文化祭編~2日目、祭りの前の静けさ~
2日目です!
大騒ぎの文化祭1日目の翌日、生徒は全員体育館で座って待機をしていた。
その待機態度は素晴らしいもので、誰も喋らず整然と開始の時を待っていた。
その態度は昨日大騒ぎをしていた者たちと同一人物であるとは思えない。
そして・・・
「来賓の皆様が入場されます」
司会者の言葉とともに横に座っていた教員が一斉に起立する。
体育館の入口からは大勢の来賓が入場する。
全員の入場が終了し教員も着席。
「定刻となりました、これより第80回畑農祭2日目、生徒研究発表会を始めます」
起立をし、礼、着席をする。
「校長先生挨拶」
いつものように校長が壇上にあがる。
しかし、いつものように長々と話はしない、これは毎年のことだ。
「それでは発表に移りたいと思います、まずは3年畜産科の発表です」
畜産科の発表が始まる。
この学校で行われている研究は、普通の高校ではやらないような高度な研究や、農業高校ならではの研究だ。
普通の人がこれを聞けば何を言っているのかさっぱりわからない。
来賓の大学教授などは頷いていたりするが、大体の生徒は理解ができていない。
その証拠に、
「・・・くー」
「ん~・・・むにゃむにゃ」
「・・・・(こくん)」
上から耕太、哲也、南。
3人とも夢の中にいた、もっと言えば1~3年の緑地土木科はほとんど全員寝ていた、南でさえも専門外らしい。
唯一3年総務の今岡だけは起きていた。
それからも発表は続いていった。
「それでは最後に生徒会長、3年園芸科、南彩花さんの発表です」
南姉は学科での研究とは別に独自で研究をしている、その研究が大いに評価され多くの大学から誘いが来るほどだ。
そして、南姉の名前を聞いた緑地の生徒、その他の寝ていた生徒、さらに暇で寝ていた保護者も目を覚ました。
「・・・くー」
「ん~・・・むにゃむにゃ」
「・・・・(こくん)」
南姉に興味がない3人を除いてだが。
南姉はどこかの発表会で賞を取った研究の発表をしていた。
それを緑地の生徒はじめ3人を除いた全員が食い入るように聞いていた。
「これで私の発表を終了します、ご静聴ありがとうございました」
南姉が発表を終えると、会場からは大きな拍手が巻き起こった。
来賓の大学教授は目を輝かせて南姉を見ていた。
勧誘の方法でも考えているのだろう。
「ん?・・・おわったか~」
「う~ん?やっとおわったね~」
「はぁ、辛いものがあるわね」
この3人も目を覚ましたようだ。
そして、来賓が帰り、保護者も出て行ったところでその場は戦場に変わる。
「おっしゃあああ!最後の仕上げじゃあ!園芸科!準備行くぞ!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおお!」」」」」」
「よし、畜産科も行くぞ!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」
「俺たちも!」
「俺たちも!」
「俺らも!」
「私たちも!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」
ずっと厳粛な態度をとってきたため、爆発してしまった生徒たち。
それに焦りもあってか、全速力で各準備に向かっていく。
そして、体育館には緑地だけが残った。
「よ~し、緑地集まれ~」
「「「「「「はい!」」」」」」
今岡の呼びかけに応える生徒たち。
「緑地の準備はあと庭と、模型を教室に運んで、明日のたこ焼きや盆栽や竹垣を売るときのテント立てれば終わりだから、すぐに終わらそうな」
「「「「「「はい!」」」」」」
「んじゃ、1年生は模型運んでね、2年はテント準備、1年は終わったら盆栽と竹垣をテントまで持っていってね、それが終わったら1、2年は帰っていいから」
「「「「「「はい!」」」」」」
「よし、んじゃ解散!」
「「「「「「おう!」」」」」」
緑地の生徒も各場所へと散っていった。
特に準備のないものは帰っていいことになっている、残るものは適当な時間に昼食を済ませ、引き続き準備。
緑地は庭の仕上げは3年生でないとできないため、仕事が比較的少ないのだ。
「よし、そっち持ったな~?」
「うん!大丈夫だよ~じゃあ耕ちゃんいくよ~」
「よっしゃ、せーの!」
耕太と哲也は模型を運んでいた。
この模型は近くにある大きな橋の模型だ、細部までこだわってある。
「それにしても、よくこんなもの作れるよなー」
「そうだね~さすが先輩たちだよね~あ、耕ちゃんそこ右ね」
「あいよ」
二人はぶつけないように注意し教室へと向かっていった。
「川島君、下永君ドアに気をつけて」
「はいよ~」
「ういーっす」
教室には南が待っていた。
教室内の設置予定図を見ながら指示を出していた。
「その模型はそこの机の上ね」
「「りょうか~い」」
二人はゆっくりと模型を机に下ろした。
「あ、ここの塗装ちょっと剥がれてるな」
「あ、ほんとですね先輩」
「ほんとだ~」
一人の3年生が塗装の剥げているところを指さしながらいう。
「よし、任せろ」
「「「え?」」」
先輩はどこから取り出したのか、筆と絵の具と簡単なパレットのようなものを持ち素早く作業をしていく。
