7話
家へと帰った彼は、妹に晩御飯を作っていた。
(あー、もう。ホント、ミコ姉は容赦ねえ)
そんなことを思いながら料理を作っていく。
(……?)
足に違和感があるが、普通に立てるし、歩けてもいるので放っておく。
妹に頼まれたオムライス。彼の得意料理。というより、妹がよく作れと言ってくるので嫌でも上達していった。
最後に卵で包み、完成する。
それを食卓に並べながら妹を呼ぶ。
「リン、レン、マホ、できたぞー」
すると火燐と水蓮はすぐに来たが、真帆が来ない。
火燐と水蓮は席に着くとすぐに挨拶をして食べ始めたので、仕方なく彼が真帆を呼びに行く。
二階には、彼、火燐、水蓮、真帆の3つの部屋があり、真帆は一番奥の部屋だ。
ドアを一応ノックして、ドアを開ける。
「おい、マホー。ご飯――って、またか。」
真帆は机に向かって勉強中だが、入ってきた彼に一切気づかない。
真帆は超能力に適合できなかった側。しかし、彼女には天性の能力がある。【S・S・S】といわれ、五感の好きなところをOFFにし、残った感覚をその分だけ鋭くさせることができる。
このせいで真帆が部屋にいるときは、よく視覚以外をOFFにしているため、部屋まで来なければならない。
「おいマホー、飯ー」
彼は真帆の目とノートの間に手を入れ、動かすことで認識させる。
「わっ、お兄ちゃん。びっくりした」
そう言いながら振り返ってくる。
「お前な、晩御飯前は聴覚消すなって何度言や分かる?」
「あはは、ゴメンゴメン。隣がうるさいとつい」
笑いながら隣の部屋を見る。隣の部屋は火燐と水蓮の部屋だ。
「そういうことはそいつらに言え、とも言ったぞ」
そう言いながら彼は退出していく。真帆もそれについて一階へ下りる。
そうしてようやく食卓に着いた栢野家。
両親はいない。死んだわけではないが、重犯罪者が送られると言われる〈終焉の館〉に投獄中である。空に浮かんで存在する〈終焉の館〉は脱獄不可能と言われ、さらに重犯罪者しかいないため、怪物の巣窟として世界中の人々に恐れられている。
――しかし。
ピンポーン、とチャイムが鳴り響く。
「「「……」」」
ピンポーン、またチャイムが鳴る。
「……リン、レン出ろよ」
「「やだ。兄貴出ろよ」」
きれいにハモりながら言ってくる。
「俺が出て父さんだったら殴られるんだぞ!?」
「あたし達が出てお母さんだったらため息つかれるんだぞ!?」
「物理的じゃないだけマシだ!」
「精神的に来るんだ!」
ぐぬぬ、と譲らない兄と妹。
「私が出るから仲良くしてて」
そう言い、玄関へと向かう真帆。
「「「マホ((ちゃん))、ありがとう!!」」」
三人そろって言う。
玄関を開け入ってきたのは、彼らが思った通り栢野家の両親。
「いよー真帆、おっきくなったなー」
と真帆を抱きながらリビングに入ってくる轟鬼。
「ちょっと、私にも抱かせなさいよ」
と言いながら入ってくるのは夢叶。
「まったく、毎度毎度困りますよ、脱獄されては……」
と頭を抱えて入ってくるのは〈終焉の館〉の館長兼看守、死霊使いである。いつものことながらどこの王様だよ、といった豪奢な服装である。肩には黒猫を乗せている。
その三人分も作っていた夕食を、彼は並べて迎える。
「なんでマホには二人とも甘いんだよ。それと死霊使いさん、毎度のことながら申し訳ありません」
「あぁ!?何言ってんだよ!このぐらいの時が一番かわいいんだよ!もちろんリンもレンもかわいいけどなー」
そう言ってくる轟鬼。
「シーちゃん、そんなこと言って、お母さんに構ってほしいの?ウェルカムよ!!」
などと一気にテンションが上がる夢叶。
