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農業高校は毎日が戦争だぜ  作者: りょうさん
夏休み編
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夏休み編~帰省と再会~

楽しかった旅行も終了し、耕太達は畑市へ戻るために電車に乗っていた。

「あー楽しかった!耕太、また行こうね」

「そうだな。人混みはゴメンだけど・・・」

「川島君らしいわね・・・」

「あ、耕ちゃんお菓子食べる~?」

向かい合った席に座っている静音、耕太、麗華、哲也の四人は旅の思い出を語り合っていた。

席順は女子と男子に別れ、窓側には耕太と麗華が座っている状態だ。その他の者も楽しそうに談笑している。

「そういえば耕ちゃん。昨日いつの間に部屋へ戻ってたの?」

「お前達がイチャイチャしてる間だよ・・・」

「あはは・・・。ごめんごめん、ついね」

哲也は反省した様子は微塵も感じられない反応をする。

「まったく・・・。純也さん達も哲也達も人目っていうものをだな・・・」

「なになに!なんの話!?」

「うおぉ!?彩花先輩・・・。びっくりさせないでくださいよ」

「あはは!ごめんね!」

悪びれもなく笑い、耕太の後ろの席から顔をのぞかせる彩花。

その顔は、己の知識欲を満たそうとする狼のようだった。

「こら、南さん。行儀悪いよ」

「ふぎゃ!」

しかし、彩花は純也に頭を掴まれ席の影へと消えていった。

「あはは!彩花ちゃんってばおもしろーい!」

「こら西野・・・。お前も行儀悪いよ・・・」

「ちょ!じゅんじゅん!痛い痛い痛い!ごめんなさいだよ~!」

彩花を笑う美桜の頭へとアイアンクローが落とされると、美桜の悲痛な声が響く。

「たく・・・。年長組が何してるんだよ・・・」

「えへへ!」

「あはは!」

純也は腕を組み二人を叱るが、当の本人達はまるで反省の色を見せず、笑っているだけだった。

その隣では、沙耶がその様子を楽しそうに見つめていた。そして、その表情には少しばかりの懐かしさと、少しばかりの嫉妬感があった。その証拠に、沙耶の右手は申し訳程度に純也の服の裾を掴んでいた。それを見逃す彩花と美桜ではなく、ニヤニヤと笑みを浮かべるといい獲物を見つけたように、純也達をからかっていた。

