農業高校の日常編Part3~先輩の家~
テスト勉強回です。
季節は冬。
一昨日は初雪も降りました。
「私が勉強教えてあげる・・・」
美紅の赤面しながら言葉。
それから数日後、耕太は美紅の自宅へと招かれていた。
「ここが美紅先輩の家か~」
美紅の家は畑市の西と東のちょうど中間くらいのところ、畑農の近くにあった。
南や甘奈の家のように豪邸というわけではなく、ごく普通の一軒家だった。
「えっと・・・」
耕太はインターホンを押す。
「はーい!どちらさん?」
美紅でも美桜でもない女性の声。
「あ、美紅先輩の後輩で川島耕太といいます」
「あー!聞いてるよ!入って入って!」
「失礼します」
耕太は家の中へと促される。
「やっほー!君が川島君だね♪美桜ちゃんと美紅ちゃんから聞いてるよ♪」
「改めまして川島耕太といいます」
「うん♪礼儀正しくていい子だ!」
耕太を出迎えたのは、茶髪でカールの掛かった髪に幼さ残る顔をした若い元気な女性だった。
「えっと失礼ですがあなたは?」
「おっと、忘れてた。私は西野美咲(にしのみさき)、美紅ちゃんと美桜ちゃんのお母さんだよ♪」
「・・・へ?お母さん?」
「いぇーす、まざー」
「ええええええええ!?」
耕太は驚愕した。
お姉さんくらいかと思っていた女性は美紅と美桜の母だったのだ。
絶対にひと目では母だとわからない。
「はっはー驚いてるねー」
「そりゃ驚きますよ!お母さんには見えませんよ!若すぎでしょ!」
「いやん♪照れちゃうなー川島くんってばいきなり口説かないでよー♪」
「口説いてねえよ!」
頬に手を当てて照れる姿は様になっていた。
「でも、だめだよ♪私はお父さんに夢中だから~ごめんね~♪」
「なんか勝手に振られたああああああ!?」
そこで、誰かが2階から大きな音を立てて階段を下りてくる。
「もう!お母さん!来たらすぐに通してって言ったでしょ!」
「あれ~?そうだっけ?」
「そうだよ!」
美咲に怒鳴ったのは私服姿の美紅だった。
「あ、こんにちは。美紅先輩」
「なんかこっちは普通に戻ってるしー!?」
「なれました」
耕太は淡々と答える。
「はや!はやいよ!私だってなれるのに時間かかったのに!」
「いや~周りに個性的な奴が多いので」
「どんな人間関係してるのよ!」
美紅の顔は大きな声を出しすぎて真っ赤だった。
「なかなかやるわね川島君」
何故か美咲は感心していた。
「もういいよ・・・部屋行こ」
「は~い」
「あとでお菓子持って行くからね~」
少し疲れた感じの美紅に連れられ部屋へと向かう。
「じゃあ、適当なとこに座って」
「あ、はい失礼します」
美紅の部屋はとても綺麗にされていた。
ぬいぐるみやかわいい小物が置かれた、女の子らしい可愛い部屋だった。
「えっと・・・あんまり見ないでくれるかな・・・」
「あ!すみません!」
耕太は無意識に部屋を見回してしまっていた。
「女の子の部屋ってあまり入らないので」
「南さんの部屋に入ったんじゃないの?」
「ええまあ、入りましたけど。あの時は勉強に忙しくてそれどころじゃなくて・・・」
「ちゃんと勉強しようね?」
「はい・・・」
お叱りを受けてしまった耕太。
しかし、耕太を怒る美紅の姿は可愛いものでしかなかった。
「じゃあ、静音ちゃんの部屋は?」
「あいつの部屋はもう昔から入ってるし、泊まったこともあるので何も感じません」
「と、と、と泊まった!?静音ちゃんの部屋に!?」
「え、ええ。どうしてもってせがまれて、床に布団敷いて寝ました」
「は、はわぁ・・・」
美紅は顔を赤くしていた。
「なかなかやるね~こーくん」
「「!?」」
いつの間にか耕太の後ろに座っていたのは美桜だった。
「お姉ちゃん!いつの間に!?」
「さっき」
「音もなく入ってくるのやめてよ!」
「いや~つい癖で」
「どんな癖なの!?どんな日常送ってるの!?」
美紅はこの家ではとことんツッコミのようだ。
「美桜お姉さん・・・びっくりするのでやめてくださいね」
「うん、わかった。やめるー」
「かる!癖ってそんな簡単にやめられるものなの!?」
「これが・・・愛なんだよ!美紅ちゃん!」
胸を張ってドヤ顔をする美桜。
同時に胸が揺れる。
(おっと・・・しかしなんとも・・・は!)