「いやー、ほんとシー君は常識人でうれしいですよ」
と少し笑って言う死霊使い。
彼の両親、轟鬼と夢叶はなんと脱獄不可能と言われた〈終焉の館〉に投獄され、たった1日で脱獄に成功した人外のような人物である。それもそのはず二人の中身は、轟鬼は太古の暴君・T-REX、夢叶は新しい大陸で語り継がれていた伝説の生物・夢幻、なのだ。そのせいで轟鬼の体質は変化し皮膚は 硬く、力は異常なほど強くなり、夢叶は髪の色や目の色が虹色になったりと、まさに人外になってしまった。
だからこそ、空に浮かぶ〈終焉の館〉からの脱獄ができ、そしてこれが何度目かわからないほどに成功している。
その理由は至って簡単、子供に会う、たったそれだけ。そのために危険を冒し脱獄をする。
……もっとも彼らにとって危険なこととは微塵も思ってはいないが。
「とりあえず、晩飯食え。冷めるぞ。」
そう言うと、
「誰がテメエの飯なんか食うか!!」
「シーちゃんの料理はとってもおいしいのよねー」
「私の分まで悪いですね」
と三者三様の反応をする。
火燐と水蓮はお代わりをして、7人での騒がしい夕食が始まった。
☆
「シーちゃん、今日月宮家に行ったでしょ?」
夕食後、夢叶にそう聞かれる。
「ん?ああ、行ったよ。てか、なんでわかった?」
「あなたの足、折れてるわよ。よくそんなんで帰れたわね。もっと自分を大事にしなさい」
そう言うと、夢叶は彼の足を調べ始める。
「でも、さすが月宮家の跡取りね。骨だけ上手に折ってるわ。それ以外はどこも傷つけてないなんて」
「え?折れてるの?でも普通に歩けたし、立てたよ?」
「中身の影響か……。」
夢叶が何か言うが、うまく聞き取れない。
夢叶は彼の足を調べ終えると、超能力を使う。
「じっとしててよ。動いたらうまくできないから」
今までいろんなことに対して例外だと思っていたが、轟鬼も夢叶も能力者スキルホルダーの中の例外だと改めて思う。
夢叶の能力は【創造再生】。あらゆる物質の再生をする効果を持つ。
「ん、できたよ。もう大丈夫」
「ん、んー?あんま変わんねーけど……」
でもありがと、とお礼を言う。
「じゃ、お母さんたち明日、裏と表家を回るけど、誰か付いてくる?」
ゲームをしていた妹たちがガタッ、と椅子から腰を上げる。
「平日に子供を誘うなって。学校があるから」
と妹たちを牽制しながら言う彼。
「なんだ、リンにレンも行きたいか? 構わんぞ、学校休め!」
「父さんは妹に甘えんだよ!!」
と怒鳴る彼。
轟鬼がブーブー言ってくるが無視をする。
「そうだ、表家と面識あるなら、大神家の娘のことについてなんか知らない?」
「知りたいなら付いてくればいいじゃない」
と夢叶は誘うが、「だから学校だって……」と言う彼。
「なんだ、とうとうテメーも色気づいたか?」
轟鬼は言うが、全力で否定する彼。
「昔どっかで会ったことがある気がするんだけど」
「それはないよ。大神家の長女と会うなんてこと、お母さんたちが許さなかったから」
と夢叶は即否定する。
「おい、俺は長女なんて言ってないぞ。妹の方かもしれないのに、なんで断言できる?」
彼も隙を突き、反論する。
「何を隠してる? 俺の記憶がないのと関係があるのか?」
「そんなことはないわよ。でも、シーちゃんには知る必要がないだけよ」
その言葉に、彼は無性に怒りを覚える。
「俺の記憶は、断片的にしかない。6歳より前のこと、そして12歳から先月までの、合わせて9年間もの記憶が!」
言っているうちに彼は熱くなってくることを自覚する。
夢叶が悪くないことも、八つ当たりなのもわかる。でも、言わずにはいられない。
