追憶1
少年の視界が真っ赤に染まっている。いや、燃えている。
物心つく前に連れて来られ、それ以来4年間育ったその施設は家よりも馴染み深いものだった。
今いる場所はその施設の周りに生い茂っている森の中。施設の火は森にも飛び火している。
そして、その地面に這いつくばるように倒れている。土の味が口に広がっている。
右目は何か温い液体が入り開けられない。左目を薄らと開くと、火の赤色以外に少女の姿を確認できる。
もっとよく見ようとするが、額に鋭い痛みが走り、目をきつく閉じてしまう。
それでも聴覚にはその少女の泣き声を受け取る。その声を聴き、立たなければ、と思うも体に力が入らない。
――こんなもの、認めない!
やがて少女の叫び声が木霊した。
――これは全部、嘘なんだ!
と。
その瞬間世界が揺れ、暗転した。
少年は消え行く意識の中で、後悔の念に苛まれる。
――僕があの時、連れて来なければよかった……。
だがそんなもの、今思おうが関係ない。すべて終わってしまっている
だから自分の責任を放棄しようと、違う考えをした。
――結局、僕は主人公のようにはなんでもできない。
そう考え、すべてを諦めるように意識を完全に失った。