冬休み編~本当の親友~
甘奈の祖母、藤崎富子の説得を終えた耕太と哲也はその足で耕太の家へと向かった。
耕太の家までは自転車で1時間かかるため電車|(耕太はなるべくお金が使わないようにしているため利用していない)で移動した。
「ここが耕ちゃんの家か~」
「そう、まずはゆっくりしてもらいたいんだが、連れて行きたいところがあるからついてきてくれ」
「ん、了解」
耕太と哲也は荷物を家に置いた後、ある場所へと向かった。
「ここは・・・」
耕太と哲也がやってきたのは近くの墓地。
大輔、雅子、明人、吉蔵、ヨシコが眠る墓地だ。
左から吉蔵・ヨシコ、大輔、雅子・明人の墓となっている。
「ここはわしのおじいちゃんやおばあちゃん、両親がねむってる墓だよ」
「耕ちゃん・・・もしかして」
「そうだ、わしの両親、祖父母は既に死んでる」
哲也は驚きの顔を見せたあと、悲しそうな顔を見せた。
「そんな・・・こんなの俺以上じゃないか・・・耕ちゃんの方が苦しい過去を背負ってるじゃないか!」
哲也は普段絶対に見せないような取り乱し方をした。
哲也は何かあるとは思っていたし、軽いことではないと思っていた。
しかし、耕太の口から語られたのは自分の想像を超えた重い話。
自分は鉄心を亡くしただけであれだけ悲しんだというのに、耕太は両親まで失っている、自分以上に悲しい思いをしているはず、だが耕太はそんな事を抱えているような悲しい表情は見せなかった。
どうしてそんな風に日々を過ごせるのか、どうしてそんな風に生きられるのか哲也は不思議だった。
「下永」
「耕ちゃん・・・?」
耕太は下永を呼ぶ。
その声は優しかった。
「確かにみんなを亡くしたとき、わしは取り乱したりもした。だけど、その時その時で誰かがわしを支えてくれた。わしはその誰かのおかげでここまでこれた」
「誰か・・・?」
「そうだ、わしは父さんが二人いる。一人はじいちゃんが死んだとき、もう一人はお父さんが死んだとき、わしを一生懸命支えてくれた。そして母さん、母さんはわしの周りの人が死んだとき、自分も悲しいはずなのにわしを支えてくれた」
耕太はそこで一息ついた、そしてまた話し始めた。
「そして、わしの周りの人が全ていなくなったとき、わしは絶望した、発狂した、泣き叫んだ。そこでわしを支えてくれたのはシズだった」
耕太は笑顔で哲也に語りかけた。
「わしを優しく抱きしめてくれた、大丈夫大丈夫ってわしに一生懸命話しかけてくれた。わしは救われた。最後は身内ではない他人が支えてくれたんだ。下永に甘奈ちゃんがいたように」
「耕ちゃんは・・・そんな過去を抱えてなんで笑ってられるんだ?」
哲也は見せたことないような不安な顔をして聞く。
「それは、シズがいて、シズの家族がいて、畑農の先輩やクラスメイトがいて、南さんがいて、そして・・・」
耕太は最高の笑顔で哲也を見て言った。
「下永、お前がいるからだ」
「・・・!」
哲也は目を見開く。
「わしには親友なんていなかった、両親もいないわしには友達はいても親友はいなかった。でも、畑農に来てお前に出会った。明るくて、人当たりが良くて、それでいて優しい。下永が最初に話しかけてくれなかったら、わしは孤立していたと思う。だから下永、わしは下永に・・・いや親友、哲也に感謝してる」
「・・・!あ・・・ああ・・・」
哲也は大粒の涙をこぼした。
「哲也がいてくれてよかった、わしの話を聞いてくれてありがとう。哲也には感謝してもしきれないよ」
「耕ちゃん・・・ありがとう・・・ありがとう」
哲也は涙を流しながら耕太に感謝の気持ちを伝える。
「わしが感謝してるんだけどな・・・まあ、いいか」
耕太は苦笑いを浮かべながら哲也をなだめた。
「落ち着いたか?」
「うん、ごめんね耕ちゃん。俺っちの方が泣いちゃって」
「いいさ、それほど真剣に聞いてくれたんだろ?わしはそれだけで嬉しいよ」
「・・・やめて、耕ちゃん。また泣いちゃう」
「はっはっは!もっと泣かせちゃうぞ!」
「あ、もう泣かないわ~」
「こんのやろう!!」
「・・・」
「・・・」
「「ぷふ・・・ははははは!」」
二人は笑いあった、気の済む限りいつまでも。
この時、二人は本当の親友になった。
二人は鉄心の前でしたように5人の墓の前で手を合わせていた。
「みんな、こいつが俺の親友だ。こいつのおかげで元気にできてるよ」
「みなさん、ご挨拶するのが遅くなってすみません。耕ちゃんにはいつも感謝してます。耕ちゃんはしっかり監視しておくんで大丈夫ですから、ゆっくり見ていてくださいね」
「監視ってお前・・・」
「監視しちゃうぞ♪」
「・・・きめぇ」
「ひっどい!耕ちゃんひっど!親友に向かってなんてことを!」
「うっせえ!うっせえ!」
「うがあああ!」
「うおおおおお!」
耕太と哲也はつかみ合って喧嘩した・・・いやじゃれ合いか。
二人は笑顔だしな。
おっと失礼、口調が。
二人は笑顔で墓地をあとにしたのだった。
