夏休み編~お泊まりだぜ!わん!~
「「「「「「いただきます!」」」」」」
頭上に大きなシャンデリアぶら下がる大きな部屋に耕太達の声が響く。
耕太達の前には見たこともないような豪華な料理の数々。耕太はその料理を眺めながら目をキラキラと輝かせていた。
「うまーい!美味いよー!」
「耕太・・・もうちょっと静かに・・・」
相変わらずリアクションの激しい耕太に呆れ顔の静音。
「だってさ!こんなに美味い料理なかなか食べられないぞ?涙が出るよ・・・」
「もう・・・。まあ、耕太らしいけど」
静音は呆れ顔を苦笑いに変え、料理を口に運んだ。
「喜んでもらえてよかったです」
「耕ちゃんは美味しいものに敏感だからね。ここの料理が本当に美味しい証拠だね」
「はい!自慢のシェフ達ですから」
耕太の真正面に座る哲也と甘奈も嬉しそうに談笑しながら食事を楽しんでいる。
「麗華ちゃん!これ美味しいよ!」
「わかってるから騒がないでちょうだい姉さん」
「あはは!彩花ちゃん怒られてる~♪」
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!美味しいよこれ!」
「うんうん。うちの妹は可愛いなぁ・・・」
耕太の右側には、テンションの上がっている彩花に呆れ顔を向ける麗華と妹の可愛さに顔をほころばせる美桜の姿もある。
いとこ三姉妹は秋穂の食事を気をつけて見つめながら、上二人も料理に舌鼓を打っていた。
智は相変わらず口数は少ないが、料理を口にいれその味に目を見開いている。その横ではその姿を笑顔で見つめ、自分も料理の味に驚く紗奈の姿もあった。そして、公正は笑顔を浮かべる紗奈の姿を呆然と眺めていた。
緑と青も楽しんでいるようで、姉妹揃って顔をとろけさせていた。
純也と沙耶は相変わらずのラブラブっぷりを周りに見せつけ、桃色の雰囲気を漂わせていた。
三郎と皐月も料理に驚きながらも、その味をしっかり味わい満足のいった表情を浮かべていた。
「そういえば耕ちゃん。ここには卓球台があるらしいよ・・・?」
「なんだって・・・?」
ニヤニヤと笑う哲也の言葉にピクリと反応する耕太。
「お風呂上がりにどうですかい・・・?」
「ほう・・・?わしに挑もうってのかい?」
「是非」
「よぉし!受けてたとうじゃないか!あとで泣いて謝っても知らないからな!」
「こっちのセリフだぁい!ふははは!」
こうして、ドキッ!お風呂上がりの卓球大会が開催されることとなった。
「落ち着いて食べなさい」
「「はい」」
二人共麗華お嬢様には勝てないようだ。
「ふぅ・・・。気持ち良いなぁ・・・」
「生き返るねぇ・・・」
食事を終えた耕太達は風呂へとやってきていた。
この別荘には男風呂と女風呂、二つの浴場がありどちらもそれなりの広さを誇っていた。現在、男風呂には耕太や哲也の男子勢と純也が入浴している。三郎は少しばかり休んでから入浴するということで、現在ここにはいない。
「あはは・・・。二人共おっさんみたいですよ?」
「なんだと公正。もう一回言ってみろー!」
「そうだぞ公正!」
「ちょ!先輩!やめてくださいよー!」
バシャバシャと水を弾きながらじゃれあう耕太と哲也と公正。
耕太達と公正の先輩後輩間の仲は至って良好だった。智との仲もそれ程悪いというわけでもない。というよりも、耕太も智と接する中で智が悪い奴ではないことに気づき、馴れたという方が正しい。
「うるさい・・・」
「なんだと遠藤君!そんな後輩にはこうだ!」
「ぶはっ!」
耕太から智へと思いっきり水がかけられる。
「何すんだ!」
「そ~ら!そんな言葉遣いをする悪い子にはこうだっ!」
「うわっぷ!だからやめろって!くそ!こっちだって負けるかー!」
