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ハンオタ!  作者: 板戸翔
活動部結成――そして最初の活動
15/37

よんの1

「……ったたた……」

 俺は首裏に異様な痛みを覚えながら上半身を起こした。

 痛みの理由? 明白。

 里香が俺の意識を奪ったからだ。

 や、里香がやるのを直接見たわけではねーんだ。なんせ背後からやられたんだから。

 じゃあなんで分かるのか。

 それは放課後、帰りのホームルームが終わって俺が帰る支度をしてたら俺の前の席の女子(名前知らん)が。

「あれ、里香ちゃんだ。おーい里香ちゃんどうしたのー? なんか凄い殺気に満ちてるけど。まるでこれから誰かの意識を奪う人みたいだよ?」

 と言ったので振り向こうとしたらそこで飛んだ。

 ……女子さん怖いくらい的確。そこでさらに俺を助けてくれたら俺は君を警備員として推薦しただろう。

 まあとにかく俺はなぜか意識を奪われて黒い世界に行って今回帰ってきたわけだが……。

「……ここは……?」

「ここはうちの高校の和室よ」

 声に振り向くと、そこには正座をした栗原と隣にあぐらをかいた里香の姿。

「もともとここは茶道部が使ってたんだけどね、今は部員数ゼロになって事実上廃部になってるのよ。だから今ここは部活動としては使われてないの」

 そう言って栗原は部屋の箇所を手で示した。

 確かに床は畳が敷かれており壁も『日本固有』なやわらかい緑色、奥には円形のちゃぶ台があって、さらにここの出入口らしきところには障子の扉が備わっていた。

 うん、ここは和室だ。それは分かった。

 けど流されちゃいけない。重要なのはそこじゃない。

「で、何でその今は使われてないところにお前らは俺を拉致った?」

 そう、問題はなぜ目の前の女子二人が犯罪に手を染めたかということ。

 まあ普通人を使われてない場所に拉致するのは大抵身代金目当てか体目当てだ。

 でも栗原は金持ちだから身代金なんていらんだろうし、体は俺男だし……。

 その時、俺の頭の中で腕を絡める里香と栗原の手がどんどん俺の体を侵食していく光景を想像。

「体か!?」

「何変な事考えてんのよ」

 栗原が俺の妄想を読み取ったらしい。

 隣の里香も読み取ったみたいだが……なぜ顔がトランス状態なのかは聞かないことにしよう。

 でもそうなると。

「じゃあ何で?」

「言っておくと、私たちはあなたを拉致なんかしてないわ。連れてきただけよ」

 平然と栗原。人の意識を奪って場所に移すのは世間で拉致って言うんだよ。

 しかしそれを言うと話が進まないので。

「じゃあ何で俺を和室に連れてきたんだ?」

 と聞くと、栗原はニヤリと笑って突然立ち上がり、小走りで和室の戸を開けて出ていった。かと思うと、すぐに外から脚付きの大きなホワイトボードを連れて帰還。

 そして迷わず桟に置いてあった黒ペンのキャップを外し、キュッキュと迷うことなく彼女はその文字を描いていった。


 〈活動部〉


 ……なんか少し予想できるが一応質問してみるか。

「なあ、『活動部』って何だ?」

「部活の名前よ」

 やはりまんまだった。

 しかし部とは『部活動』の通り活動するから部なのであって、それを部名にする奴のネーミングセンスがしれない。

「ちなみに部名を考えたのは私よ」

「お前かよ」

 栗原……お前の完全無欠もこういうところには穴があったんだな。

「昨日までに私があれこれ手続きを済ませて今日正式に発足させた部活なの」

「ちなみにこれは私も関与してるぞ」

「うおお!」

 背後でいきなり里香がトランス状態から復活するもんだから思わず声を上げてしまった。

 里香の声に栗原は頷く。

「そう、うちの学校で新しく部活を作るのは結構大変でね。顧問の先生とかいらないかわりに創部手続きがすごく面倒なのよ。まあ書類だけなら生徒会である私がなんとか出来るんだけど、他にその部活動が学生の活動に適したものか風紀委員に査定してもらわなきゃいけなくてね。それでその部分はそこの副委員長である里香(・・)にやってもらったわけ」

「里香、ね……」 

 お前いつから里香のこと名前で呼ぶようになってんだ? さてはお前らここ数日でかなり親交深めたな。

 にしても今の栗原の話をまとめると要はこの二人、自分たちの権力を利用して新しく部活を作っちまったってことか。

 今まで野球部や合唱部というありきたりな王道部活しかなかった内の学校は、生徒会役員と風紀委員が手を組んだだけで新時代を迎えた。

 まあ、ぶっちゃけ今そんなことはどうでもいい。

「それで、一体その活動部ってのは何をする部活なんだ? それが俺と何の関係がある」

 権力を利用して作ったところからあまりいい印象は持たないが、一応聞かないとそれはそれで怖いからな。この場に俺を連れてきたのもそれに関係があるからだろうし。

 すると里香はピコッと人差し指を立てた。

「活動内容はシンプル。部室であるこの和室で会議して活動の事柄を決め、当日、または後日その活動を実行するというものよ」

 なるほど、活動内容を決めて活動するから“活動部”なわけか。話だけ聞くとそんなに怪しい部活でもなさそうだな。

 しかしそれだと……。

「で、俺は?」

 そう、俺がここにいる意味が分からない。

 何か手伝ってほしいとかなら分かるのだが、見たところそんな様子もないし……うん、謎だ。

 俺が首を傾げていると、里香がとんでもないことを言い出した。

「まあ表向きはそんな部活だ」

「表向き!?」

 なんだ表って。部活に表も裏もあんのか?

 ……やばいぞ、嫌な予感しかしない。

 俺が体中から変な汗を垂らす中、里香は立ち上がると栗原の隣へ行き、お互い目線で何か確認し合うと、彼女たちはこちらにニコッとほほ笑みを向けて順番に言い始めた。

「活動部の本当の活動内容は私たちハンオタが様々な活動を通して完全なオタクを目指すことだ」

「活動部の部長は私、栗原。副部長は里香。そして島田君、あなたも活動部の部員になってもらうわ」

「…………」

 まだ体目当てで拉致られた方がよかった。

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