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農業高校は毎日が戦争だぜ  作者: りょうさん
夏休み編
103/110

夏休み編~お泊まりだぜ!ふぉー!~

「ふぇ・・・」

「ありゃ、秋穂ちゃんおねむかな?」

既に船を漕いでいる秋穂の頭が隣に座っている彩花の肩に当たる。

現在、あれ程あった花火を全て消化した一行は、別荘へと戻りのんびりとくつろいでいた。時刻は十一時、秋穂の就寝時間はとっくに過ぎている。

「うん・・・」

「よし、秋穂ちゃん。おいで。お部屋に行こうか」

「はぁい・・・」

眠そうに目を擦りながら耕太の腕に収まる秋穂。

そして、耕太は秋穂を軽々と抱き抱える。

「それじゃ、お部屋に案内しますね」

「よろしく甘奈ちゃん」

「おやすみー秋穂ちゃん!」

「おやすみー!」

彩花達に挨拶を終えると、耕太達は広間を出て行った。


「どう甘奈ちゃん。楽しい?」

「はい、とっても!」

「そりゃよかった」

部屋へと続く長い廊下を歩く秋穂を抱えた耕太と甘奈は話をしていた。

いつも甘奈の近くには哲也がいる。哲也のいないところで、甘奈がどう思っているのかを聞いてみたかったのだ。

「私はお話したとおり、あまり友達というものがいませんでしたから。こんな風に笑い合える空間はとても楽しいです」

「そっか」

「そういえば川島さん。川島さんと初めて会った時、川島さんは私の過去のことをわかっていらしたのですか?」

甘奈は不思議そうに耕太に問う。

初めて耕太と甘奈が会った時、それはちょうど去年の夏。静音と買い物をしていた時だ。その時、耕太は甘奈がお嬢様という言葉に反応したとき、話をそれより先に広げないように逸らしたことを言っているのだろう。

「全ては知らなかったよ。何があったのかも、事情も知らなかった。けど、何かあるのかな?とは思った。ただそれだけだよ」

耕太は当然のように述べる。

「すごいですね・・・。川島さんは見ただけで分かっちゃうんですね」

「そういうわけじゃないよ。表情や態度に出れば分かるってだけで、本当に分からない人は分からない。まあ、そういうのに敏感なのは本当だけどね」

耕太は苦笑いで答える。

世の中にはほとんど表情を変えない者や、態度に出さない者がいる。大抵の人間はどれだけ抑えようとしても、表情や態度に微妙な変化がある。耕太はそれを敏感に読み取ることが出来るだけなのだ。それが笑顔となると別だが。耕太は笑顔に対して非常に敏感であり、本物の笑みかどうかが分かってしまう。それこそ、彩花の笑顔が偽物だと分かってしまうほどに。

「それでも凄いですけどね」

「ははは・・・。まあ、そういうわけさ」

「なるほど・・・」

甘奈はひとまず納得した表情を見せる。

「甘奈ちゃんはさ、哲也のこと好きかい?」

「ふぇ!?えっと!その・・・」

耕太の言葉に甘奈の顔が一気に赤くなる。

「好きです・・・」

顔を真っ赤に染めながらもそう言う甘奈に耕太は思わず笑みをこぼす。

「そっか、どんなところが?」

「ええ!?えっと・・・。優しくて、かっこよくて、面白くて、何より・・・」

甘奈はそこで言葉を切ると、赤い顔を耕太の方へ向け口を開く。

「私のそばに居てくれます」

「そっか・・・。恥ずかしがってる割にはいっぱい出てきたね」

「はぅ!」

耕太がいたずらをする子供のような笑顔を浮かべると、甘奈はまたもや下を向いてしまう。

「ははは!ごめんごめん。でも、甘奈ちゃんが哲也のことをどれだけ好きなのかが分かったよ。哲也の話をする時の甘奈ちゃんはいい顔してたし、それだけ赤面させられるのは哲也だけだろうし。それすなわち、それだけ哲也のことが好きなわけだ」

「はうぅ・・・」

未だ顔の赤みはとれず下を向いている甘奈。

最後の言葉を発した時の甘奈は、赤みの中に確かなものがあった。その時だけは、甘奈が耕太から目を離すことはなかったのだ。

「か、川島さんはどうなんですか?相当おモテになるみたいですけど!」

「わ、わし?」

笑っていた耕太の顔が一瞬にして引きつる。

「私のクラスにも川島さんのことをいいなって思ってる子が多いみたいですよ?告白も結構されてるって聞きましたけど!」

「か、甘奈ちゃん?落ち着いて・・・」

甘奈の勢いが増し、若干押され気味になる耕太。

耕太の人気は後輩にも広がり、告白も何回か受けている。耕太は積極的に校内を回り、生徒から親しみやすい副会長として有名だった。耕太への相談もやはり行われており、生徒からの人気は高かったのだ。しかし、耕太の返事は決まってNO。これは入学当時から変わっていなかった。

