ふかふかのベッド
サンタクロースの国にて。
一秒間休んで冬和にサンタクロースの国を色々案内する。
露衣は強く決意しては、クリスマスプレゼント工場内の休憩所に行き、ふかふかのベッドに横になった。
サンタクロースの村、トナカイの村、妖精の村、お菓子の動物園、折り紙の植物園、気象現象の遊園地、お茶の温泉施設、雪の研究施設、幽霊の森林などなど。
時間がいくらあっても足りないくらいに案内したいところがいっぱいあるのだ。
冬和の幼児化の効果はいつ切れるかわからないのだ。
幼児化の効果が切れてしまったらきっと、冬和は下界に戻ってしまう事だろう。
警察官として困っている人を助ける仕事に邁進するのだ。
きっともう。
サンタクロースの国に来る機会はそうそうない。もしかしたら、今回限りかもしれない。
本当は一秒間だって惜しい。
仕事が休めるのであれば本当は。
いや。そんな事できない、したくない、サンタクロースなのだ。
私情を優先するなんてサンタクロース失格。
子どもの笑顔を優先してこそのサンタクロース。
後ろめたさを抱えて冬和の前に立ちたくなどない。
「って。思ってたのに。さあ。何で僕は。こうなのかなあ?」
ふかふかのベッドに横になって目を瞑った露衣が目を開けて時計を見た。
目を瞑る直前に見た時計の時刻は、午後六時二十三分四十五秒。
つまり今、露衣の瞳に映らなければならない時計の時刻は、午後六時二十三分四十六秒というわけである。のだが。
露衣は目を強く瞑って、勢いよく開いて時計を見た。
その行動を何度か繰り返した。
けれど、時計の時刻は午後八時三十二分五十九秒。
約二時間近く眠ってしまった事実は変えられなかった。
隣のベッドで横になった冬和の姿も見えなかった。
露衣を休ませてあげようと、冬和は綾斗と共にサンタクロースの国を見て回っているのだろう。
推測した露衣が自分自身へと罵倒を止めては冬和と綾斗と合流すべく、ふかふかのベッドから飛び降りた時だった。
警報音が大きく鳴り響いたのである。
(2025.6.11)