「俺は15年間生きてきた。でも記憶があるのはたったの6年間だけだ! しかも、存在する記憶にも雲がかかったようにうまく思い出せない! その間の記憶が気にならないわけがない! それでも今まで我慢してきた。誰にも分からないことだから。でも、今なら手がかりが掴めるかもしれないのに、なぜ隠す!?」
言っているうちに涙が出てくる。
(ははっ、情けねえな。八つ当たりしてんのに、俺が泣くのかよ)
そう思うが、しかし言葉は溢れ出ていく。
「俺の過去はそんなに悲惨か!? そんなに知られたくないのか!? 俺には母さんたちが本当に親かもわからない! 俺の下の名前は見つからない、だったら〈俺〉はなんなんだ!? 本当に〈俺〉という人物は存在してるのか!? 〈俺〉はどこにいる……!?」
そこで彼の言葉は途切れ、部屋が沈黙に満たされる。
誰も、何も言わない。静寂がその場を支配する。
やがて彼は部屋を出て行き、自分の部屋に閉じこもった。
☆
「……。彼の方は精神的にまいっちゃってるようですね」
死霊使いが黒猫を撫でながら、夢叶と轟鬼に語りかける。
「まあ、確かに人生の10年間も記憶が無かったらいつかは溜め込んだ気持ちが溢れても仕方ないですよ。実際、よく持った方じゃないですか?」
「そりゃそうだ。俺だったらとっくの昔に溢れてらあな」
轟鬼がそう返す。夢叶は落ち込んでるように見える。
「実際兄貴ってどんな奴か、あたし達にもよくわかんないし」
「兄貴が中学生の時、完全に無口になってたもん。それが一か月前いきなり話しだしたからね」
火燐と水蓮もそう呟く。
「でも、私の記憶のお兄ちゃんはいつでも優しかったよ。いきなり入った私でも普通に受け入れてくれたし」
真帆はそう言う。
「……そろそろ教えてあげるの?」
と夢叶は轟鬼に聞く。
「そうなるか。しっかし、せっかく憑宮に入れたのに鍛えられたのは肉体だけとはねえ。見込み違いだったかな、あのじいさん」
そう言う轟鬼に対し、火燐と水蓮は反論する。
「そんなことないよ。だって、憑宮から帰って来る度に兄貴、なんかうれしそうだったもん」
「よく耐えた方だってお父さん言ったじゃん。」
「見込み違いだったとしても、無駄じゃあなかったと思うよ」
真帆もそう言う。
「はァ……。じゃ、俺は憑宮のじいさんに話してくるから、夢叶は虚月のばあさんに話しといてくれ」
「わかったわ」
「なら私はシー君に話してきますよ。部外者なだけに話は聞いてくれるでしょう」
死霊使いがそう言う。轟鬼は「頼むわ」と言い、立ち上がる。
「ならじいさんが寝ちまわねえうちに話してくる」
「私も行ってくるわ。リン、レン、マホ、留守番よろしく」
そう言い残し、出かける両親。妹たちはそれを見送ってから風呂へ入りに行く。
死霊使いも二階の彼のもとへと移動する。
☆
「シー君、入りますよー?」
死霊使いネクロマンサーはノックをして入る。
彼は布団にくるまったまま微動だにしない。
「シー君の部屋も随分と変わりましたね。昔はベッドと机しかなかったのに」
今ではPCもあり、テレビまである。壁にはいろいろな仮面が飾られている。
「ちょっとお話ししましょうよ。そうですね、あなたのご両親について、とか」
死霊使いがそう言いうと、彼は少しだけ顔を出す。死霊使いにくっついていた黒猫は、どこかへ行ってしまっている。
死霊使いは勉強机の椅子に座り、引き出しを漁りだす。
「お年頃ですからねえ。何か面白いものでも入ってるんですかね」
「漁んな! てか、親の話してくれるんだろ?」
ようやく布団から体を出した彼。
死霊使いはそれに満足したように、引き出しを漁るのをやめる。
