プロローグ
世間一般の人間が、少年Aと聞いて真っ先に思い浮かぶのは何だろう。
僕だったら、凶悪犯罪を犯した未成年犯罪者を思い浮かべる。そう思うのは、TVで特集されてたり、本屋で平置きされてるのをよく見かけるからだ。
でも、まあ、それに該当する言葉が様々あることも知っている。少年A、男A、生徒A――映像作品のエンドロールで、メインキャスト以外の人物、所謂モブに与えられることを。
もし、学園を舞台にしたストーリーがあったとして、僕が登場した場合、そういう表記のされ方をするに違いない。
学園ものには、主人公というものが存在する。まあそうしないと物語が進まないからね。じゃあ、僕のクラスを物語の中心として見てみよう。
教室最後尾の窓際席に座ってる男子生徒。彼の名前は真田湊という。容姿端麗とはいかないし、成績もそこそこみたいだ。一見すると普通の男子生徒と言ってもいいだろう。でも、彼を構成する要素はそれだけじゃない。彼の周りにはよく人が集まる。人当たりのよさそうな男の友人、彼を慕う女子生徒。間違いない、彼はラブコメ主人公足り得る存在だ。詳細な関係性は知らないけれど、良好な関係であることはわかる。ああ、でも最近喧嘩して教室を出て行った女子生徒がいたっけな。
それから、真ん中らへんの席にいる男子生徒。彼は八須圭太という。おどおどした性格でよく読書をしているのを見る。八須の後ろの席は、カーストで言えば上位の存在である宮星きららという女子生徒だ。二人一緒にいることをよく見かける。オタクとギャルという異色の関係。彼らの関係もまた、物語の核足り得る存在だ。
そして、廊下側の後ろの席。そこにはカースト上位の生徒がよく集まっている。でも、主人公が誰って感じじゃない、多分それに該当するのは他のクラスの人じゃないかな。女子生徒がよく来るから多分その子だ。
そして、彼、彼女らは作用することがある。完全に同じ物語に出てくるという訳じゃない。イベント要素の一つとして交わる程度。文化祭、体育祭、それに今度いく修学旅行。彼らは自分の立場を全うしながら学園生活を送っている。
かく言う僕は、廊下側一番手前を陣地としている。彼らとは近くとも、縁遠くて、ほど遠い位置。だけど、ちょっと後ろを向くだけで彼らのバラ色に染まった青春生活が目に映る。
さて、では何故僕が少年A足り得るか、エンドロールに名前が載るの存在かというと――
「あ、ねえ湊君いるかな?」
「さっき、職員室に行きましたよ」
と言った風に、一言話すことがあるからだ。物語で一度か二度、ぽっと出てくる橋渡し役として機能している。だから、ちゃんとした名前は与えられずに、生徒Aとして表記される。もしかしたらBやCかもしれないけれど――
声優がつくなら、新人さん。邦画やドラマだとしたら売り出し中の俳優さんかな。全く役がないという訳じゃないけど、名前をつける程の価値は無い――そんな有象無象の脇役の一人が僕、矢島高校一年一組安達綾鷹という人間だ。