「うほぁ!やったな!」
「そっちが先にやったんだろ!」
「なにおぅ!」
「なんだよ!」
という風にふざけ、じゃれ合うまでに関係は良好化した。
「若いね~」
「三島さんも充分若いと思いますけどね・・・」
その光景を眺めながらオヤジくさいことを言う純也に突っ込みを入れる公正だった。
「ふぅ・・・。気持ちよかった」
「あら、上がったの?」
「あ、南さ・・・ん」
風呂から上がった耕太は麗華を見ると、言葉を失ってしまう。
入学当初よりも若干伸びた今にも吸い込まれそうな黒髪は、風呂上りということもあってかしなやかで艶めいており、風呂の熱で赤らんだ頬は髪から滴る水滴と相まって不思議な妖艶さを醸し出していた。
「どうしたの?」
「い、いや。なんでもない」
「そう。早いのね」
耕太の様子を特に気にした様子はなく、話しを変える麗華。
「うん。風呂は好きだけど、あんまり長く入るほうじゃないんだ」
「そう、奇遇ね。私もそうなのよ。あまり長く入ってしまうとのぼせちゃうから」
「わかるわかる」
そう言って二人は小さく笑みを浮かべる。
「それにしても、別荘の造りは洋風なのに風呂は和風だったね。今も浴衣だし」
「そうね。藤崎家の本邸は和風らしいし、その名残かも知れないわね」
「へぇ、そうなんだ」
現在、耕太達の服装は浴衣であり、随分とラフな格好となっていた。男子は黒の浴衣。女子は桃色の浴衣となっている。
「ここにも和室があるみたいだし、随分と和を大事にする家系らしいわね」
「なるほど。南さんのところは?」
麗華の家も藤崎家には及ばないが裕福な家である。もちろん別荘も持っている。
「私のところは洋風ね。家も洋風でしょ?」
「そういえばそうだね」
その後も耕太達は他の者が上がってくるまで談笑を続けた。
「第一回!ドキッ!お風呂上がりの卓球大会!」
「おっしゃあ!」
「どんどんぱふぱふー!」
耕太と哲也が盛り上がる中、卓球大会の開催が告げられた。
「元気ね・・・」
その中でそれ程テンションの上がっていない麗華とその他大勢。
「あ、優勝者には好きな人と夜のデートへ行ける権利を差し上げまーす!」
「「「「「「優勝は渡さない!」」」」」」
哲也のその一言で全員の目の色が変わった。
「それじゃ!いってみよー!」
一回戦第一試合。
「負けないわ・・・」
「負けないよー!」
南麗華VS三島静音。
「ふぁい!」
「うおおおお!」
「おりゃあああ!」
「もー!強すぎでしょ!」
「ふふふ。舐めてもらっては困るわ」
勝者南麗華。
一回戦第四試合。
「負けないよコウ!」
「わしだって!」
山方花VS川島耕太。
「ふぁい!」
「うおおおお!ペガサ〇りゅうせいけええん!」
「それ違うよぉぉぉ!」
勝者川島耕太。
一気に飛んで、
準決勝第一試合。
「ふふふ。耕ちゃん、まさかここで当たるとはね」
「負けないぞ哲也。覚悟しろ!」
下永哲也VS川島耕太。
「ふぁい!」
「いくぞ!北斗〇烈拳!」
「うおおおお!元〇玉あああああ!」
「なんの戦いしてんの!?てか、さっきからネタが古いよ!?」
異次元の戦いに静音からのツッコミが飛ぶが、二人は気にする様子もない。
「くっ・・・。さすが耕ちゃん。負けたよ・・・」
「お前は強かった。だけど、少しだけわしが勝っただけさ・・・」
「はは・・・。そっか、頑張れよ。こう・・・ちゃん」
「ああ。じゃあな」
勝者川島耕太・・・。好敵手と書いて友と読む。ふたりの絆は深まるばかりであった。
「だからなんなのこれ!てか、ちゃんとやってよ!」
そして、決勝。
「まさか、お前が来るとはな」
「実は僕、卓球得意なんです」
「ふふ、負けないさ。わしが勝つ!」
