第4食目 盗賊団襲撃&弁当バフで撃退、父娘の絆!
翌朝。アジノ屋の前は、すでに人でごった返していた。
「おい、今日も弁当頼むぞ!」
「俺は昨日のスタミナ弁当をもう一度!」
「新しいメニューはないのかしら!?」
店の外まで行列ができ、村人や冒険者たちの声で賑わっていた。
「ま、まさかこんなに繁盛するなんて……!」
味野味男は、額の汗をぬぐいながらフライパンを振る。
「こりゃあ日本にいた頃より忙しいぞ!」
「お父さん、喜んでるでしょ。」
「お客さんの顔がキラキラしてるもん!」 甘味が笑いながらご飯をよそい、客席へと弁当を運んでいく。
戦士たちは豪快に肉をかき込み、魔法使いはスプーンでカレー弁当をすすり、弓使いは唐揚げ弁当にかぶりつく。
「なんだこのスパイスは……! 舌が踊るようだ!」
「食べると魔力の巡りが良くなるわ……! 詠唱の滑りが全然違う!」
「昨日のモンスター退治も、アジノ屋の弁当がなかったら危なかったな!」
あちこちから歓声と笑い声が上がり、まるで祭りのようだった。
村の長老までもが店を訪れ、味男の肩を叩いた。
「味野殿。この村に来てくださって、感謝いたします。おかげで村人たちに活気が戻りましたぞ」
「は、はは……ありがとうございます。俺はただ、弁当を作ってるだけですから」
味男は豪快に笑った。
だが胸の奥では、妻がいなくなってから初めて“自分が必要とされている”という温かさを感じていた。
昼時を過ぎ、ひと段落。
客が減り、ようやく味男と甘味は腰を下ろした。
「ふぅ……やっと休めるな」
「お父さん、おにぎり作りすぎ。指に米粒ついてるよ」
「おっと」
甘味が小さく笑う。
こうして父と二人で店を切り盛りする時間は、忙しいけれど楽しい。
ふと、甘味は母のことを思い出す。
優しくて、困っている人を放っておけなかった人。
あの人が生きていたら、この光景をどんな顔で見ていただろう。
「……お母さんにも見せてやりたいな」
ぽつりと呟いた味男に、甘味が大きく頷いた。
「きっと、すごく喜ぶよ」
その時。
「おい! アジノ屋に緊急依頼だ!」
冒険者ギルドの使いが駆け込んできた。
「村の外れに盗賊団が現れた! 通行人を襲い、物資を奪っているらしい! 村まで攻め込んでくる恐れがある!」
「盗賊団……!」
店内がざわついた。
客の冒険者たちが立ち上がり、武器を握る。
「やるしかねぇな!」
「だが相手は百人規模の大所帯だぞ……!」
場の空気が一瞬にして重苦しくなる。
そこで味男がずいっと前に出た。
「だったら弁当だ! みんな、腹ごしらえしてけ!」
「弁当……だと?」
「腹が減っちゃ戦もできねぇ! アジノ屋特製“討伐弁当”を用意してやる!」
味男の目は燃えていた。
これはもう、ただの料理ではない。命を懸けて戦う者たちを支えるための、戦場の戦闘糧食だ。
「お父さん……!」
甘味は父の背中を見つめ、胸を熱くした。
豪快で不器用だけど、誰かのためなら迷わず立ち上がる父の姿。
――母もきっと、そんなところに惚れたんだろう。
こうして村の男たちは、アジノ屋の弁当を食べ、力を滾らせて盗賊団を迎え撃つことになった。
その日の夕刻。
方角から、不穏な土煙が立ちのぼった。
「来たぞ! 盗賊団だ!」
村人の叫びに、広場がざわつく。
数十人の盗賊が、武器を手に村へと迫ってきていた。中には鉄兜をかぶった大男、鋭い目をした女戦士の姿も混じっている。
「ヒャッハー! 村ごと燃やしてやれ!」
「食料も金も全部奪え!」
盗賊たちの下卑た笑い声が響く。
だがその前に立ちはだかったのは、弁当を食べて力を得た冒険者たち、そして村の男たちだった。
「アジノ屋の弁当で満腹だ! 腹も力も十分!」
「やってやるぞ!」
味男は店から出てきて、大声を張り上げる。
「お前ら! 弁当の力を信じろ! 俺の魂を詰めた“討伐弁当”がついてるんだ! 絶対に負けねぇ!」
「おうっ!」
戦いが始まった。
剣と剣がぶつかり、火花が散る。
盗賊の矢が飛ぶが、弁当パワーで強化された戦士が盾で弾き返す。
魔法使いが詠唱すれば、普段よりも大きな炎が生まれ、盗賊たちを怯ませた。
「ぐぬっ、なんだこいつら……!? 急に強くなってやがる!」
「ただの村人まで、やけに力があるぞ!」
盗賊団の方が数は多い。
だが一人一人の力は、弁当で底上げされた村人たちが勝っていた。
広場の隅では、甘味が震えながら父を見守っていた。
「お父さん、大丈夫かな……」
味男も戦場に出ていた。
手にしているのはフライパン。料理人の武器にすぎない。
しかし、その一振りはまるで刀剣のように鋭く、盗賊の刃を弾き返す。
「フライパンをなめんなよ! 俺の腕はな、肉も魚も、盗賊も簡単に調理できるんだ!」
味男が豪快に笑い、盗賊を一人叩き伏せた。
「ひぃっ、なんだこいつは!」
「料理人のくせに化け物じみてる!」
戦いは混乱を極めたが、次第に盗賊たちは押され始めた。
弁当を食べた者たちは疲れ知らずで、力を振り絞れる。
逆に盗賊たちは次々と倒れ、ついに頭領格の大男も地に伏した。
「ま、負けた……! こんな村人どもに……!」
盗賊団は尻尾を巻いて森へ逃げ帰っていった。
勝利の歓声が村に響き渡る。
「勝ったぞぉ!」
「アジノ屋の弁当のおかげだ!」
村人や冒険者たちが抱き合って喜び合う。
その中心で、味男は大きく息を吐いた。
「ふぅ……。料理人が戦うもんじゃねぇな。腕がガタガタだ」
甘味が駆け寄り、父の手をぎゅっと握った。
「お父さん、すごかったよ! フライパンで盗賊を追い払うなんて!」
「はは、怖かったぞ。でもな、弁当を食ったみんなが頑張ってた。だから俺も負けられなかったんだ」
味男の言葉に、甘味の目が潤む。
「お父さん……やっぱり、アジノ屋の弁当は誰かを守れるんだね」
「ああ。これからも作り続けるぞ。異世界だろうが、どこだろうが、俺の弁当でみんなを元気にしてやる!」
父と娘は強く抱き合った。
こうして盗賊団を撃退したアジノ屋は、村でますます評判となり、冒険者たちの間でもその名が広まっていくのだった。
本日のお品書き 魔力弁当:特製討伐弁当(各ステータス中アップ+スタミナ持続)
―第5食目へ続く。