「ここに来ているみなさんの中にも川島さんに好意を持っている方がいるでしょう!」

「えっと・・・」

甘奈の言っていることは間違っていない。

耕太に思いを告げている者までいるのだ、否定はできまい。

「まだ、そういうのは考えられないんだ。中途半端にそういうのは決めたくないんだ。それに、まだわしの事情を知らない人もいるからね」

「あ・・・」

耕太の言葉に我に帰る甘奈。

その表情は申し訳ないという顔をしており、若干暗いものになっていた。

「気にしないで。ちゃんとしないといけないのは分かってるから。それに答えは出す。いつになるかは分からないけど・・・」

「肝心なところで優柔不断ですね・・・」

「う・・・。面目ない・・・」

そう言うと、二人の顔には少しだけ笑顔が戻った。

「あ、ここです」

「はい了解」

そうこうしているうちに部屋へと到着したようだ。

部屋に入ると、ベッドに秋穂を寝かせ薄手の布団をかける。夏とはいえ、腹を壊してはいけない。

「おやすみ秋穂ちゃん」

そう言うと、秋穂の頭を優しく撫でると、耕太は部屋をあとにした。

「お父さんみたいですね」

「そうか?そこはお兄ちゃんって言って欲しかったな」

「妙な安心感というか、落ち着きがあるんですよ。褒めてます」

「そうか?なら良いんだけど」

互いに小さく笑みを浮かべると、耕太達は広間へと戻っていった。


「お~。おかえり耕ちゃん」

「ただいま。みんなは?」

「疲れたんだろうね。もう寝ちゃった」

「そうか」

広間へ戻ると、そこには哲也と純也と沙耶しかいなかった。

先程までの騒がしい空間はそこにはなく、穏やかな静かな空間があった。

「甘奈もおかえり」

「ただいまです哲也様」

挨拶を交わすと、甘奈は自然と哲也の隣へと座った。

「沙耶さん、マスターは元気ですか?」

「うん元気だよ。最近は川島君が来ないから寂しがってたよ」

「夏休み前は生徒会が忙しかったですからね」

耕太は苦笑いを浮かべる。

マスターとは、沙耶のバイト先である【master】の店長のことだ。あまり喋ることのない寡黙な人だが、耕太を気に入っているらしく、赴くたびにサービスをしてくれる心優しい人でもある。

「生徒会か~。懐かしいな」

「純也さんの時も大変でしたか?」

純也も畑農の卒業生であり、かつては副会長として美桜と共に畑農の先頭に立った人物でもある。

「大変大変、超大変!会長はふらふらどこか行くし、その仕事が全部俺に回ってくるし、俺だって実習があるのによぉ!やるときはやるくせに、普段がアレだからな・・・」

「ははは・・・。わしって恵まれてる・・・」

耕太は生徒会長が美紅で良かったと心底思った。

「でも、なんだかんだいって美桜先輩と純也先輩は仲良かったですよね」

「ただ俺が振り回されてただけだよ・・・」

「でも、そう言って面倒見てるじゃないですか。見放すことなく」

「まあ、そうだけどよ・・・」

純也以外でその当時を知る沙耶は昔を思い浮かべ、笑顔を浮かべる。

「純也先輩は面倒見がいいですしね。でも、誰にでも世話を焼いちゃうのは嫉妬の対象です」

「さ、沙耶?」

「世話を焼くなとは言いませんけど、私が一番ですからね?」

「お、おう!当たり前だ!」

「ならいいです♪」

いつの間にか桃色の雰囲気を漂わせる二人に耕太は苦笑いを浮かべ、居心地悪そうにする。

「ははは・・・。さすがだな・・・。哲也・・・」

哲也達の方へ顔を向ける耕太は言葉を失う。

「哲也様が誰にでもお優しいのは知っておりますし、分かっております。でも、三島さん達と同じで、私が一番じゃなきゃ嫌ですよ?」

「当たり前だろ?俺が甘奈を一番知ってる。そういう独占欲があることもね」

「意地悪です・・・」

「ははは!」

こちらもこちらとて桃色の雰囲気を漂わせていた。

「・・・」

耕太は静かにその場を離れ、広間をあとにした。

「はぁ・・・」

長い廊下には耕太のため息だけが虚しく響いた。


続く

どうもりょうさんでございます!

「どうも川島耕太です!」

さて、今回でお泊まり会が終わり、あとは帰省するだけです!

「割と長い話数かけたな」

しかーし!帰るまでが遠足!帰るまでが旅行なのだ!そして!最後まで騒がしいのがこの物語!

「おいおい・・・」

でも、今回は割とおとなしめでしたね。次回はもっとハチャメチャしたいです!

「勘弁してくれ・・・」

さてさて、ここで謝辞を。

二万PV、ユニーク五千を超えました!これからもよろしくお願いします!

「感想、評価、ブックマークも待ってますね!」

それではまた次回お会いしましょうね!

「さようなら!」


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