「私としたことが。そういったものはベッドの下に隠すものですよね」
と今度はベッドの下を漁りだす。
(……これは)
死霊使いは何かを見つけ、少し驚く。
「だーかーらー、漁んな!! 早く話始めろよ!!」
が、そこで獅子怒に強引に止められる。仕方ありませんねえ、と言いながら漁るのをやめ、椅子に座りなおす。
「まずは何が聞きたいですか?」
そう問うてくる。
それに対し、彼は少し考える。
「じゃあ、まずはなんで〈終焉の館ゴーストハウス〉に入れられたのかを」
両親について知らないことはたくさんある。だから一番知っていそうなことから聞く。
「〈終焉の館〉に入れられた理由、ですね」
死霊使いは一度、そう繰り返す。
「まず言っておくことは、あの二人は同時に入ったわけではありません。夢叶さん、轟鬼さんの順に送られてきました」
「へえ、意外だな。父さんの方が早いと思ってたんだけど」
「ええ。でもやったことは轟鬼さんの方が大きいですよ。彼はかつて、その強さで〈アキレマ〉の持つ最大戦力からこの国をたったの一人で守ったのですから。その時は【生死制限】が採用されていませんでしたから、何万と亜人族の兵士が死にました。この一件があり、【生死制限】が採用されたんですよ。そして彼についた異名が〈国殺し〉。一人で小国は壊せるといったニュアンスです」
「そんなにですか……」
「そして、夢叶さんは【創造再生】によってあらゆる人や物を直して回ったので、市場が混乱しましてね。それにあの人、ああみえて虚月の弟子でして、戦闘力も半端なかったんですよ。止めるに止められなかった」
「だから全然老けないのか。」
夢叶が聞いたら殺されそうなことを平然と呟く彼。
「まあそれでも、〈終焉の館〉に送られるほどのことじゃない。轟鬼さんは国を守るためだし、夢叶さんはそもそも犯罪でもありませんでしたし」
「それなのに送られた……」
「理由は後の事件の方が大きく、前の二つはこんなこともあったというだけでして。その事件というのが……」
そこで一つ間を置く死霊使い。
「あなたと、妹さんたちの誘拐ですよ」
「……は?」
そうして死霊使いの昔語りが始まった。
「轟鬼さんは娘を溺愛、夢叶さんはあなたを溺愛しているでしょう?だからまず、あなたが誘拐されたときは夢叶さんが必死に探し、次に妹さんが誘拐されたときは轟鬼さんが必死に探しました。
そして、あなたは3歳の頃、ある組織に誘拐され、3年間〈アキレマ〉の教導院にて暗殺や戦闘といったものの教育を受けさされました。両親の噂は大陸全土に広まっており、人類最強の遺伝子を欲したのでしょう。そこで、まだ幼いあなたが狙われました。
あなたは高すぎる学習能力により、教導院の全カリキュラムを2年で修了し、5歳の頃には任務に駆り出されていました。夢叶さんはあなたをすぐに探しましたが他国にいるとは思わず、探し出せなかったのです。
そして、あなたがこの国に帰って来た時に夢叶さんが保護し、今の虚月の当主に預けましたが、当時は忙しかったらしく、虚月もあなたを憑宮に預けました。
しかし、その時にはすでに教導院での記憶はなく、無垢な子供だったらしいですよ。それでも教導院での教えは体に染みついており、初めは憑宮の当主の孫娘である海鯱さんに手も足も出ず負けましたが、次に戦うと五分五分の戦いだったらしいじゃないですか。
夢叶さんは、あなたが育った教導院を探し出し教育者たちを一人残らず殺しました。それが〈アキレマ〉で起こしたことだったので、〈アキレマ〉での裁判で死罪が確定。しかし、超能力と中身スレイブがあまりにも貴重だったため、殺すには惜しい、ということで〈終焉の館〉送りでした。