「よし、できた」
「「「ええ!?」」」
先輩が作業を終えると、塗装が剥げいていたところが綺麗に塗装されていた。
それはムラのない見本のような塗り方だった。
「ねえ、耕ちゃん・・・あの筆と絵の具どこから出したの?」
「いや、わしに聞かれても・・・」
「マジックかしら・・・」
3人は驚きを隠せない。
「しかも上手いし・・・」
耕太は驚いた様子で塗装された部分を見る。
「はっはっは!美術は緑地の必須科目だからな!」
1年生の授業に芸術選択がある、しかし緑地土木科だけは美術を全員選択することになっている。
庭園デザインなどで使う透視法や着色能力が必要なためだ。
緑地の生徒は全員、最低限の美術知識は持っているのだ。
それから、準備は進み1、2年生の準備は全て終了した。
部活のある生徒は部活へ、哲也は庭園の手伝い、南は他の学科の助っ人に呼ばれていった。
そして、またしても耕太は一人取り残されてしまった。
「あれ~・・・これデジャヴかな・・・まあいいか、回ってみよう」
やはり、耕太はこの中を帰る気にはなれなかった。
そして、耕太は生活科棟へと歩いて行った。
そこでは何かを作っているのだろうか、良い匂いがした。
「あれ~?耕太?」
「お、シズ」
料理の材料を抱えた静音が話しかてくる。
「なに?一人なの?」
「ああ、みんな部活やら手伝いやらでな」
「そっか~・・・そうだ!耕太!手伝ってよ!」
「え?」
「ほらほら早くー!」
「え、ちょ!おい!シズ!」
耕太は強引に引っ張られていってしまった。
耕太はシズに連れられ、生活科棟の調理室へと連れてこられた。
「おい、シズ」
「せんぱ~い!助っ人連れてきましたよ~!」
静音はドアを勢いよく開け叫ぶ。
「静音ちゃん?助っ人って・・・」
「どうも、西野先輩」
「あれ?川島君?」
美紅が耕太の顔をみて不思議そうな顔をした。
「一人でフラフラしてたので連れてきました!」
「フラフラって・・・準備が終わったから歩いてただけだよ」
「それをフラフラっていうの!」
「ふふふ、でもいいの川島君?手伝ってもらっちゃって」
「まあ、どうせ暇なので大丈夫ですよ」
「そっか♪ありがとっ♪」
「いえいえ、そういえば今は何を?」
「うん、今は明日の下ごしらえをしてるんだよっ」
「なるほど、お店で出すようにですか」
「うんっ、そうだよ」
「いい匂いですね、さすが生活科ですね」
「えへへ、照れちゃうよ~」
少し頬を染め照れる美紅。
「じゃあ、お手伝いしますね」
「うん、よろしくね」
「じゃあ耕太!こっちこっち!はやくー!」
「へいへい、まってろい」
こうして耕太は生活科の手伝いをすることとなった。
「へ~川島君って料理が出来るんだ」
「すごーい!手際いい~」
「慣れてますから、でも、先輩方もさすがですね。将来はいいお嫁さんになりそうです」
「え?えっと・・・うう・・・」
「うーむ、困った後輩がいたもんだ・・・こりゃ、ずるいね~」
「え?え?」
ふたりの先輩は耕太の言葉に顔を赤く染める。
「この年上キラー」
「節操がないのは、めっ!だよ川島君」
「え?え?」
静音と美紅に責められる耕太。
何故責められているのかはわかってないようだ。
この調理室内には昨日の歌を聴いて耕太を多少ながら気にしている生徒が何人かいるため、なんとも言えない空気が漂っていた。
「川島君、今日はありがとね~」
「いえ、また何かあったら言ってください」
「うん、ありがとねー!」
「耕太~!かえろ~!」
「ああ!わかったいま行くよ!それじゃ西野先輩、失礼します」
「うん、またね・・・川島君」
美紅に呼び止められる。
「はい?」
「耕太君って・・・呼んでいいかな?」
顔を真っ赤に染めて俯きながら言う美紅。
「・・・はい!どうぞ好きなように呼んでください!」
「あ、ありがとう!」
「それじゃあ、わしも美紅先輩と呼んでもいいですか?」
「え、えっと、うん!いいよ!」
「ありがとうございます、美紅先輩!では!」
「うん!またね!」
耕太はそう言うと静音の方へと走っていった。
「うぅ・・・心臓のバクバクが止まんないよぉ・・・だめだよ、あんな笑顔しちゃ・・・」
美紅は顔を真っ赤に染め顔を手で覆っていた。
明日は最終日、この学校が一番、人で溢れかえる日だ。
祭りの本番はこれからだ。
続く
どうもりょうさんです!文化祭編~2日目、祭りの前の静けさ~をお送りしました!
今回は生徒研究発表や、準備の回でした。
研究発表は厳粛な感じでかけていたでしょうか?うまく書けなくてすみません!
次回はついに3日目です。
多くの人が集まります!甘奈は来るでしょうし、おばさんちの三姉妹も来るでしょうし、どんな風になるかは次回のお楽しみ!
ドタバタ文化祭もついにクライマックス!
期待していただけると嬉しいです!あ、でも過度な期待は裏切ってしまう可能性があるので、その時はすみません!
では次回またお会い致しましょう!
作者のもうひとつの小説「こんなの家具なわけねえ!」も読んでいただけると嬉しいです!
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