「相変わらず楽しそうだね!」

「あなたの目を疑うわ三島さん・・・」

「あはは・・・」

「耕ちゃん、お茶飲む?」

こちらはこちらでマイペースな空間が繰り広げられていた。


「へぇ・・・。こうにぃって学校じゃ有名なんですね」

「そうだよ~。よく、校内をお散歩してるしね」

「そうだねー。私もよく見かけるよー」

「川島ちゃんは親しみやすいからね~」

純也達の更に後ろでは美紅、春香、緑、青の四人が話をしていた。

春香が学校での耕太の様子や評判を聞いていたのだ。耕太の評判の良さと、校内散歩という笑いが出てしまうような行為に驚いていた。

「こうにぃ、どんだけ歩いてるの・・・」

「暇さえあれば、ちょっと歩いてきますって言って外に行っちゃうからね」

美紅はこみ上げてくる笑みを隠さず言った。

夏休み中にも生徒会活動を行ったが、休憩時間になると耕太はわざわざ冷房の効いた生徒会室から出て行き、校内を回っていた。

「副会長のお散歩は生徒間じゃ有名だからねー」

「生徒も川島ちゃんが来るのを楽しみにしてるしね~」

「へぇ・・・。人気なんだ・・・」

春香は考えるような仕草を見せる。

「ほー・・・。春香ちゃん的にはー、大好きなお兄ちゃんが人気者で嫉妬しちゃうかなー?」

「な、なにを言ってるんですか緑さん!」

緑の意味深な笑みと言葉を受けて明らかに動揺する春香。

「別に慌てなくてもいいではないかー。そこの生徒会長も少なからず嫉妬心はあるはずだよー?」

「ちょっと緑ちゃん!?」

「そうだね~。美紅ちゃんいつも言ってるじゃ~ん。人気なのはいいけど、ちょっとみんなにいい顔しすぎじゃないかな~って」

「青ちゃんまで!」

綾川姉妹の攻撃は春香だけではなく、美紅にまで飛び火し、美紅は顔を真っ赤に染め上げる。

「私のことはいいからー!もう、この話終わり!春香ちゃん、何か聞きたいこととかない!?」

「え?えっと・・・。みなさんは料理って出来ますか・・・?」

唐突に話を振られた春香は少し考える仕草を見せたあと、そんな質問を口にした。

「私は生活科だし、部活でも料理はするから出来るよ?」

「私も出来るよー。よく自分で育てた野菜を料理したりするよー」

「私も食品科だし、美紅ちゃんと同じで家庭部だから出来るよ~」

「み、みなさん出来るんですね・・・」

三人の答えを聞いた春香は肩を落とす。自分の壊滅的な料理の腕を思い浮かべたのだろう。

「もしかして、春香ちゃんって料理苦手?」

「実はそうなんです・・・」

「ほうほう、どの位苦手なのー?」

「もう壊滅的に・・・」

「それは大変だね~」

「あの、お願いがあるんですけど!」

「何かな?」

下を向いて俯いていた春香は、顔を上げると美紅達をすがるような目で見つめた。

「私に料理を教えていただけませんか?」

「なるほどー。料理が上手くなりたいんだねー?」

「はい!」

「上手くなって、副会長に食べさせたいとー?」

「はい!ってうわわわ!じゃなくて!普通に上手くなりたいんです!」

春香は慌てて訂正をするが時は既に遅し、緑と青の表情は獲物を見つけたかのように輝いていた。

「そっか、わかったよ!私でよければ教えるよ!」

「私もー」

「私も~」

「あ、ありがとうございます!」

三人の言葉を聞いた春香は笑顔で感謝の言葉を述べた。


各席で楽しく話をしていると、下車する駅に到着した。

「戻ってきたー!愛すべきふるさとー!」

「うわーい!ふるさとー!」

「やめなさい秋穂ちゃん・・・」

駅に降り立った途端、叫びだす哲也の真似をする秋穂。それを耕太は呆れたように止める。

「それじゃ、ここで解散かな」

「そうね。藤崎さん、お世話になったわ。三島さんのご両親も」

麗華の言葉を皮切りに、口々に感謝の言葉を述べる皆。

そして、各自家へと帰宅していった。

「楽しかったよ。ありがとな哲也」

「こちらこそ誘ってくれてありがと。またみんなで遊べるといいね」

「ああ、ほんとにな」

「じゃあ、俺っちも帰るね!」

「じゃあな」

「ばいばーい!」

そして、駅へと残ったのは耕太と三島家、花だ。

「さて、帰ろうか!」

耕太はその場を去るのを惜しみながらも、笑顔で駅をあとにした。


翌日、耕太と花は昨日来たばかりの駅へと再びやって来ていた。

何故ここにやって来たのかといえば、人を迎えに来たのだ。

「何年ぶりかな・・・」

「十年くらいだよね」

「そうだな。もう、そんなに経つんだよな」

「はやいよねー」

「まったくだ」

二人は待ち人が来るのを今か、今かと待っていた。

花は数ヶ月ぶり、耕太は約十年ぶりとなる再会だ。耕太も花もこの日を心待ちにしていた。

「どこ行こうかな~♪」

「四日もいるんだ。ゆっくり考えればいいよ」

「そうだね!」

そして、一本の電車が到着し、一人また一人と人が出てくる。

その中に、大きなキャリーバッグを持った二人の男女が現れる。それをいち早く見つけた花は、一直線に二人のもとへと走っていく。二人の男女はそれに気づくと、柔らかい笑顔を浮かべてキャリーバッグから手を離し、大きく腕を広げる。耕太はその様子をしばし遠くから眺め、二人と花が抱き合う瞬間を笑顔で見つめていた。

「お父さん!お母さん!」

「「花!」」

三人は確認しあうように抱き合い、これでもかと笑顔を浮かべていた。

そう、待ち人とは、花の両親だった。父の名前を根(こん)、母の名前を葉月(はづき)。三人が揃い、【花】は完全となった。

「耕太君・・・」

「お久しぶりです。お元気そうで何よりです師範」

「ああ・・・。ああ!」

耕太が近づくと、根が耕太を引き寄せ、頭を撫でる。

大きく、ゴツゴツした武道家の手。しかし、その撫で方は優しく、それでいて力強かった。そして、フラフラと空中を彷徨っていた耕太の両手は、葉月と花の手に包まれる。

「おかえりなさい」

「「ただいま!」」


続く


どうもりょうさんでございます!

「どうも川島耕太です!」

はい!更新いたしました!

今回は帰省中の電車内の会話、山方家との再会のお話でした!

「夏休み編がかつてない長さだな」

そうだね!なんでだろう?まあ、それはよしとして!山方家が帰ってきました!

「久しぶりに師範達と会えました!」

次回は山方家とのお話になります!お楽しみに!

「感想、その他待ってますね!」

ツイッターもよろしくです! @ngxpt280 で出てくるかと!

それではまた次回お会いしましょうね!

「さようなら!」

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