さて、次は轟鬼さんですね。轟鬼さんは虚月にあなたをどうすればよいか相談されたときに、娘だけで精一杯だ、と言い、憑宮に預けるように言ったんですよ。なんともまあ身勝手ですよね。
轟鬼さんが娘たちと暮らしていると、今度は火燐さん、水蓮さんが6歳の時に誘拐です。この時は身代金目当てでしたが。
シー君の家って、轟鬼さんや夢叶さんがギルドで稼いだお金が大量にあり、とても裕福でしょう? 要求額は2億。まあ当時の轟鬼さんには、ぽんと払える額ですがね。
しかし轟鬼さんはそんなことより、娘さんを誘拐されたことに激怒しましてね。警察に知らせるな、とかドラマのようなことを言われたらしいですが、知らせる必要も全くなく、轟鬼さん独自の情報網であっさりと居場所を突き止められました。
完全武装をしていた犯人グループですが、戦争のために鍛え上げられた兵士を何万と殺した轟鬼さんに敵う筈もなく、10分の戦闘で壊滅しました。が、その時暴れすぎ、その犯人グループの拠点の周りを破壊しすぎてしまいました。地形も少し変えてしまい、さらに死傷者まで出たため、裁判で終身刑を言い渡されました。
しかし、よく考えてみると地形を変えるほどの人が普通の刑務所で捕えておける訳がない。〈アキレマ〉の侵攻を防ぐときもやり過ぎだと言われ、〈終焉の館〉送りですよ。
かくしてあなたの両親は〈終焉の館〉に投獄されました。
……しかしそんなもの、紙の檻で恐竜や伝説の生き物を飼っているようなもの。脱獄など二人揃った晩にいともたやすく逃げられましてね。私の面子、丸潰れですよ。最後の砦として、私自ら捜索し、見つけ出しましたがね。
その時、子供に会うだけだから、とか、会わせてくれないと〈終焉の館〉ぶっ壊すぞ、とか言われたので、仕方なく私が同行することで許可したのですよ。帝もそれでなんとか納得してくれました。
ただ、準備もいろいろとありましたから、その日は帰ってもらったんですがね。
で、次の脱獄の時に、夢叶さんがシー君を連れ、轟鬼さんが妹さんたちを連れ、この家で初めて栢野一家が揃ったんですよ。
あなたは中学生になるまで月宮に預けられ、妹さんたちもあなたが中学生になるまで虚月に預けられていました」
そこまでを言い終わると、死霊使いは彼の様子を窺う。
彼は今の話を必死に飲み込もうとしている。
……大変でしたよね、今まで。親がいつもいるわけじゃないから妹さんたちの面倒を見なくちゃいけないのに、記憶のほとんどがなくなっていましたからね。
そう思いながら死霊使いは聞く。
「まだ他に知りたいことがありますか?」
しかし彼はまだ話を飲み込めずにいるようで、返事が返ってこない。
なので死霊使いは、もう少し時間を置いてからにしますか、と思い椅子に寄り掛かる。
数分後、死霊使いはもう一度同じ問いをしてみたが、「いや、いいです……」と言われ、そろそろ本題に入りますか、と思う。
「シー君、明日学園に行ったら、大神狼華さんと一緒に学園長に会いに行ってください。過去を知りたいなら、ですが」
そう言うと彼は勢いよく顔を上げる。
「やっぱり、俺と大神は何か関係があったのか……?」
「そういったことも含め、明日憑宮豹鬼さんと虚月霞さんを交えて話をします」
そう言い、部屋を出ていく死霊使い。
「このことはあなたの人生を狂わす第一歩目です。そして、その話をするためには大神狼華という人物が不可欠です。絶対に一緒に会いに行ってください」
死霊使いの後ろを、いつのまにか現れていた黒猫がついていく。
彼は何も言えず、混乱する頭の中を整理しようと布団に倒れこんだ。