「耕太君のすけべ」
美紅にジト目で見られる耕太。
「ご、誤解です!これは健全な男子なら一度は通る道であって!」
「そーだよ美紅ちゃん。これは正常なのだよ。あ、こーくんなら触ってもいいよ?」
「な、なんと・・・」
「だめええええええ!」
顔を真っ赤にして叫ぶ美紅。
「冗談なのにー」
「冗談か~・・・」
「耕太君も残念そうにしないの!!!」
「別に触るくらいならいいんだけどね~膝枕をしてあげた仲だしー」
「・・・」
(あ、やべえ。美紅先輩から変な音が・・・ピキっていった)
「耕太君・・・説明、してくれるかな?」
美紅から感じたことのない殺気が溢れる。
「えっと・・・そのー」
「不潔うううううううううううう!!!!」
「ぎゃあああああああああああ!!!」
散々ボコられましたとさ。
「いたい・・・」
「もう!お姉ちゃんのバカ!全部お姉ちゃんが悪いじゃない!殴っちゃったじゃない!」
「話を聞いてから殴らない美紅ちゃんが悪いー」
「うぅ・・・」
「美紅先輩気にしないでください。すぐに説明しなかったわしが悪いんです」
「耕太君・・・」
「美紅先輩・・・」
「そうだよ!早く言わない耕太君が悪い!もーーバカあああああ!!」
「あれええ!?逆効果!?」
「大変だねーこーくんも」
「そうねー川島君大変」
「あのー!?助けてくださいませんか!?美桜お姉さんが悪いんでしょ!?てかお母さん!?いつの間にいたんですか!?」
「お姉ちゃんとお母さんばっか見て!私はどうでもいいの!?」
「そんなことないですって!ちょ!やばい!そろそろやばいって!ああああああああああああ!」
勉強会が始まったのはそれから1時間後のことだ。
「えっと、ここはこの公式を使うんでしたっけ?」
「うん、そうだよ。できるようになってきたね♪ここまで出来るならひとりでも出来たでしょうに」
「美紅先輩の教え方がいいんですよ」
「そんなこと・・・」
美紅は顔を赤くする。
良い雰囲気で進む勉強会だが、耕太は傷だらけである。
美紅は編み物をしながら耕太の質問に答えていた。
「美紅先輩、それってマフラーですか?」
「そうだよ~手編みマフラー」
「誰かにあげるんですか?」
「うん、もうすぐクリスマスだからね~」
「あーそういえばそうでしたね。誰にあげるんですか?後輩ですか?」
「えっと・・・まあ、後輩・・・かな」
少し顔を赤くする美紅。
「へー美紅先輩にプレゼントをもらうなんて、幸せな後輩ですね」
「・・・鈍感」
「へ?」
「なんでもなーい」
「いま鈍感って」
「いってないもーん」
「ええ・・・」
美紅はそっぽを向いてしまった。
(なんでこんなに鈍感なのかな~この子は。どうしてこんな子好きになっちゃったんだろ)
美紅は耕太を見る。
耕太は気づき無邪気な笑顔を見せる。
美紅は慌てて顔をそらす。
(でも、好きなんだよね・・・ずるいなーまったく・・・)
美紅は顔を赤くしながらマフラーを抱いた。
「ふー、ちょっと休憩しよっか」
「あ、はい」
2時間が経ち、そろそろ昼時だ。
「耕太君、お昼どうするの?」
「コンビニでも行こうかと」
「んー、ちょっとまってて」
「え、はい」
美紅は、1階へと降りていった。
しばらくして美紅が戻ってきた。
「耕太君、うちでお昼食べなよ」
「え?いいんですか?」
「うん!お母さんにも言ってきたから」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「うん!じゃあ下に行こ」
