れた。

その後、何度かあの店を訪れるようになる耕太だった。


「耕太おかえり」

「し、静音さん・・・?怒っていらっしゃる?」

自宅に帰宅すると、そこには静音がいた。

合鍵を渡しているのにも関わらず、外で待っていたらしい。

静音の頬は赤く染まっていた。

「どこに行ってたの?」

「えっと・・・純也さんのとこに・・・」

「お兄ちゃんのところか~・・・そっか~」

「静音さん・・・?」

静音の目がくすんでくる。

「せっかく宿題教えてあげようと思ってきたのにーーー!!!」

静音は殴りかかってくる。

「だああ!!お前嫌だって言ったじゃないか!!!」

「あんなの嘘に決まってんじゃん!!教えるに決まってんじゃん!!」

「ええええ!?そんなのわかんねえよ!!」

「もうばかああああああ!!」

「理不尽だああああああああああああああ!!!!」


黒い夜の空には耕太の声が響き渡った。



「宿題どうしよ!!わあああああ!」

こちらは哲也。

「やっぱり甘奈に頼るしか・・・」


(嫌です!もう哲也様なんて知りません!)

思いっきり断られた哲也であった。

「オー!マイ!ガアアアアアアアアアット!」


明後日から3学期だ。


続く

どうもりょうさんです!冬休み編~悪夢再び~をお送りしました!

ついに冬休み編完結でございます。

次回からは3学期編へと突入します。

卒業式がありますね。

感動的な卒業式になるのか、ドタバタな卒業式になるのか。

それはまたのお楽しみ!

それではまた次回お会い致しましょう!


作者のもうひとつの小説「こんなの家具なわけねえ!」も読んでいただけると嬉しいです!


ブクマ、感想など頂ければ作者は泣いて喜びます

なにか、問題、ご要望があればメッセージなどいただければ嬉しいです!

この小説がお気に召しましたら評価の方もお願いいたします!

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