「負けませんよ!」
錦公正VS川島耕太。
「ふぁい!」
「いくぞおお!」
「うおおおお!」
耕太の強いラインギリギリを狙ったサーブから始まる。しかし、公正はそれをものともせず当たり前のように打ち返す。
「やるじゃないか」
「先輩こそ」
「なら、これならどうだ!」
「くっ・・・!」
数回のラリーの末、耕太が放ったのは回転の掛かった球だった。
その回転は凄まじく、台に着いた瞬間あらぬ方向へと飛んでいく。公正はなんとか打ち返すが、その球はふんわりと上がった耕太にとって絶好のチャンスボールとなった。
「ふ・・・。もらった!おらああ!」
「あっ!」
耕太の放ったスマッシュは公正のラケットに当たることはなく、後ろへと転がっていった。
「ふふふ。これでまずは一点」
「まだまだこれからですよ!」
「よし!かかってこい!」
「はぁはぁ・・・」
「ふぅ・・・」
「なかなか・・・やるじゃないか・・・公正」
「先輩こそ・・・」
二人は肩で息をし、言葉もとぎれとぎれだ。
スコアは10-10で同点だ。今回はデュースなし、十一点マッチルールの為、次で勝負が決まる。
「いくぞ・・・公正!」
「はい!」
「うおおおお!」
耕太の手から球が大きく上へと投げられ、落ちてきた球を微妙な変化をつけながらコースギリギリへと打ち込む。
「うおらあああ!」
公正も負けじとコースギリギリへ打ち返す。
「うらあああ!」
「右か!」
耕太の打つ瞬間を見て公正は右に来るだろうと判断する。
「ふふ・・・。甘いな公正」
「何!?」
公正が右と判断した球は逆の左へと打ち込まれた。
「くっそおおお!」
「追いついたか。だが!」
なんとか追いついた公正だったが、打ち返した球はやはり緩く上がった球。耕太にとってチャンスボールだ。
「うおおおお!北斗〇掌波ああああああ!」
「マニアックすぎるでしょ!なんでラ〇ウ!?」
そこまで口を開かなかった静音が思わず口を開く。
「これで終わりだ!」
「・・・甘いですよ」
「なに!?」
「ふん!」
「な・・・」
公正は耕太の打った球を簡単に打ち返した。
「あなたの負けだ」
「な・・・な・・・」
公正の打った球は耕太の遥か後ろを転がっていた。
「なぜだあああああ!」
「それは・・・。さっきの球がただのスマッシュだからだ!」
「それは言わないお約束うううう!」
耕太はそのまま撃沈してしまった。
こうして、ドキッ!お風呂上がりの卓球大会は公正の優勝で幕を閉じた。
「それで?公正は誰を選ぶんだ?」
「え?」
「デートの相手」
「あ・・・」
「やっぱり忘れてたか」
そう言って復活した耕太は苦笑いを浮かべる。
「・・・迷う必要はないだろう?」
「か、川島先輩!?」
「いいから。がんばれよ」
「は、はい・・・」
耕太は公正の背中を押した。
「公正が決めたって!」
「おー!だれだ?」
耕太の言葉に全員が公正を見る。
「えっと・・・。僕は・・・」
続く。
どうもりょうさんでございます!
「どうも川島耕太です!」
祝!
「百話!」
ばんざーい!
「ついに、この【農業高校は毎日が戦争だぜ】が百話となりました!」
ここまで見てくださっている方ありがとうございます!ブックマークも最初は一つもこないかと思っていましたが、たくさんの方に見ていただいて嬉しいです!これからも、感想なども待ってますのでよろしくお願いします!
「お願いします!」
さて、本編ではお泊まり会がスタートしましたね!
「今回は色々とはっちゃけてたな」
たまにはね!
そして、公正が選ぶ人物とは?
ここから始まる恋の予感!?
「次回を!」
お楽しみに!
それでは、また次回お会いしましょうね!
「さようなら!」