パーティーグッズ
下界のカラオケ店にて。
露衣をどう想っているのか。
カラオケ店でのクリスマスパーティーに参加する他の同僚後輩先輩合わせて四人の熱歌に耳を傾けつつ、頼んだクリスマスメニューを味わいつつ、銀牙は冬和にじっくり時間をかけて尋ねようとしたのだが、歌うのに付き合えやら、愚痴に付き合えやら、相談に乗ってくれやら、四人に次から次へと絡まれて、冬和に尋ねる事は叶わず。
気が付けば、カラオケ店から出て空き地の土管に座って朝日を全身に浴びていて。
気が付けば、幼い狼に変化しては熟睡している冬和を抱えていて。
気が付けば、十二本の薔薇の花束を抱えている露衣が目の前に居た。
あれこれどう考えても俺は邪魔者じゃありませんか邪魔者は去りましょうと言いたのですが幼児化しているばかりか熟睡中の冬和をどうしましょう熟睡中の冬和を起こすのは至難の業でさてどうしましょうまた日を改めて露衣さんに来てもらった方がいいのではないでしょうかでも露衣さんは露衣さんで決死の覚悟でここに立っていますという気迫をビシバシと感じますしここで日を改めてなんて言った日にゃあ露衣さんの決意を挫く事になりかねませんよねそうですよねでは俺がここですべき事は何ですか。
「………露衣さん。俺は邪魔者だと重々承知でお尋ねします。見ての通り、冬和はどうしてかまた幼児化しているばかりか熟睡中です。多分また、幼児化するというパーティーグッズが紛れ込んでいて気付かずに飲んでしまっただけだと思いますが。冬和が目を覚ました時、冬和に起きた状況を把握したいのです。俺が冬和に説明する必要があるかもしれません。なのでカラオケ店で、俺と一緒に冬和が起きるのを待っていてくれませんか? カラオケ店にパーティーグッズが出されているのかを尋ねる必要もありますし。冬和が起きて問題がないと判断した場合、俺は即刻立ち去る事をお約束します。もし時間がないようでしたら、無理にとは言いませんが」
「………時間はあります。よろしくお願いします」
「はい」
カチカチに固まった露衣と共に、銀牙は熟睡中の冬和を抱えて先程まで居たカラオケ店へと戻ったのであった。
(2025.6.16)