「はい」
耕太は西野家で昼ご飯を食べることになった。
「すみません、わしの分まで用意してもらって」
「いいんだよ~どうせ最初から作るつもりだったしー」
「そう言っていただけると助かります」
耕太は礼儀正しく美咲にお礼を述べた。
「・・・ねえ、お父さん。やっぱり美紅か美桜の旦那さんになってもらおうよ」
「・・・」
美咲はとなりの男性に話しかける。
「お母さん!そういうのいいから!」
「お姉さんは別にいいけどな~」
反応は様々だ。
「あ、あはは・・・」
耕太は苦笑いしかできなかった。
(さっきからお父さんの目線が怖い・・・)
美紅の父は先程から耕太を睨んでいる。
そして次の瞬間。
「娘はやらあああああん!」
「はい!?」
いきなり発狂した。
「俺の娘はやらん!絶対だ!うわあああああああ!」
「ええ!?ええ!?」
「あ~また始まった・・・」
「お父さん・・・」
「いつもいつもめんどくさいねーお父さん」
耕太以外は呆れ気味だ。
「お父さんはね、重度の娘大好き症候群だから気にしないで」
美咲が説明してくれる。
「は、はぁ・・・」
「娘は俺のものだあああああ!!」
「「私はお父さんのじゃないよ?」」
「ぐはああ!」
娘ふたりの言葉に倒れる父。
賑やかな家族だ。
(いいな、こういう賑やかな家族って)
耕太は複雑な心境ながらも笑顔で見ていた。
「こほん、先程はみっともない姿を見せてしまった。俺は西野孝介(にしのこうすけ)、美紅と美桜の父だ。よろしくな」
「はじめまして、美紅先輩の後輩で、生徒会副会長に就任しました川島耕太です」
自己紹介を済ませ、昼食へとはいった。
昼食はカレーだった。
シンプルだが家庭によって味が変わる料理だった。
「おいしい・・・」
耕太はつぶやいた。
「お母さんは私たちの料理の師匠だからね」
「そーだねーこーくんも気に入ったようで良かったー」
「ええ、とてもおいしいです」
口の中に少しぴりっとした辛さが広がる。
しかしとてもクセになる味だった。
「そういえば川島君」
「はい?」
孝介が思い出したように聞く。
「文化祭の時、君の歌を聞いたよ。素晴らしかった」
「あー私も聞いた~よかったよー耕太君」
「あ、ありがとうございます」
耕太は恥ずかしいのか顔を少し伏せる。
「来年の楽しみが増えたよ」
「そうねーまた聞きたいなー」
西野夫妻が言う。
「ついでに娘のどっちかもらってくれないかしら」
「いきなり何言ってるんですか!全く関係ないですよね!?」
「お母さん!」
「私はいいけどね~」
「娘はやらああああああん!」
「だからあああああああああああああ!!!」
このあとも勉強会は続き、西野家の面々に見送られ耕太は帰宅した。
「お、雪か」
季節は冬。
もうすぐクリスマス。
そして、もうすぐ冬休み。
「その前に、テストだな」
続く
どうもりょうさんです!農業高校の日常編Part3~先輩の家~をお送りしました。
ぼくはテスト勉強で女の子の家なんて行ったことありません、いいですね耕太君。
さて、次回はテストと終業式、冬休み突入前まで行きたいと思います。
私事ではありますが、ある会社に内定が決まりました。
これで来年から僕も社畜ですね。
頑張ります。
作者のもうひとつの小説「こんなの家具なわけねえ!」も読んでいただけると嬉しいです!
ブクマ、感想など頂ければ作者は泣いて喜びます
なにか、問題、ご要望があればメッセージなどいただければ嬉しいです