耕太と哲也は家へと帰宅しの扉を開いた。
「ただいま~」
「おじゃましま~す」
「おかえり」
「「ただいま~・・・!?」
台所には一人の女性が立っていた。
「シズ!なんでいるんだよ!」
「三島さん・・・?」
「やっほー耕太♪下永君もやっほー」
台所に立っていたのは静音だった。
エプロン姿で一見新妻っぽい。
「質問に答えろおお!」
「もぉ、そんなに怒らないでよ~ご飯作りに来てあげたんだよ~?」
「そうか、ありがとう。今日は何作ってくれるんだ?」
「んふ♪今日はカレーだよ♪」
「おお!」
耕太は目を輝かせる。
「ちょい!それでいいのか!?耕ちゃん!」
耕太の言動に驚き声を上げる哲也。
「ご飯を作ってくれる人に悪い奴はいない!」
「俺っち耕ちゃんの将来が心配!」
耕太の答えに再び驚く哲也。
「まあまあ♪もうすぐできるから座って座って♪」
静音が座るよう促す。
「なんだ!?これは俺っちがおかしいのか!?」
「どーぞ!召し上がれ!」
「いただきまーす!・・・うめえ!」
「いただきます・・・うまい!」
耕太と哲也は静音の作ったカレーを食べ始めた。
その味は文句なしにうまい。
「シズはいい嫁さんになれるな!」
「嫁!?耕太の・・・?」
「ん?はっはー!それはないんじゃないかなー!」
「もう!耕太のバカ!」
「んお!?なぜだ!」
「耕ちゃん・・・」
「お、わしか!?わしが悪いのか!?」
「「・・・」」
耕太に向けられたのは無言の冷ややかな目だった。
それから耕太と哲也は今日のことを静音に話した。
甘奈のこと、そして耕太のことだ。
静音には話しておきたいという耕太の願いだった。
「そっか、話したんだ耕太のこと」
「ああ、哲也は俺にとって親友だからな」
「私は親友じゃないんだ~」
静音は意地悪な笑顔を浮かべた。
「シズは家族だろ?」
「・・・家族か」
「ん?ん?」
静音は少し曇った笑顔を向ける。
「まあ、いいや。今は」
「なんだ?」
「耕ちゃん大変になるなー」
哲也が窓の外を見ながら小声で呟く。
「まあ、耕太に親友ができてよかった。やっと本当の友達ができたんだね耕太」
「ああ、やっとな」
今度は本当の笑顔を向けた静音。
「俺っちにもね♪」
哲也も笑顔を浮かべる。
3人の笑顔は心の底から溢れる笑顔だった。
それからは風呂に入り、少し話をして就寝した。
静音は今日、泊まっていくことにした。
「ん・・・目が覚めちゃった・・・」
目が覚めてしまった静音。
ひとまず部屋を出てみることにした。
「う~・・・寒い・・・」
季節は冬、夜は特に冷える。
「ん?耕太?」
和室の仏壇の前に座っていたのは耕太だった。
「・・・みんな見守ってくれてる?てかみんな仲良くやってる?母さんの取り合いなんてしないでよ?まあ、お父さんと父さんに限ってそれはないか」
耕太は苦笑を浮かべる。
「耕太・・・」
静音はその光景をどこか寂しく感じた。
「本当はみんなにわしの親友と話をしてもらいたかったんだけどね。残念だな~」
「・・・」
静音は見ていることしかできない。
「みんな・・・」
(耕太が泣いちゃう・・・)
静音は飛び出しそうになった。
しかし、
「はっはっは!おじいちゃんとなんか仲良くなれそうなんだけどな!面白いやつなんだよ!」
「!?」
耕太は大きな笑い声を上げ、表情も満面の笑みを浮かべていた。
「みんな、見守ってくれてありがとね!これからもよろしく」
「・・・耕太・・・耕太!」
笑顔を浮かべた耕太を見た静音は、泣きながら耕太に抱きついた。
「うお!?シズどうした!?」
「耕太!こうたぁ!こうたくん!」
「ええ!?ロリ音モード!?」
耕太はロリ音モードになった静音を優しく抱きしめ、頭を撫でた。
「耕太!こうたぁ!こうたくん!」
「ええ!?ロリ音モード!?」
その光景を影で見る哲也。
「まったく、耕ちゃんは・・・はは、面白いね~」
優しい笑みを浮かべながら、その光景を見続けていた。
翌日、哲也は耕太に見送られ自宅へと帰っていった。
静音は泣きすぎて目が腫れてしまい、会いたくないとのこと。
もうすぐ年明けだ。
続く
どうもりょうさんです!冬休み編~本当の親友~をお送りしました!
お互いの過去を知った耕太と哲也。
本当の親友になった耕太と哲也。
いろんなことがありながらも二人は本当の親友となりました。
これからの耕太の哲也の呼称が哲也となります。
さてさて、お泊まり会が終わったことで季節は年末年始になります、次回は元旦、初詣くらいまでいけたらいいな!
ワイワイ騒がしく書いていきたいと思います!お楽しみに!
それではまた次回お会い致しましょう!
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作者のもうひとつの小説「こんなの家具なわけねえ!」も読んでいただけると嬉しいです!
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